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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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4分

風車の村へ

九条(くじょう)くんと栗栖(くりす)くんから頼まれたの」  彩歌(あやか)が2人から頼まれたその内容は〝たっちゃんに何も伝えず手紙をすり替えろ〟だそうだ。 「え?! どういう事? なんで大ちゃんと栗っちが……」 『九条くん、栗栖くん、彩歌です。聞こえる?』 『あー! 聞こえるぜー!』 『えへへ。僕も聞こえてるよ』  申し合わせたかのように、返事が帰ってきた。 『ちょっと、2人とも。どういう事か説明してよ!』 『お、やっぱり一悶着(ひともんちゃく)あったな?』   やっぱり? 何だ、やっぱりって……? 『……実は、おととい栗っちが〝未来予知〟をしたんだ』 『言わなくてごめんね』 『マジで?! なんで教えてくれなかったんだよ!』 『ゴメンなー。内容が内容だったんで、藤島(ふじしま)さんだけに伝える事にしたんだ』 『内容?』  ……どんな予知を見たら、僕に内緒で手紙をすり替えるなんて事になるんだ? 『えっとね、映像(ビジョン)は、壊れたポスト・青い手紙・炎。言葉(ワード)は、星の油断・未知の敵・敗北』  そのまんまだ。  栗っち、やっぱり予知してたんだ…… 『まあ、シンプルに考えると、たっちゃんかブルー、もしくは両方が油断したせいで、無警戒のまま手紙を投函したあと、未知の敵にポストを壊されて手紙を奪われ、燃やされて負ける。って事だろ』  そうだな、そうとしか思えない。  珍しく分かりやすい予知だな。 『という事で、申し訳ないけど、たっちゃんには〝油断したまま〟でいてもらおうという事になったんだ。そうすれば、予知通りになるからなー』  なるほど。僕が予知を知ってしまえば〝油断〟で手紙を燃やされる事にはならないな。そして、燃やされた手紙が偽物なら、〝敗北〟の所だけ未来が変わる。さすが大ちゃん。 『凄いね! ダイサク、カズヤ。恐れ入ったよ。そしてありがとう。〝分岐〟を失敗せずに済みそうだ』 『いや、スゴいのは藤島さんだろー。どうやって手紙を複製して、すり替えたんだ?』  思い返せば、マリルーが封筒と便箋(びんせん)を買った雑貨屋で、彩歌は買い物をしたいと言った。  更には、使い魔を使って、手紙を書くマリルーを観察していた。複製の為だったのか。 『オランダ語は読み書きできないけど、お絵描きは得意なのよ、私』  ……模写したんだ! 宛名書きを!  見事な出来栄えだったよ。 『すり替えたのは、犬の時だよね』 『うん、ラッキーだったわ。もし犬が来なかったら、こっそり魔法で風でも起こして、手紙を飛ばそうと思っていたの』  それだと、呪文の詠唱で気付かれるかもしれないからな。ある意味グッジョブ、犬。 『それにしても〝敵〟……本当に現れたんだな。どんな奴だった?』 『子どもだったよ。たぶん、同い年くらい』 『男の子だったね。なんかちょっと、達也さんに似ていたわ』 『え、そう? 顔とか全然違ったよね?』 『いえ、そういうのじゃなくて、雰囲気……とか?』  ふーん。自分じゃ、そんなのわかんないな。 『でね、僕は、そいつに殴られて、怪我をしたんだ』 『おいおい、マジか! たっちゃん、地球と同じ頑丈さなんだろ?』 『すごいねー! 地球を殴って怪我させちゃうって』  僕以外があの攻撃を食らったら洒落になんないな。一瞬でスプラッタだ。 『いや、今にしておもえば、あの攻撃は、キミにだけ有効な特殊攻撃かもしれない。〝星の強度〟をスルーした感じだ』  そうなんだ……いやでも、そうすると奴は、こちらの事を知り過ぎてないか? 『そう、あいつ、魔法も使っていたわね』 『すごいねー! 魔法使いなの?』 『でも私、あんな魔道士、見たことないわ。それにあの若さで煉獄(れんごく)の魔法を使えるなんて……』  謎は深まるばかりだ。 『とにかく、今後の分岐点は慎重に行かないとなー』 『そうだねダイサク。次回からは、可能な限りの人員で臨んでもらえると嬉しいのだが』 『僕も早く、土人形さんを動かせるように頑張る!』 『よろしくお願いするよ、カズヤ』  今、僕と彩歌はバスの中だ。目的地は、キンデルダイク。今のところ、(あいつ)が現れる気配はない。 『じゃあ、またね。2人とも気をつけてー!』 『ありがとう栗っち』 『俺もユーリのガジェットの修理に戻るぜー』 『頑張って、大ちゃん』  通信が切れた。そうか。みんなで一芝居打ったのが、見事にハマったんだな。  ハメられたのが自分じゃなくて敵なのは分かってるけど、なんか釈然としないのはなぜだろう。 「……という事だったの。ごめんなさい、達也さん」  申し訳なさそうに僕を見る彩歌。 「あ……いや、ナイスだったよ、彩歌さん」  まあいいか。悔しがる(あいつ)を思えば、多少は胸のすく思いだ。  バスは走る。窓からは見渡す限りの草原が見えている。あ、牛だ。 「手紙の宛て先は、マリルーの友達かな?」  宛て名にはStefan(ステファン) Brinkman(ブリンクマン)とある。 「彼氏よ。きっとね」  彩歌は優しい笑みを浮かべる。 「彼女、本当に楽しそうに、手紙を書いていたわ。言葉は分からなくても、それだけで分かる」  だから、守りたかったのだと彩歌は言う。  地球を破壊から遠ざける事より、マリルーの気持ちが一杯詰まった、この手紙を、彼の元に届けたいと純粋に思ったのだ。 「彩歌さん。届けよう、必ず」  僕もこの時初めて、手紙が無事で良かったと、心から思うことが出来た気がする。 「見て! 達也さん!」 「おお! これぞオランダって感じだなあ!」  車窓から風車群が見える。  しばらくして、僕達を乗せたバスは、ようやくキンデルダイクのバス停に到着した。 風車の村への挿絵1

初回投稿日時:2019年11月1日 15:02

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2019年11月2日 1時06分

    忘れた頃の未来予知! 前に読んだにも関わらず忘れてしまってるという:(;゙゚'ω゚'):

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    SHO

    2019年11月2日 1時06分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年2月15日 21時28分

    また抜かってるううううううう?!((((;゚Д゚)))アワアワアワ!? 申し訳ございません……きっとこう、何か、魂が抜けていたとかそういう感じだと思います! やっぱり吊ってきます!

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    ガトー

    2021年2月15日 21時28分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2019年11月1日 18時23分

    みんなの連携がひとつになってミッション達成ですね!(#^.^#) 素晴らしいッ そして、やっばり彩歌ちゃんすごいです。女優になれます!←

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    hake

    2019年11月1日 18時23分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年2月15日 21時26分

    ああう!。゚(゚´Д`゚)゚。申し訳ございません! まだ抜かりが御座いました! コメント有難う御座いますヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。今回の分岐点はかなりのファインプレイですよね! 私も気に入っております!

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    ガトー

    2021年2月15日 21時26分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡100pt 2019年11月1日 22時17分

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    良き哉 良き哉

    渡鴉

    2019年11月1日 22時17分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年2月15日 21時26分

    いつも有難うございます!。゚(゚´Д`゚)゚。返信が抜かりまくりで申し訳ございません……!

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    ガトー

    2021年2月15日 21時26分

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