なぜエース社員が、たった数百円のために交通費をごまかすのか できる社員ほど陥る心理的なワナ
「まさか、あの人が不正をするなんて……」 社内で信頼されていたエース社員が、経費の不正申請で処分を受けた。金額は年間で合計してもわずか2万円ほど。誰もが耳を疑った。なぜ、あれほど優秀な人材がこんな小さな金額のために会社を裏切ったのか。 【画像】「これだけ貢献しているのだから、少しくらいいいだろう」が組織を滅ぼす 実はこの現象には「モラルライセンシング効果」という名前がついている。人は「自分は十分に頑張った」と感じると、その実績を免罪符にして、ルール違反を自分に許可してしまう。しかも本人に悪意はほとんどない。 そこで今回は、優秀な社員ほど陥りやすい心理現象の正体と、組織としての対策について解説する。部下のマネジメントに悩んでいる上司は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。 著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ) 企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
モラルライセンシングとは何か
モラルライセンシングとは「良いことをしたから、悪いことをしても許される」と無意識に思い込んでしまう心理現象である。道徳的な実績が、後の不道徳な行動の免罪符(ライセンス)になってしまう状態のことだ。 簡単に言えば「頑張った自分」へのご褒美として、普段は我慢している行動に手を出しやすくなるということだ。本人の中では「これくらいは問題ない」という自然な感情が起きる。そのため、自分が矛盾した行動を取っていることにすら気付かない場合が多い。 身近な例で考えてみよう。 ・ダイエット中の人が、10キロ走ったあとに「これだけ頑張ったんだから」とビールを飲んでしまう ・1カ月間節約を頑張った人が、月末に「ご褒美」として高額な買い物をしてしまう ・商談の準備をしっかりできるようになった人が、お客様との接触回数を減らしてしまう いずれも「良いことをした」「努力した」という事実が、「少しくらい横着してもいい」と思い込ませている。本人の感覚では合理的な判断だ。しかし冷静に見れば、本来の目的とは真逆の行動を取っている。 注目すべきは、本人がこの矛盾にほとんど気付かないことである。「頑張ったのだから少しくらい崩しても問題ない」という感覚は、非常に自然に思える。その自然さこそが、この心理現象の怖さなのだ。