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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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5分

切り取られた世界

「うあ、ああう……」 「ひぃぃぃ……!」  遠藤と辻村が、涙を流しながらガタガタと震えている。  ……僕を見ながら。 「ま、魔王……だ……」 「信じ……られ……な……」  失礼だな。僕は魔王より強いぞ? 『タツヤ、そういう問題ではない』  冗談だよ。  それにしてもあの2人、天井に出来た穴を見てしまったか。  あれを見たら、さすがにそうなるよな…… 「しかし、どうした物か……」  ここは約〝5天文単位〟もの距離を測れるブルーでさえ、見通せない程の広さを持った空間。 『つまり……キミがこの空間の〝端〟に辿(たど)り着く事は出来ないだろう』  ……マジかよ。  こんな小さな砂時計一つで、そんなデカい空間を作ったのか?  魔界って本当に〝何でもあり〟だな……!  でもさ? 僕が本気で〝超〟頑張れば、なんとかなるんじゃない?   『タツヤ。単純に考えてみてほしい。この空間の〝端〟まで移動するには、まず〝宇宙船〟を用意しなくてはならない』  〝不可能さ〟を分かりやすく説明してくれてありがとう、ブルー。  つまり、誰も協力者が居ないこの空間で〝宇宙の旅〟をしなくてはならない、という事だ。  そりゃそうか。距離が距離だもんな。 『いや、宇宙船は期待できないが、キミの〝協力者〟は居るよタツヤ。そして彼らには心のケアが必要だと思うのだが』  ……そうだな。  そこで震えてる2人に、状況を説明する所から始めるか。  >>> 「……ほ、本当に、人間なのか?」  失礼だな、僕は人間だ! ……いや、人間だってば! 「ウチらの事、食べねぇ?」  そういう方向に怪しまれると傷つくなあ。 「詳しくは話せないけど、僕は正真正銘、人間だし、バ……遠藤さんと辻村さんに、危害を加えたりしないよ」  ……2人は僕の言葉で、なんとかとか落ち着いてくれたようだ。 「ん? ボウズ。〝バ〟って何だよ……?」  ……さて、それにしても、かなりのピンチだぞ。  まずは、今の状況を説明しようか。 「さっきまでは、この空間の端まで行けば、どうにか出来ると思ってたんだけど……」 「いや、だから〝バ〟って何なんだよ!」  (いぶか)しげな表情で(わめ)いている遠藤は放っておいて、続けるとするか。 「〝砂抜きされた砂時計〟は、想像以上に大きな〝コピー世界〟を作っていたんだ。広すぎて、端まで行けそうにない」 「うおぉぉぉい! 無視かよ!」  どうやら元気になったようだな、遠藤。  ……ん? 辻村が、神妙な面持ちで(うな)っているな。  腹でも痛いのか? 「……ここってさー? 何のために有るのかな?」  辻村がボソリと(つぶや)く。  いやいや、それはさっき話してたじゃん。 「えっと、それは、現実世界のコピーに閉じ込めるための……」 「いやー、だからさ? 何のために閉じ込めるの?! 意味がわかんねぇし!」  何のためってそりゃあ……  ……ん? 何のためだ? 「そうか…………そうだ! もしかして!」   えっと、まずは確認だ。 『ブルー、どうだ?』 『なるほど、そういう事かタツヤ。うん、いるね』  やっぱり! この場所とやり口。  何者かによる、明らかな〝悪意〟を感じるぞ。 『確かに、ここまで手の込んだ〝仕掛け〟を用意するからには、それ相応の意味があるだろう』  やっぱ、そうだよな。  この状況を作り出すことによって〝得をする奴〟が、絶対に居るはずだ。  ……お手柄だ辻村。おかげで、この場所のカラクリに気付くことが出来た。 『どこか分かるか?』 『キミの左後ろ、天井と壁の境目に張り付いているよ。姿は見えないけどね』  意外と近くに居たな。射程範囲内だ。  有り難い事に、この場所はどれだけメチャクチャに壊しても、誰にも文句は言われないし、思いっきりやるか! 「ちょっとこれ持ってて。しゃがみ込んで、目を閉じて、絶対に顔を出さないで?」  そう言って、もう一度、折り畳み傘に〝接触弱体〟を掛けてから手渡した。 「わ、分かった!」 「頼まれても顔なんか出さねーし!」  2人は傘を差し、しゃがんで丸くなる。  ……よーし、折角だから、ノームが使っていた魔法を、片っ端からお見舞いしてやろうかな。  >>>  という事で、僕たち3人は、無事に砂時計の呪縛から脱した。 「お、俺は何も見てない! 見てないから!」 「そうだし! 見るはず無いし!」  ……見てたな? 「で、達也さん。何があったの?」  彩歌(あやか)が、砂時計を覗き込んている。 「その砂時計は、得体の知れない〝何か〟の罠だったんだ」  結局、そいつの姿を確認することは出来なかった。 「砂時計の中に居た〝何か〟が長い時間を掛けて、閉じ込められた者のエネルギーを、美味しく吸い取り続ける仕組みだと思う」  例えば大ちゃんの話だと、悪魔は人間の〝負の感情〟を糧にするらしい。  それと同じようなものだろう。  しかも、その〝何か〟は、ただの悪魔や魔物じゃなかった。  僕の〝使役:土〟を食らっても、そこそこ持ちこたえたもんね。 『……それで意地になっちゃったのね?』  ブルーを介して、彩歌(あやか)が呆れたように言った。 『バレたか!』  彩歌の言う通り、いくつかの技を弾かれた僕は、つい本気を出した。  ……偽物の世界とはいえ、ちょっとやり過ぎたかなとは思っている。 『上の階層が、完全に消失したからね。タツヤ、キミの〝使役:土〟は本当にスゴいな』  僕の放った攻撃は、敵を塵にしたあと、僕の頭より上の物を、すべて消してしまった。  ……〝塔〟も含めて。 『あきれた。ここに来るまで2日も潜り続けたのよ?』  ここが地下何メートルか知らないけど、結構な深さだ。  さすがに手加減を覚えないと、迷惑を掛けてしまうな。えっと、ご近所さんとかに? 「切り取った時間の中に閉じ込める……恐ろしいヤツが居たものですね」  織田さんは、砂時計を見ながら神妙な顔つきで言う。  モース・ギョネといい、魔界って、ちょっと物騒すぎるぞ。 「しかし困った。この砂時計の仕組みでは〝時神(クロノス)の休日〟を防げないな」 「そうね……残念だわ」  この調子だと、あとの2つ〝時の天秤(てんびん)〟と〝卵と(ひな)と何かの像〟も、ハズレなんじゃないかと思えてしまう。 「ごめん、みんな。ちょっと待ってくれる?」  作戦会議だ。ウチの技術担当に相談してみよう。 「もちろん良いですよ」  織田さんがニッコリ微笑む。  ……それじゃ。 『大ちゃん、大ちゃん、聞こえる?』  >>> 『あー、その〝砂時計〟と、残っていれば、モース・ギョネの体の一部、持って帰って来てくれないかなー』  え……何とかなるの?! 『いや、まだ分かんないけどさー。その2つは〝時間に関わる〟事が出来るってだけで〝超お宝素材〟なんだぜー?』  しまった。モース・ギョネに至っては、あの後どうなったのか、さっぱり覚えていない。急いで西の大砦に戻らなきゃ!  切り取られた世界の挿絵1

