戻る

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

170 / 267

6分

※視点変更 九条大作 → 内海達也 ※舞台変更 地下・練習場 → 魔界

落日と轟雷の塔

 (てん)高くそびえ立つ塔。  誰が何のために建てたのかも、なぜ〝落日(らくじつ)轟雷(ごうらい)の塔〟と呼ばれているのかも不明。  そして…… 「登る方法も不明って、そんな〝塔〟あるのか?」  立派で重い、古びた扉を開くと、塔の外周に見合った広い部屋の真ん中に、下へと続く階段があるのみ。上りの階段は無かった。 『主よ。ここにあるのは、地下へと広がる大迷宮です。上に向かう通路もなければ、外壁には、小虫一匹入る隙間も御座いません』 『登らないのか! また地下かよパズズ。ちょっと多いぞ、地下へ(もぐ)る展開』 『私に申されましても……』  誰に対する苦情なのか、僕もイマイチわかんなくなってるけどさ。  ……塔って聞いたら、登っていくと思うじゃんか。 『お探しの物は、この塔のどこかにあると伝えられております』  時間操作に関わる魔道具のひとつ〝砂抜きされた砂時計〟の効果は、使用者の寿命分、使用者以外の時間を止めるというものだ。  そして途中で解除は出来ない。つまり、自分の寿命の砂が落ち切るまで、止まった世界を孤独に過ごすのだ。  ……何だろうな、この〝コレジャナイ感〟は。 「ここが〝落日と轟雷の塔〟か……!」 「半端ねぇし! こんなトコまで誰も来れないし!」  遠藤翔(えんどうかける)辻村富美(つじむらふみ)が、(はしゃ)いでいるとも(おび)えているともとれるテンションで騒いでいる。 「皆さん、気をつけて下さい。恐らくここは、魔物の巣になっています」  織田さんは杖を構えたまま、階段の方を睨んでいる。なぜ探検初心者のハズのアンタが、そんな事知ってるんだよ? 『タツヤ、下階から何かが近付いてくる。数は4体』  マジかよ……よし、チャッチャと圧縮岩弾(プレスロック)で…… 「まって達也さん、手加減の練習をしてからの方が良いんじゃない?」  あ、そうか。  今はまだ、どれだけ力を絞ってもクレーターが出来てしまう。  〝使役:土〟って、地形を変えちゃうような威力の技ばかりだよな。 『タツヤ、それはキミが規格外な上に、力の制御が出来ていないからだよ。今はまだ最大出力は出せても、最小出力には出来ない。ジェット機で近所のコンビニに買い物に行くようなものだ』  それは随分と近所迷惑だな。  ……うーん。という事は、やっぱ狭い場所では〝使役:土〟を使わない方が良いのか。  ゴーレムを作っても、その腕の一振りで、この塔ごと粉砕しかねないし。 「仕方がない。こっちでやるか」  例のごとく〝接触弱体(せっしょくじゃくたい)〟を掛けて、杖を伸ばす。  この杖、ただの〝初心者用の杖〟なのに、鈍器として絶賛大活躍中だ。 「来ましたよ!」  織田さんも杖を構えた。彼の杖は、殴る為のものではなく、魔法の効果を上げるためのものだ。彩歌のロッドと同じように、先端には宝石が埋め込まれている。 『っていうか、あの人〝見た目〟だと、武器すら使わずに、(こぶし)でやっつけそうなんだけど』  しかも、内部からの破壊を極意としてるだろう。絶対。 『ふふ。悪いわよ、達也さん』  間もなく薄暗い階段の奥から何かが現れた。 「何だよ、あんなの見たこと無いぞ!?」  遠藤が叫ぶ。  ……目だ。巨大な目が、宙に浮いている。 「〝見つめる者(ゲイザー)〟! こんな入口まで出てきたのか?」  ……織田さん? 「達也さん。あれ〝伝説級〟の魔物よ。得意技は魔法……だったと思う」  ほほう? むかし遊んだゲームに、なんかそれっぽい敵キャラがいたな。 