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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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8分

標本

彩歌(あやか)……さん?』  彩歌が……! 『……え? 達也さん?』  生きて……いた?  生きていた!  生きていたぞ! 『達也さん、どうしたの? なんで泣いてるの?』  いつの間にか、涙が溢れていた。止まらない。  というか、これが泣かずにいられるか。 「何だ? あいつ急にズタボロじゃね?」 「スゲーし! 何が起きたか分かんなかったし!」  そりゃそうだ。みんな止まってたんだから。 「……お前、時間を戻したのか?!」  モース・ギョネは、完全に彩歌を無視して、僕に向けて怒鳴っている。  勘違いだ。僕には、時間を進めたり戻したりする力はない。  たぶんだけど、アイツは〝時神(クロノス)の休日〟を知らないんだな? 「最近は、特に頻繁(ひんぱん)に時間停止や巻戻りが起きると思っていたが、お前の仕業だったのか! 一体、どんな魔道具を使っているんだ?」  その時間操作は、魔道具じゃなくてガジェットによる物だ。ユーリや異星人が、ちょくちょく時間を止めているからな。  ……でも折角だから、ハッタリに使わせてもらおうかな。 『大ちゃん、聞こえる? ユーリにさ……』  ……念のため、保険を掛けておく事にした。 『……ああ。了解したぜー!』  これでよし、と。  さて、それじゃ口八丁(くちはっちょう)で参りますか。コホン…… 「ふふふ! やっと気付いたか……僕の魔道具は、お前の能力の上を行く。終わりだな!」  とか言ってみた。  苦虫を噛み潰したような表情と、何だかよく解らない表情を同時に見せるモース・ギョネ。  顔が2つあるけど、博己(ひろき)氏の方の表情が正解だろう。 「お……おのれ……!」  アイツは僕に殴られてボロボロだ。それに、空間操作を使っての攻撃をしない所をみると、エネルギー切れなのだろう。となると、そろそろ…… 「チカヅクナ! コノニンゲンガ、ドウナッテモイイノカ?!」  モース・ギョネは、博己(ひろき)氏をベリベリと引き剥がし、盾にした。  ほらやった! 思った通りだ。何が〝共生〟だ。笑わせるな。 「いやああ! お父さん!」  モース・ギョネに頭と腰を(つか)まれ、手足を力なくブラブラさせる博己(ひろき)氏を見て、悲鳴のような声を上げる紗和(さわ)さん。 『大ちゃん、今だ!』  僕の合図と共に、時間の流れが止まった。  モース・ギョネは異変に気づいて後ずさる。 「好きにしていいぞ。僕は、お前以外を巻き戻せるんだ」  もちろん、僕の力じゃない。ユーリに時間を止めてもらったのだ。  こうすれば、僕とモース・ギョネ以外は、怪我をしようが首を()()()ようが、元通りに戻る。 「マ、マテ! ヤメロ! ヤメテクレ!」 「イヤだね。お前は許さない」  コイツは、久々にあの技でケリをつけてやる。 「食らえ! アース・インパクト!!」  次の瞬間、モース・ギョネの頭部は、粉々に吹き飛んだ。 「ただのパンチなんだけどね」  頭部を無くしたモース・ギョネは、博己(ひろき)氏を手放してグニャグニャと床を這い回り、ひっくり返ってしばらく痙攣(けいれん)した後、動かなくなった。 『大ちゃん、ユーリ、ありがとう』  僕は、止まっていた時間の流れを定期時券(パス)の力で正常に戻してから、大ちゃんとユーリにお礼を言った。 『やー! どういたしまして!』 『っていうか、たっちゃんさー? さっきも気になったんだけど、ガジェットの〝時間停止〟を自分で解除してないか?』  さすが大ちゃん。気付いたか。 『詳しくは後で話すよ』  それより先に、ギョッとしているみんなに、説明しなきゃ。 『あー、了解! こっちも色々と準備があるから、また後でなー!』  通信が切れた。はて? 何の準備だろう。  ……まあいいか。 「お父さん! しっかりして!」  博己(ひろき)氏に駆け寄り、揺さぶっている紗和さん。僕は〝治癒連鎖(ちゆれんさ)〟の呪文を……唱える前に、織田さんが〝畜魔石(ちくませき)〟を使ったようだ。みるみる顔色が良くなっていく。 「良かった! 生きていた!」  満面の笑みを浮かべる織田さん。  あんた本当にいい人だな。畜魔石には、後で忘れずに補充しておいてあげよう。 「お父さん、大丈夫? お父さん!」 「…………紗和? わ、私は?」  大丈夫。さっきまでとは全然違う、これが正常な博己(ひろき)氏だ。 「そうだ。私はモース・ギョネと共に……ああ! 何て事を!」  記憶が残っているのか?  辛いかもしれないけど、何があったのか詳しい話を聞かなければならないな。 『タツヤ、その前に、あの奥の部屋に……』 『おっと、そうだった。まだ悪魔が居たか!』   >>>  5年前、西門が破られて、中央ブロックに悪魔がなだれ込んで来た日、博己(ひろき)氏は5名の部下と共に、この地下室に居た。 「偶然だったんです。この下の物置まで逃げた時に、悪魔が放った魔法で床が崩れて……あ、気をつけて下さい! その奥の部屋に3匹居ます。