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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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7分

回想と決闘

 俺は九条大作(くじょうだいさく)。  ちょっとだけ、昔話をしてもいいかな。  >>>  ……神奈川に引っ越してきたばかりの頃の俺は、新しい環境に馴染(なじ)めずにいた。 「やー! 何してるの?」 「あー、えっと……別に……」  世の中には、チヤホヤされるタイプの転校生と、そうでない転校生がいる。  後者だった俺は、教室の隅で、新しく貰った教科書を、ただ眺めていた。  ……そんな俺に、ユーリは話し掛けてくれたんだ。 「だったらさー、こっちへおいでよ! のっさんがね、また、変顔の新作を発表するんだって!」  嬉しかった。  もちろん、聞いたことのないあだ名で、変顔自慢(へんがおじまん)の誰かさんを紹介された事ではないぜー。  自分で勝手に壁を作って、孤立しようとしていた俺を、ユーリは救ってくれたんだ。 「えー! それって、たっちゃん()の近くだよー!」  その日の内に、俺がどこに住んでいるのか聞かれた。  まったく。ラテン系とガテン系を、足して2で割らないタイプの性格は、昔から、面白いほど変わっていないよな。  たっちゃんは忘れてるみたいだけど、実は、俺と、たっちゃん、栗っちが、仲良し3人組になったのも、ユーリの手引きなんだぜー。 「ねえ、たっちゃん! 今日は大ちゃんも一緒に行っていいよね!」  その頃ユーリは、たっちゃんの家に毎日のように遊びに行っていたし、俺も、即日連れて行かれたんだ。〝大ちゃん〟っていうのも、その時ユーリがつけた、あだ名だ。 「僕は内海達也(うつみたつや)。あの大きな家って九条くん()だったんだね! 明日から、一緒に登校しようよ!」  たっちゃん、結構長い間、俺の事〝九条くん〟って呼んでたよなー。 「もー! たっちゃん! 次に〝九条くん〟って呼んだら、罰ゲームだからねー!」 「なんでだよユーリ!?」  それを強制的に〝大ちゃん〟に変えたのも、ユーリだった。  ……で、(しばら)くすれば、ユーリがたっちゃんを好きなんだって、なんと無くわかってしまった。  ショックだった。で、そのショックで、自分がユーリの事を好きだって気付いたんだ。皮肉なもんだよなー。  確かにショックだったんだけど、たっちゃんは……ああ。今思えば、栗っちもだな。なんとなく、普通と違う、ヒロイックな部分とかがあって、不思議と納得したんだ。 「まさか、本当に英雄候補だとは思わなかったけどな?」    俺、こっちに引っ越してくる前は、本当に友達がいなくてな。まあ、俺の能力を理解してくれと言っても、普通の子どもには無理だろうから。  ユーリは、そんな事お構い無しに、俺とたっちゃん、栗っちを繋いでくれたし、おかげでクラスの皆とも、仲良くなれた。そして俺は、どんどんユーリに惹かれて行ったんだ。  >>>  俺の昔語(むかしがた)りを聞いてくれてありがとなー。  おっと。時間を食っちまったけど、今は降って湧いたこの状況を、どうにかしないと…… 「やー! 里人(りひと)! 大ちゃんは嘘なんかついてないんだよ!」  ユーリが必死に止めようとしているのは、ユーリの従兄弟(いとこ)里人(りひと)。  彼も、ウォルナミスの血を引く者だ。その証拠に、彼らの戦闘衣装である、ウォルナミス・ガジェットの、レプリカを装備している。  その姿は、埴輪(はにわ)にそっくりだ。ずんぐりむっくりで、見ている分には可愛い。 「ユーリちゃんは黙ってて! こいつは一族の敵なんだ!」  しかし、可愛いとか言って、(なご)んでいる余裕はない。  ガジェットを装備した彼らは、人間など一瞬で葬れる程の戦闘力を持っているぜ。  頼むから落ち着いてくれ、里人(りひと)。 「大ちゃんは、本当に私を助けてくれたんだよ! ガジェットも直せるんだよ!」  ユーリ、説得は有り難いんだけど、俺の腕にしがみついたままだと、彼の怒りは蓄積(ちくせき)されていく一方だぜー? 「もう我慢できません! この恥知らずの大嘘を、ボクが暴いてやる! 長老様、どうか、こいつと戦わせて下さい!」  血走った目で、そう言い放つと、里人(りひと)は俺に向かって戦闘態勢をとる。 「これだけ言ってもまだわからんか! やめいと言うておる!」  声を荒げて制止する長老。 「いいえ、やめません! さあ、覚悟しろ、ペテン師!」  どうやら、彼は怒りで我を忘れているようだ。  長老は、やれやれといった表情を浮かべて、申し訳なさそうに、こちらを見る。 「仕方がない……大作さん。済みませんが、相手をしてやってもらえますか」  俺は、軽くうなずいて、ベルトをリュックから取り出し、腰に巻いた。 「ユーリ、ちょっと離れててくれ」  リュックサックは、もう動力源ではない。  ブルーの欠片(かけら)が埋め込まれ、そこから無尽蔵に、高濃度のエネルギーが供給されるようになったから、ベルトは単体で稼働するんだ。  ちなみにリュックの中には、おふくろが作ってくれた、今日の昼飯のサンドイッチが詰まっている。 「……変身!」  まばゆい光が辺りを包み、変身が完了した。 「な……! お前、何なんだよ!!」  里人(りひと)は、俺の変身を見て、驚いている。  聞かれたからには、自己紹介しなくちゃなー。 「私はレッド。地球を守るために戦う、正義の戦士だ」 「やーん! 大ちゃんカッコイイ! 私も守って!!」  ユーリ、色々と(こじ)れるから、静かに見ててくれないかなー。  ……ほら見ろ、里人(りひと)くん、鬼の形相で襲い掛かってきたじゃないか。 「ち、畜生! 死ねえええぇぇぇ!!」  〝死ね〟って言っちゃったなー!  ……まあ気持ちはわかるけど。  逆の立場なら、俺だって死に物狂いで戦うぜー。 「自動回避システム、発動」 『Ready(レディー)』  でも、悪いなー。俺は死ねないし、絶対に負けられない。  突進してきた里人(りひと)を、難なく(かわ)す。 「なかなかのスピードだが、私には当たらない」  あー、回避システムが無くても、俺、攻撃が見えてるなー。機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)の効果で、俺自身の身体能力も上がってるんだよな。 「避けた?! ふ……普通の人間が、なんでそんなに動けるんだよ!」 「私は普通の人間ではないぞ、リヒト少年。もうやめ……」 「うるさい! まぐれだ! まぐれに決まってる!」  俺の言葉を(さえぎ)って、里人(りひと)は、何度も攻撃を仕掛けてくる。  が、もちろん俺には当たらない。そろそろ、わかってもらえたかな。  俺は、彼の強烈な右ストレートを、手首を掴むことによって、目の前で止めた。 「無駄だ。君は、私には勝てない。これで私が普通の人間ではないと、わかっただろう?」 「うそ……だ……嘘だ嘘だ嘘だ!」  里人(りひと)は、俺の手を振りほどき、距離を置いた。 「魔神の剣!」  そして、彼はとうとう、剣を抜いた。 「いかん! やめるんじゃ、里人(りひと)よ!」  長老が止めようとするが、彼は聞く耳を持たない。あれが、ユーリのガジェットの剣と同じ威力なら、俺にとっても油断の出来ない攻撃力を秘めているはずだ。 「リヒト少年。私は、君達と戦いに来たのでも、騙すために来たのでもない。共に地球を守るために来たのだ」 「知るか! ユーリちゃんに……! ユーリちゃんに近づく奴は許さない!!」  やっと、本音が聞けたな。俺も昔、心の底では、たっちゃんに、そう叫び続けていたんだぜ。 「リヒトくん。君の気持ちはよく分かる。私の事を認めたくないのだろう」  俺も最初は、ただ、たっちゃん……内海達也(うつみたつや)を、恋敵(こいがたき)としか見れなかった。けど…… 「パープル・ブレード」  腕から飛び出した(つか)に、紫色の怪しい光が伸びる。 「それならば、私も君に認めてもらえるよう、全身全霊でお相手しよう」  内海達也という男を、知れば知るほど、俺は彼を認めざるを得なかった。彼は、どんな時も、優しく、強く、正しかった。  俺は、たっちゃんに勝てるように、頑張ってきたんだ。ユーリに、相応(ふさわ)しい男になるためになー! 「リヒト少年! 私を超えてみろ!」  魔神の剣で、斬り掛かって来る里人(りひと)。 「メルキオール・マリオネット、発動」 『Ready(レディー)』  次の瞬間、紫色の光を放つ剣が、魔神の剣を弾き、里人(りひと)の全身の装甲を一瞬にして剥ぎ取る。  魔神の剣は、床に突き刺さり、レプリカ・ガジェットは、ドムン! という不思議な音を立てて、勾玉の姿に戻った。 「そこまでじゃ!」  長老が右手を挙げると、どこから現れたのか、ウォルナミス人であろう数人に、取り押さえられる里人(りひと)。暴れることもなく、ただ、俯いて、呆然としている。 「私で良ければ、いつでも相手になろう。だが、何度も言うように、私が君達の味方だという事は、覚えておいて欲しい」  俺の声が届いているのかどうかわからないが、里人(りひと)は表情も無く、ただ涙を流していた。 回想と決闘の挿絵1

