首相「そんなこと」発言が〝問題化〟【点描・永田町】

2025年12月16日11時00分

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政治ジャーナリスト・泉 宏

 高市早苗首相にとって初の党首討論(11月26日)での「そんなこと」発言が〝問題化〟している。昨年と今年の衆参選挙での自民党大敗の最大要因とされる「政治とカネ」問題に、首相自身がそう言い放ったことで、政界だけでなく国民からも反発、批判が強まっているからだ。多くの政界関係者は「言ってはいけない事」(自民長老)と首を傾(かし)げ、与党内にも「首相や党幹部が今後の対応を間違えると、政権への大きなダメージになりかねない」(自民幹部)との不安が広がる。

 この「発言」は、党首討論トップバッターの野田佳彦・立憲民主党代表との質疑応答の最後に、時間切れを見透かしたように首相が口にしたものだ。首相と対峙(たいじ)した野田氏は、28分の持ち時間のほとんどを、中国が猛反発したいわゆる「台湾有事」発言での責任追及と、さらなる物価高騰につながりかねない超大型補正予算案策定に対する反論に費やした。その上で、最後に追及したのが「政治とカネ」を巡る首相の〝開き直り〟ともみえる後ろ向きの対応だった。

 その質疑を振り返ると、野田氏が昨秋に、当時の石破茂首相と約束した「企業・団体献金の受け皿となっている政党支部の実態調査の結果」について質(ただ)した。すると首相は、口を尖(とが)らせて「御党に示すという約束であるとは思っていない」とした上で「そんなことよりも、(国会議員)定数の削減やりましょうよ」と逆襲、野田氏は時間切れで再追及できないまま質疑打ち切りを余儀なくされた。

 要するに、首相は「『企業・団体献金』問題より、定数削減の方が重要」との認識を示したわけだが、前後のやりとりから、「売り言葉に買い言葉となる中で、思わず飛び出した〝本音〟」(自民長老)との受け止めが支配的。ただ、ここ数年の「政治とカネ」問題での自民の対応の拙劣さが、衆参選挙敗北の最大の原因だったこともあり、与野党の別なく「首相の発言は大問題、言っていい事と悪い事の区別もついていない」(立民幹部)との批判が相次ぐ事態を招いた。

「政治とカネ」軽視が政権の混乱要因に

 自民の「政治とカネ」問題に関して、共同通信社が11月15、16両日に実施した世論調査では「首相に問題解決への意欲を感じるかどうか」との質問に「感じない」とする回答が64.7%で、「感じる」の27.6%を大きく上回った。内閣支持率はなお高水準だが、その後の各種調査でも、「政治とカネ」を巡る首相の対応には国民の反応の厳しさが目立っている。

 そうした中、自民と日本維新の会は12月1日、衆院定数の1割削減について「小選挙区25比例20」とすることで合意した。「比例のみ定数50削減」を主張してきた維新が譲歩したもので、与党は今国会に関連法案を提出、野党側の「協力」を模索する。また自民が、維新の除名処分で無所属だった衆院議員3人を自民会派に加えたことで、与党は約1年ぶりに衆院過半数(233議席)を回復、今国会での補正予算、次期通常国会での新年度予算は、与党主導での衆院通過が可能となった。

 そもそも、維新との「連立合意」の軸として首相が重視せざるを得ない「衆院の定数削減」には、野党だけでなく自民内にも反対論が根強く「今国会での決着は至難の業」(自民国対)とみられていた。それだけに、「今回の自維合意で、与野党交渉が一気に進展する可能性もある」(同)。ただ、今回の首相の「そんなこと」発言には「定数削減を隠れ蓑(みの)にして、自民が維新を取り込む狙い」(同)との背景も垣間見えるだけに、今後の政権運営の混乱要因になることは避けられそうもない。

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◆時事通信社「地方行政」より転載。地方行政のお申し込みはこちら

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