それで最後です」  偶然、〝更に下層へと通じる通路〟を見つけた博己(ひろき)氏は、命からがら逃げ込んだその先に、ヤツを見つけた。 「直感でした……コイツは間違いなく、モース・ギョネだ、と」  理由はわからない。  もしかしたらそれこそ、モース・ギョネの罠だったのかもしれない。  背後からは悪魔。仲間は既に皆殺しにされ、自分の魔力もゼロ。 「私は、あの言葉を叫びました。このままでは、どちらにせよ命はない。それならば……と」  博己(ひろき)氏は、イチかバチか叫んだ。〝モース・ギョネを得たり〟と。 「そこからは、アイツの言いなりでした。言い訳をするつもりはありません。私の心のどこかに、付け込まれる弱い部分が有ったのでしょう」 「お父さん……」  ここに攻め込んだ悪魔を、圧倒的な力で捻じ伏せ、支配したモース・ギョネは、博己(ひろき)氏を操って、自分の目的を遂げようとしていた。 「その目的というのが、この〝標本〟です」  博己(ひろき)氏がモース・ギョネを発見した場所の奥。  天井が低い、やけに奥行きのある空間があり、ピクリとも動かない、老若男女、様々な人間が収められた透明の容器がズラリと並べられていた。  ……恐ろしいほどの数だ。 「おい、何だこりゃあ?」 「怖いし! これ、生きてるの?」  僕には分かる。この人たちの時間は、()き止められているだけだ。 「〝1000人集めれば、真の力を手に入れる事が出来る〟……アイツはそう言っていました。ここにはもう、737人もの人が居ます。ほとんどが今までに、モース・ギョネの居ない場所で、あの言葉を言った人たちです」  はるか昔、この砦ができる、もっとずっと前。  邪悪な魔道士モース・ギョネは、魔法ではなく、自分の体を変化させて、直接、時間と空間を操る術を編み出した。  しかし、特定の言葉を喋っただけで、ここに強制的に連れてこられるなんて、そんな大掛かりな仕掛けを、どうやって作ったんだ? 「嘘か真か……〝魔界の軸石〟を使ったのだそうです。」 「魔界の軸石?! 伝説のオンパレードですね……本当に存在するなんて信じられません」  織田さん、そんな大層なものじゃないよ。  今じゃ変顔(へんがお)が得意なウサギさんだから。 「軸石を所持していた〝その時代の王〟に多くの貢ぎ物をして、モース・ギョネは軸石を借り、罠とエサを用意します」  知っての通り、その罠とは〝モース・ギョネを得たり〟と唱えた人間を、自分の研究室に用意した標本箱に捕らえる事。 「効果は魔界全土……軸石でなければ、不可能でしょう」 『ルナ、知っていたの?』 『まっさかー! 僕の記憶は、100年ぐらい前からで、それより昔の事は、全然わかんないよ』  自分の目の前に現れた者が〝モース・ギョネを得たり〟と唱えれば、時間と空間を支配する力を与える……それがエサ。食いつけば、確かに時間と空間を自由に操れるようになるが、その者自身は、モース・ギョネに自由に操られる人形となる。 「そしてアイツは眠りについた。伝説は独り歩きして標本箱を埋めていく。もし自分を見つけた者が居れば、その者の寿命を使って、さらに標本箱を埋める」  自分は老いる事なく、やがて1000人の〝犠牲者〟が揃えば、アイツは真の力を手に入れるという寸法だ。気の長い話だが。 「私と一体になったモース・ギョネは、悪魔に指示を出しました。〝魔力の大きい魔道士を集めろ〟と。残った標本箱を、出来る限り有能な魔道士で満たそうと考えたのでしょう」  西門で倒した5体の悪魔は、侵入者を襲い、強い者だけをモース・ギョネに引き渡していた。 「紗和(さわ)も、アイツのお眼鏡に適ったのです。だから、多数の悪魔を使って、迎えに行かせた」  紗和(さわ)さんは危うく、この標本箱に入れられる所だったんだ。  ……あれ? でも確か、アイツ紗和(さわ)さんや僕たちを〝食う〟って言っていたような……? 「標本箱はアイツの胃袋です。入れられた人間は、1000人揃った時点で消化されるところでした」  だから〝食う〟なのか。 「魔力の低い者や死んだ人間を……あと、空腹時には、直接、自分の口で食べていました。今思えば、おぞましい事この上ないです」  そっちの〝食う〟も有り得たのか?! 嫌すぎる。 「うぇえ……俺、あの気持ち悪い口で食われる所だったのか!」 「そんな死に方、絶対ヤだし! ふざけるなし!」  ……お前ら、ちゃんと〝魔力の低い者〟って自覚しているな。 「皆さん、すみませんでした。なんとお詫びしたらいいか……」 「鈴木さん、あなたは悪くない。そんなに自分を責めてはいけない」 「エーコさん、ありがとう……」  涙ぐむ紗和(さわ)さん。 「しかし、私がアイツを見つけなければ、こんな事には……」 「いいえ。むしろこの場所を見つけて下さったから、1000人の標本が完成する前に、モース・ギョネを倒せたんですよ」  織田さんの言う通りだ。消化されてからでは遅かったからな。 「しかし、私は取り返しの付かない事を……何人もの、罪もない人たちを標本に追加してしまいました」 「いえ、1000人集まって、消化されてしまう前だから良かったんです」  僕の言葉に、首を傾げる博己(ひろき)氏。  ……よし。それじゃ、この〝胃袋〟を()(さば)いて、中の人を助けなきゃな!  僕は、定期時券(パス)の力で、()き止められた737人の時間を、正常に戻した。 標本の挿絵1