「気をつけて下さい! あれは手強いですよ」  織田さんが詠唱を始める。同時に、4体の魔物も何やらよく解らない呪文を唱え始めた。あいつら口もないのに、どこで喋ってるんだ?  ……とか言ってる場合じゃないな。 「うおおおおおっ!」  僕は魔物の気を引くために、わざと大声で叫びながら突進した。  必然的に、4体の魔物が唱えた呪文の標的は僕になる。  2体は雷系、あとは、火の玉と、……緑の玉か。これは毒だな? 『つまりタツヤ、当然だがキミには効かない』  全てがほぼ同時に、僕に命中する。  ブルーの言う通り、雷と毒は僕には効かない。  けど、火の玉だけは、ちょっとチクっとしたぞ。さすがは伝説級だな。 「ボウズ、お前なんでピンピンしてるんだよ?」 「今のおかしくね? レジストして無くね?」  確かに、今のは4つとも、レジストじゃなくて〝ガチヒット〟だけど。  エーコがいなくなったので、最近、遠藤と辻村が僕の秘密に近付こうと必死だ。  ちょっとちょっと。僕の正体は城塞都市のトップシークレットだぞ?  ……嘘だけど。  彩歌の放った大きく鋭い鉄針(ニードル)が、いちばん左の目玉を貫く。本数を減らして威力と精度を上げたんだな。  右の2体は、織田さんの風魔法をレジストし切れずに細切れになった。やっぱ織田さん強いな!  ……よし、僕も! 「って、マジで?」  目の前の敵が、悲鳴を上げている。遠藤と辻村による、弱体系魔法が効いているようだ。 「二人がかりの重ね掛けだけどな!」 「効いた?! ラッキー! やっちゃえし!」  ラッキーなもんか! おまえらが腕を上げてるんだよ!  僕の杖が風を切る音と共に、目の前の〝見つめる者(ゲイザー)〟は粉々に砕け散った。 「ふぅ。まさかあんな大物が出てくるとは。もう始まっているのかもしれませんね……」  織田さんが、額の汗を拭う。  あーもー! 意味深(イミシン)過ぎる。わざとなのか? 「……織田っちさー、ここへ何しに来たんだ?」 「いい加減、教えてくれてもいいじゃん? チョー気になるし!」  遠藤と辻村の質問攻め。  ……まあ確かに、この先も同行するんだ。秘密にする意味も無いだろう? 「聞かないほうが良いと思うんです。恐らく、聞くだけで私と同じ〝呪縛〟に捕らえられてしまいます」 「な、何だよ……脅かすなよ! だいたい、探検初心者がなんでそんなに強いんだよ!」 「しかも第五階級魔道士(マジシャン)って! ワケわかんないし!」  そういえばそうだな。 『彩歌さん、魔道士の階級って、どうやって決まるの?』 『判定試験とか、功労によって認定されるの。ちなみに私の階級は功労によるものよ』  なるほどね。織田さんはどっちだろう。 「はは。ちょっとした功労賞ですよ。最近頂きました」  複雑な表情で笑う織田さん。 「魔道士の階級は〝魔法〟で名を上げれば貰えるけど、探検者や守備隊として〝戦闘〟に関わらずに第五階級魔道士(マジシャン)に認定って、ちょっと考えられないわ」  彩歌が(いぶか)しげに言う。  〝戦って生き残る事〟が重要視される魔界では〝強さ〟こそが、一番の評価対象なのだろう。  ……あと、織田さんの戦闘能力や体の傷跡から見ても〝戦闘〟に関わっていないとは、どう考えても思えないんだよなあ。 「あはは。良いじゃないですか! さあ、とにかく行きましょう!」  織田さんに質問すると、いつもこうやって誤魔化されてしまう。  まあ、僕や彩歌も似たような感じだけど。おかげで遠藤と辻村だけ、頭にハテナを乗っけっぱなしだ。 「こっちです! ここを降りて右に行けば、隠し通路が……」  織田さんが階段に向かって駆け出した。  ……だから、なんでそれをアンタが知ってるんだよ?  怪しさを隠す気は全く無いんだよな、この人。 落日と轟雷の塔の挿絵1