初回投稿日時:2020年2月20日 5:48

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年2月18日 6時41分

    遠藤のバ…… 今回のスルースキルは強かったですね(笑)

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    SHO

    2020年2月18日 6時41分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月18日 7時34分

    アアッ(*´∀`*)おはようございます! いつも有り難うございます! 分かりにくいボケを拾って頂けて幸せです! (`;ω;´)ウレシヤ!!  

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    ガトー

    2020年2月18日 7時34分

    カレーうどん
  • れびゅにゃ~

    とら猫の尻尾

    ♡500pt 2020年12月27日 0時30分

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    主人公がカッコいい!!

    とら猫の尻尾

    2020年12月27日 0時30分

    れびゅにゃ~
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年12月27日 1時21分

    嬉しいです!(´∀`*)ウフフ 有難うございます。他のキャラが目立ち過ぎて、主人公の影が薄くなりがちですが、今後とも達也くんをよろしくお願い致します!ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。

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    ガトー

    2020年12月27日 1時21分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2020年2月19日 21時56分

    達也君の事を理解しまくっている彩歌ちゃん尊いです(*´∀`*) そして達也君……普通の人から見たら、確かに強すぎて同じ人間とは思えないかもしれませんね(笑)

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    hake

    2020年2月19日 21時56分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月19日 22時07分

    あああっ! ヾ(*´∀`*)ノ いつも有難うございます! 彩歌さんの良さをお分かり頂けて嬉しいです! 魔王超えのタツヤの無茶を〝あらあら〟と温かい目で見守る、肝っ玉な彼女……私のヒロイン像だったりします! ウフフ(*´∀`*) 

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    ガトー

    2020年2月19日 22時07分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡200pt 2020年2月18日 16時48分

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    これは興味深い

    渡鴉

    2020年2月18日 16時48分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月18日 17時22分

    フワアアア(人´∀`).☆.。.:*・゚有り難うございます! 嬉しいですッッ!

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    ガトー

    2020年2月18日 17時22分

    カレーうどん
  • 女魔法使い

    ゆにこーん / UnicornNovel

    ♡200pt 2020年2月18日 7時20分

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    やっと追いつきました

    ゆにこーん / UnicornNovel

    2020年2月18日 7時20分

    女魔法使い
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月18日 7時35分

    ああああっ! ナント!(≧∇≦)嬉しいです! 有り難うございます! 

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    ガトー

    2020年2月18日 7時35分

    カレーうどん

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