初回投稿日時:2020年2月2日 11:20

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年2月2日 12時16分

    そうだよ、ここにもいたよ…… 取り敢えずぶん殴る系の人が……

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    SHO

    2020年2月2日 12時16分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月3日 0時11分

    アアッ(๑•̀ㅁ•́๑)✧ 事件ですかい?! なんならあっしが行って、一発くらゎして来やしょうか?←こんな感じですか!? (*ノω・*)テヘ いつも有り難うございます!

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    ガトー

    2020年2月3日 0時11分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2020年2月3日 22時30分

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    つづきたのしみにしてます!!

    hake

    2020年2月3日 22時30分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月4日 1時35分

    ヒァァアァ!? 。・゚・(ノ∀`)・゚・。 頑張りますッ!! いつも本当に有難うございます!!

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    ガトー

    2020年2月4日 1時35分

    カレーうどん
  • れびゅにゃ~

    とら猫の尻尾

    ♡300pt 2020年12月6日 23時21分

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    見事なお点前で

    とら猫の尻尾

    2020年12月6日 23時21分

    れびゅにゃ~
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年12月6日 23時54分

    続けてお読み頂けて本当に嬉しいです……。゚(゚´Д`゚)゚。 気合い入れてがんばります!!

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    ガトー

    2020年12月6日 23時54分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡200pt 2020年2月2日 23時38分

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    グッジョブ!

    渡鴉

    2020年2月2日 23時38分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月3日 0時11分

    ふあああ! (人´∀`).☆.。.:*・゚グッジョブ有り難うございます! 至福です!

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    ガトー

    2020年2月3日 0時11分

    カレーうどん

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