初回投稿日時:2020年2月6日 4:08

0

この作品が面白かったら「いいね」を押してね!

会員登録をして、さらに応援スタンプ・コメントで作品を応援しよう!

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年2月6日 5時55分

    すみません……もはやお約束過ぎるのですが、どうしても言わせろと俺の右腕が疼くのです…… ビホルダ◯……鈴木土下座右衛門か!

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    SHO

    2020年2月6日 5時55分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月6日 6時24分

    うはあ! ヾ(*´∀`*)ノ おはよう御座いますッ!  いつも有難うございます! ビ○ルダーはイケマセンッ! (といいますか倫理的には〝鈴木土下座右衛門〟と単行本に載せる方がダメな気も……)

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月6日 6時24分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2020年2月6日 20時27分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    筆文字「これ好き(迫真)」

    hake

    2020年2月6日 20時27分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月7日 4時39分

    ヒアアアアッ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 有り難うございます! 嬉しいです! 。・゚・(ノ∀`)・゚・。

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月7日 4時39分

    カレーうどん
  • れびゅにゃ~

    とら猫の尻尾

    ♡300pt 2020年12月11日 22時24分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    これは興味深い

    とら猫の尻尾

    2020年12月11日 22時24分

    れびゅにゃ~
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年12月12日 1時31分

    続けてお読み頂けて嬉しいです(´;ω;`)ブワッ 本当に有難うございます……!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年12月12日 1時31分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡300pt 2020年2月6日 22時58分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    くっ!早く続きを書け!

    渡鴉

    2020年2月6日 22時58分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月7日 4時53分

    ふぁあああっ!ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。 いつも有難うございます! 頑張ります!!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月7日 4時53分

    カレーうどん

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る
  • 私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

    どこかで結ばれていた彼と彼女

    31

    50

    1


    2026年1月19日更新

    ホームで出会った彼を何故か見つめてしまった 前にも会っていたのかも 私は、今年の4月から中学3年生の女子 田舎なので電車で4ツ先の駅まで乗って通学している。そのせいか同じ駅から乗るのは1~3年までで6人だけ。途中からはだんだんと増えて来るのだが。彼のことは、知らない。だけど、その日は何故か 前から知っているかのように見つめてしまった。彼も、私のことを見詰めているような気がしたのだ。だけど、私と彼との間には 生まれ変わっても 結ばれる運命にあったのだ。

    • 性的表現あり

    読了目安時間:2時間3分

    この作品を読む

  • 飲んだくれ無職のオッサン、公園で美少女に拾われ、迷宮に帰る

    頑張れオッサン

    1

    0

    0


    2026年1月19日更新

    ダンジョン探索がプロスポーツとして確立された現代。かつて新進気鋭の戦術家だった男は、自らの指示遅れで恋人を死なせた(行方不明にさせた)という、消えない十字架を背負っていた。逃げるように東京を去り、大阪で酒溺れ、街を彷徨い歩く毎日に明け暮れること五年。男は「彼女に対して果たせる責任などない」という残酷な納得に辿り着き、自らの人生を完全に諦めようとしていた。 そんな彼の前に、一人の赤髪の少女が現れる。公園で酔いつぶれる男を強引に立たせ、有無を言わさぬ意志と救いを求めるような瞳で彼女は告げた。 「貴方には私たちの戦術担当になって貰うわ」 過去を捨てきれないまま、無理やり戦場へと引き戻された元天才。これは、絶望の淵で酒を煽っていた男が、少女の切実な願いに導かれ、失った誇りと責任を取り戻すための再起の物語である。 *カクヨム、なろうでも連載してます。

    読了目安時間:26分

    この作品を読む

  • アイパッチガール

    引き金を引くのは、少女の眼。

    47

    27.2K

    0


    2026年1月19日更新

    街で噂される“神の血”──《ディヴィニル》 その脅威に襲われた男を救ったのは、眼帯の少女。 無関係だったはずの彼は、その日から静かに蠢く超常の闇に巻き込まれていく。 闇の中では、神骸を巡る血塗られた殺し合いがすでに始まっていた。 静かに“照準”を合わせる少女── 彼女が戦っているモノはなんなのか?

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:2時間13分

    この作品を読む

  • 最凶で不死身のおっさん、ダンジョンを行く~現代日本に出現したダンジョンの謎解き冒険譚~

    初めての現代×ダンジョン物です!

    8

    550

    5


    2026年1月19日更新

    現代日本。 富士山近郊に、突如出現した”ダンジョン”に日本を含めた世界が注目した。 そして、調査隊を結成し、意気揚々と調べ出したまでは良かったのだが……。 ──調査隊は、一人も戻って来なかった。 及び腰になる政府を、非難する団体やダンジョン調査自体を反対する団体も現れた。 そんな中、秘密裏に裏で調査隊を募集する組織の元に、金の亡者等、後ろめたい目的のある者達が集結し、”ダンジョン”の調査へ向かう事となる。 その中に、謎の”おっさん”がいたが、誰も気にも留めなかった。 その人こそが〇〇だというのに── (この作品は、HJ小説大賞後期参加作品です) (この作品は、ノベプラ様オンリーです) (不定期更新です) (2025/12/19 表紙をすずしろめざと(Mez)様にご依頼し、描いて頂きました)

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:31分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る