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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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6分

GO WEST!

 目の前には、月面のような光景が広がっている。  ……原因は僕だ。 『タツヤ、スゴいね。逆方向に放っていたら、城塞都市ごと更地になっていたぞ?』  いやいや、そんな事しないから! ……どこの大魔王だよ。 「達也くん、逃げるぞ!」  背後から、肩を叩かれた。  え、エーコ? 「急いで!」  彩歌(あやか)も……! 「……達也さん、ちょっと目立ち過ぎよ。(やぐら)から見てた隊員が、騒ぎはじめてるわ」  クスリと笑う彩歌。  うーん。さすがにちょっと派手(ハデ)にやり過ぎたか。 「ごめんごめん。ちょっとまだ加減がわからなくって……」  門が閉まり始めた。変わり果てた地形を、ただ呆然と見ている探検者たち。  彼らが来る前に、急いで離れよう。 「おいボウズ! オマエ何者なんだよ!」 「スゲーし! あれ、何の魔法?」  やっぱ、バカップルも一緒か。 「いやー、助かりました! 思った通り、スゴいですね」  あ、織田さん! 「いえいえ、織田さんこそ、見事な風魔法でしたね。無事で良かったです……あれ? そちらは?」  エーコの後ろを、中学生ぐらいの、細身(ほそみ)の女の子がついてくる。 「ああ。彼女は鈴木(すずき)紗和(さわ)さん。私のお客様だ」  そっか、エーコは今回〝護衛のアルバイト〟だったっけ。 「は、はじめまして! 鈴木です!」  必死で走りながら、お辞儀(じぎ)をする鈴木さん。 「彼女は、こう見えて〝第二階級魔道士(トリッカー)〟なんだぞ」 「へぇ! 若いのにすごいわね!」  ほほう! トリッカー!  ……って何? 「達也さん、魔道士には、ゼロ階級から、最大十六階級まであるのよ。トリッカーは〝第二階級〟よ」  そろばんとか武道の〝段位〟みたいな物かな。 「でも……〝第二階級〟って、そんなにスゴいの?」  小声で、彩歌(あやか)に尋ねる。  十六階級まであって、二階級って聞くと、大したこと無い気もするんだけど……? 「ふふ。達也さん。魔道士の昇級試験はとてもキビシイのよ? 〝第一階級魔道士(アプレンティス)〟になるだけでも、何年も血の(にじ)むような努力が必要なの。〝階級無し魔道士(ノービス)〟で一生を終える人も多いのよ」 「なんだ、階級の事も知らないのか。達也くんは本当に〝魔界初心者〟なんだな……おっと。ここまで来ればもう大丈夫だ」  門からは、ずいぶん離れたし、わざわざ追いかけて来るヤツもいないだろう。  少し(ひら)けた場所で、全員が自己紹介を始めた。 「私は大川英子(おおかわえいこ)。エーコって呼んでくれ。ちなみに私も〝第二階級魔道士(トリッカー)〟だ」 「俺は遠藤(えんどう)(かける)……これは言う流れなのかよ? 〝階級無し魔道士(ノービス)。以上!」 「辻村(つじむら)富美(ふみ)。〝階級無し魔道士(ノービス)〟。よろ~!」 「織田啓太郎(おだけいたろう)と言います。階級は〝第五階級魔道士(マジシャン)〟です。よろしくお願いします」 「まっ!? 第五階級魔道士(マジシャン)って! ホントかよ!」 「マジぇ?! はじめてみた! 織田っち、実はすごい人?!」 「いえいえ。ただの新人探検者ですよ……それより、彼女です」  そう言って、チラリと彩歌に視線を向ける織田さん。ありゃ、知ってたの? 「ふふ。そうだね。この子はちょっとすごいぞ? ね、アヤ?」  エーコが、いたずらっ子のように彩歌を肘で突付く。 「もー、エーコ! 別にひけらかす物でもないでしょ?」  ちょっと困った顔の彩歌。  この二人、見た目は大人と子どもだけど、やっぱり同級生なんだな。 「まあまあ。ほら、自己紹介自己紹介!」   「まったく……えっと、藤島彩歌です、階級は……」  と言い掛けた彩歌の顔を見て、鈴木さんが叫ぶ。 「う……〝第十一階級魔道士(ウォーロック)〟! 〝雷神(フルゴラ)〟の彩歌さま?!」  目をパチクリしている鈴木さん。 「やっぱり、若い人はそっち? 〝炎の女帝(スタタ・マテル)〟の方が、有名だと思うんだけど」 「マジかよ! 聞いたことあるぞ! 〝炎の女帝(スタタ・マテル)〟って、超有名人じゃねえか!」 「ちょ?! 〝第十一階級魔道士(ウォーロック)〟?! ウソでしょ?!」  