パトロールでもらえる報酬額
この日本人経営の解体会社の本社は埼玉県。経営者は現場の中学卒業後、日雇い労働からスタートした。たたき上げから会社を成長させてきた。役員には小中学時代に一緒にやんちゃをしていた時代の仲間がいる。しかし、やんちゃ時代の面影はまったくない。
きわめてまじめに働き、そして違法滞在の外国人問題に頭を悩ませている。
前述のように、工事現場に立ち続ける警備の仕事を行うには力不足だが、巡回パトロールならば60代でもやれなくもない。実は最初、解体の現場作業を希望した。間違いなく、もっとも人手不足に苦しんでいる職種の1つだからだ。ゴミ収集の仕事を体験したことで少し体力に自信を持ててもいた。
解体の現場は日本人外国人問わず給与はいい。未経験で、資格をもっていなくても、日給1万3000円ほどが期待できる。具体的な仕事は解体した建物の廃材を集めたり埃が舞わないように水を撒いたりだが、経験を積むと日給は2万円を超える。
廃材はトラックに載せて処分場に運ばれるが、積むにはコツが要る。荷台の周囲をベニヤ板で囲み、荷が道路に落下しないようにブロックする。その囲いの中に廃材を秩序だてて積んでいく。この技術を身に付けると評価が上がり給料も上がる。クレーンをはじめ重機を扱えると、さらに給与は増える。
また、日本語の会話ができると、元請けと下請けとのコミュニケーションの助けになるので評価が上がる。実際に日本人が好待遇で働いていると聞いた。
手袋もせずに便器を雑巾で拭く
しかし、現場の仕事は元請け業者に断られた。63歳で未経験者が現場で作業を行うのは危険すぎるという判断だ。その代わりに提案されたのが、現場をパトロールする仕事だった。
集合は元請け会社のロビー。その後、会議室で業務の説明を受けた。一緒に現場をまわってくれるのは30代の役員、スギモトさん(仮名・以下同)。創業時からいて、今は取締役の1人だ。彼も若いころは社長のやんちゃ仲間だったらしいが、今はそんな様子はまったく感じられない。
「社長の友だちだから責任ある仕事を任されていると思われたくないんです。縁のあったこの会社、この仕事で、自力で成果を上げたいと思って働いています」
スギモトさんは言う。仕事をするモチベーションなのだろう。
出発前には社内の清掃を行った。担当は社屋の3階の男性トイレ。なかに入ると、掃除する必要を感じないくらいピカピカだった。常に清潔を心がけているのだろう。「これを使ってください」と、スギモトさんからしぼった雑巾を渡された。
目の前で彼は手袋もせずに便器を雑巾でゴシゴシ拭き始めた。素手で行うのが会社の方針らしい。気合いを感じた。役員が率先して素手で便器を掃除したら、社員もやらないわけにはいかない。こういう行いは会社にいい緊張感をもたらす。