初回投稿日時:2019年11月25日 23:54

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  • 賢者

    SHO

    〇100pt 2019年11月26日 0時12分

    絵にかいたようなレッド……

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    SHO

    2019年11月26日 0時12分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年11月26日 1時55分

    いつも有難うございます!! なにやら寝ぼけた様なコメントを……ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。申し訳ございません……!  作品が作品なら、大ちゃん、完全に主人公なんですけどねえ~ 。・゚・(ノД`)・゚・。

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    ガトー

    2019年11月26日 1時55分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2019年11月26日 1時26分

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    「尊い」…現場からは以上です

    hake

    2019年11月26日 1時26分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年11月26日 1時56分

    ふふぉおおおお!! 有難うございます!! ヾ(*´∀`*)ノ 猫さんたちカワイイ……( ´ ▽ ` )

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    ガトー

    2019年11月26日 1時56分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡300pt 2019年11月26日 21時05分

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    ▼▼

    ほほう やるではないか

    渡鴉

    2019年11月26日 21時05分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年11月27日 6時13分

    有難きお言葉ッ! 。・゚・(ノД`)・゚・。 更に頑張ってまいります!!

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    ガトー

    2019年11月27日 6時13分

    カレーうどん
  • 復讐乙女 ネメシス(デンドロ)

    東風雲雀

    2019年11月26日 0時06分

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    ▼▼

    いつも見てますよ

    東風雲雀

    2019年11月26日 0時06分

    復讐乙女 ネメシス(デンドロ)
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年11月26日 0時08分

    アアッΣ(´∀`;)  い、いつも有難うございますッ!!  

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    ガトー

    2019年11月26日 0時08分

    カレーうどん

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