ふふん。城塞都市のアイドルの存在にやっと気付いたか!  ……あ、そうか、あの色紙には彩歌のサインをもらって帰ればいいんだな、大ちゃん? 「うわああ! すっごい! 私、大ファンなんです! 彩歌様はどちらまで探検に行かれるのですか?」  彩歌にキラキラした熱い視線を送りつつ、はしゃいでいる鈴木さん。 「駄目よ、そんな大きな声出しちゃ。ここはもう、安全な城塞都市じゃないんだから」  軽く微笑みながら、人差し指を口に当てる彩歌。  ハッとした表情の後に、ペロッと舌を出して肩をすくめる鈴木さん。 「僕たちは、西の大砦(おおとりで)の向こう〝落日(らくじつ)轟雷(ごうらい)の塔〟まで行くんだ」 「ええっ? 砦を超えるんですか?! あ、えっと……?」  驚いた顔で僕を見つめている鈴木さん。  ……あ、そうか。自己紹介がまだだったな。 「僕は内海達也(うつみたつや)。階級というのは、よく分かりません。よろしくお願いします」 「あ、はい! ご丁寧にどうも」  笑顔がかわいい子だな。  ひいッ!? あ、あと、彩歌のちょっと引きつった作り笑顔もステキだな、あ、あは、あはは…… 「そうだ、お前さっきの魔法、何だ、ありゃあ!?」  むむ? 覚えていたか遠藤(えんどう)(かける)。  彩歌の〝有名人登場〟的な衝撃(ショック)誤魔化(ごまか)せると思ったのに。 「遠藤くん、地下牢って入った事あるかい? ……この魔界には、知らない方がいい事が、沢山有るんだ。未来ある若者が(ひど)い目に遭うのを、私は見たくないなあ」  エーコが凄みのきいた口調でニヤリと笑う。 「げぇッ?! ちょ! ちょっと待った! 俺は何も聞かねえ! み、見てもいないし興味もない!」 「そうだな遠藤くん。君は何も見ていない……辻村さんも、見てないよな?」 「見てないし知らないし! 魔法? なにそれオイシイの?!」 「……だそうだ。達也くん」  ニシシと笑うエーコ。さすがだな。  あ、もちろん、僕の秘密を言いふらしたところで、地下牢に入れられはしないぞ? 「……彩歌様、お願いがあります!」  突然、彩歌の手をとり、真剣な顔で鈴木さんが言った。今にも泣き出しそうな表情だ。 「私を……西の大砦(おおとりで)まで、連れて行ってくれませんか?」 「え? だってあなた、エーコと半周コースじゃ……?」  驚いた様子の彩歌と、ヤレヤレといった感じでため息をつくエーコ。 「アヤ、この子の親父さん、西の大砦の守備隊員(しゅびたいいん)なんだそうだ」 「えっ? そんな……」  あからさまに暗い表情になる彩歌。そういえば、西の大砦は、ひどい状況だって言ってたけど…… 「もう、5年前から連絡が途絶えたままなんです。聞こえて来るのは良くない噂ばかり……」 「お袋さんが去年の暮れに亡くなって〝探検者〟を目指すことにしたらしい」 「私、強くなって西に行くために、魔法をいっぱい練習したんです!」  すごいな、この子! お父さんに会いたいという一心で、エーコと同じ階級になってしまうほど、自分を鍛えたのか。 「西の大砦へ行ってくれる護衛なんか絶対居ないし、私だって、初心者のこの子を連れて無事に大砦まで行き着けるか、分からないからな」 「だから、今日は訓練のために、東門を目指す予定だったのね?」 「……お願いです! 彩歌様! 私を西へ連れて行ってください!」 「ちょっと、紗和(さわ)ちゃん。いくらアヤが強くっても、初心者を連れて西の大砦に行くなんて危険過ぎる! ……それに、達也くんは300匹近い悪魔を倒したんだ。〝呪い除けの儀式 〟をするために、一旦戻らないと……」 「HuLex UmThel eAtcRs iL」  〝呪病変換〟の呪文を唱えると、いかにも病気になりそうな、不気味な魔法陣が頭上に浮かぶ。  僕の体から、黒や灰色や茶色のモヤが、次々とその魔法陣に吸い込まれ、やがて粉々に砕け散った。 「ブルー。状態異常は?」 『問題ないよタツヤ。287あった〝呪詛〟は、全て消えた。もとより、どの呪詛もキミの脅威になりそうな物ではなかったが……』  やめてくれよ。どこかの軍人さんじゃあるまいし。  僕は呪いを持ったままウロウロする趣味はないんだ。 「ちょ、達也くん? それは一体?!」  初めて見る異様な魔法と、僕の呪詛が一瞬で消えた事に驚くエーコ。  そうか、精霊グアレティンと契約したから、ブルーの声が聞こえるんだった。 「達也さん、もしかして?」  少し嬉しそうな表情で僕を見る彩歌。 「うん。行こうか、鈴木さんのお父さんのいる、西の大砦に!」  GO WEST!の挿絵1

