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「カイゴクエスト」「けあとの遭遇」ゲームで介護を疑似体験…判断求められ「親の希望を聞いておく大切さ痛感」
家族らが介護が必要になった際の対応などについて学べるボードゲームやカードゲームが登場している。高齢化が進む中、幅広い世代に介護を疑似体験してもらい、将来不安を減らす狙いがある。(山田朋代)
「カイゴクエスト」の体験会で、ゲームを楽しむ参加者(昨年12月、東京都内で)
昨年12月、すごろく形式のボードゲーム「カイゴクエスト」の体験会が、東京都内で開かれた。プレーヤーは介護する人とされる人の2人1組で、サイコロを振りながら、自立期、介護期、終末期などに分かれたステージを進む。ます目には「検査入院」や「要介護認定」などの出来事、「認知機能が1下がる」などの指示が書かれており、止まるごとに2人で話し合って対応方針を決めていく。
介護者としてプレーした東京都内の大学職員の女性(59)は「介護サービスの選択や延命治療の有無など、思いの外、判断を求められる場面が多かった。事前に親の希望などを聞いておく大切さを痛感した」と語った。
カイゴクエストは、ゲームデザイナーの荒木勇輝さん(41)が開発した。3年前に出産・育児期の課題を疑似体験する「サンゴクエスト」を制作し好評だったことから、続編として介護版を企画。ケアマネジャーや医師、介護経験者ら数十人の意見を基に内容を固めた。「知識や準備がないまま介護生活に入り、悩む人は多い。ゲームを役立ててほしい」と、荒木さん。今後も各地で体験会が開かれる予定だ。
「けあとの遭遇」のゲーム画面。ひいたカードは「脳卒中」。サイコロの出目で介護度に影響が出る
働きながら介護を担う「ワーキングケアラー」に焦点をあてて開発されたのが、ボードゲーム型のプログラム「けあとの遭遇」だ。プレーヤー3、4人でチームを構成。それぞれが介護との両立を図りながら、協力して会社の業務を進める。カードには、「親が脳卒中で倒れた」「クレームを受ける」など、職場や家庭で生じる様々な試練が……。個人の判断だけでなく、メンバーの協力も結果に影響するため、職場での支え合いの重要性を体感できる。
企業研修などを手がける佐々木将人さん(44)が、自身が以前勤めていた会社で持病を隠したまま倒れた経験なども生かして、考案した。「ワーキングケアラーが増える中、一人で抱え込まず、助けを求め合える職場環境の大切さを知ってほしい」と話す。大手企業の研修などに取り入れられており、10~70代の延べ1000人以上がプレーしたという。
介護をテーマにしたゲームが登場している背景には、高齢化で介護にかかわる人の増加が見込まれていることがある。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、要介護認定者は約735万人(昨年10月末時点)。総務省の「就業構造基本調査」では、2022年に介護をしながら働く人は364万6000人で、17年から18万3000人増えた。こうした中、ゲームは幅広い世代に介護を身近に考えてもらうツールになっているようだ。
介護や終活にまつわる相談や手続き代行を手がける「想ひ人」(東京)の「ファミリーマッチ」は、普段話しづらい老後の希望などを知ることができるカードゲームだ。「介護をみんなの話題に」と、経済産業省が22年から実施している「オープンケアプロジェクト」の支援対象企画として制作された。
主役の家族を1人決めたら、「体が不自由になってもやりたいことは?」などのお題と、回答となる複数の選択肢が書かれたカードを1枚めくる。他の家族は話し合って、選択肢を一つ選び、主役の家族の回答と合っていたらポイントを獲得できる。
家族に限らず、友人、知人とも楽しめ、それぞれの人生観や介護の考え方などをうかがえる。2月から市販される予定だ。
介護問題に詳しい日本総研の紀伊信之さんは「介護の知識や心構えをあらかじめ身につけておけば、いざという時に望んだ選択ができる。参加しやすいゲームやイベントなどを通して、介護の関係人口が増えれば、超高齢社会の備えにもなる」と話している。
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