>>> 今回、魔道士の階級のお話が出ましたので、設定資料を載せさせて頂きます。 階級無し魔道士   ノービス 第1階級魔道士   アプレンティス 第2階級魔道士   トリッカー 第3階級魔道士   トリックスター 第4階級魔道士   ジャグラー 第5階級魔道士   マジシャン 第6階級魔道士   イリュージョニスト 第7階級魔道士   エヴォーカー 第8階級魔道士   ミデアム 第9階級魔道士   シャーマン 第10階級魔道士   エンチャンター 第11階級魔道士   ウォーロック 第12階級魔道士   ソーサラー(男)・ソーサレス(女) 第13階級魔道士   ネクロマンサー 第14階級魔道士   ヘクサー(男)・ヘクセ(女) 第15階級魔道士   メイガス 第16階級魔道士   ウィザード(男)・ウィッチ(女) 性別によって、呼び名が変わるものがあります。

初回投稿日時:2020年1月18日 9:27

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年1月18日 9時50分

    タツヤ氏やるねえ。 はっ!? 世紀末救世主とはまさか…

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    SHO

    2020年1月18日 9時50分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年1月18日 10時16分

    ワーイヾ(*´∀`*)ノ いつも有難うございます! ……287の呪いを持つ男(←気持ち悪いからと即消し)アレな救世主は、果たして幸せになれるのでしょうか(←まさかの個人的幸福を切望) ……そろそろ、最新話を書かねばですねえ(←〝未完結のまま5ヶ月以上〟のアナウンスにドキドキ)

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    ガトー

    2020年1月18日 10時16分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2020年1月18日 12時07分

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    つづきたのしみにしてます!!

    hake

    2020年1月18日 12時07分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年1月18日 13時49分

    (´∀`*)ウフフ いつも有り難うございます! 頑張りますッッッ!

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    ガトー

    2020年1月18日 13時49分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡200pt 2020年1月18日 11時53分

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    良き哉 良き哉

    渡鴉

    2020年1月18日 11時53分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年1月18日 13時47分

    (〃∇〃)いつも有り難うございます! 頑張って良い作品を書かせて頂きますね!

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    ガトー

    2020年1月18日 13時47分

    カレーうどん
  • メタルひよこ

    yatacrow

    ♡100pt 2021年5月5日 9時49分

    アガルタでは、30歳までチェリーだったらウィザードになれるって聞いたことがあるんですが、最高階級になれるんですね!

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    yatacrow

    2021年5月5日 9時49分

    メタルひよこ
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年5月5日 10時30分

    いつもありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ30年熟成タイプのウィザードの方が格段に強まっている〟と市場調査で明らかになっております!(←?!)

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    ガトー

    2021年5月5日 10時30分

    カレーうどん

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