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『私は今、人生のボーナスステージにいる』

皆様は「ボーナスステージ」という概念をご存じでしょうか。

ゲームをする方だとご存じかと思われますが、いわゆる本筋とは離れたステージで、本編クリア後などに現れる別シナリオだったり、裏ルートと呼ばれるアイテムをたくさん獲得できる特別なステージのことを指します。

私の大切な親友が自分の人生を振り返った時に、その概念を使って自分自身を表現していました。
その考え方が、とても切なく、美しく、潔く、とても印象に残っています。今日はそのことを、綴らせてください。

1. 「私は10年後に死ぬ」と思っていた10歳のころ

その友人は女性で、私とは10年来の仲です。
丁度私達が出会ったのが20歳の時。そこからずっと仲良く、環境が変わっても、今も連絡を取り合う仲良しです。

私と同じく、彼女も親の都合で様々な場所を転々とした経験があり、自分の存在意義や居場所、価値観が大きく揺らいだ幼少期を過ごしていました。なので、私にとってこの世界は生きづらいんだ、ということを告白した時、「私も生きづらいな」と、彼女は静かに共感をしてくれました。

恐らく同じような時期に、私達は別々の場所で、人生で最も苦しかった毎日を過ごしていました。
私は9-10歳の時に、英語が話せないためクラスメートからも、先生からも無視をされるという経験をし、「用意された条件をクリアしない限り、私はここに存在しちゃいけないんだ」というゲームルールを勝手に作り出しました。恐らくそれは、私がその場に適応するために、私を納得させるために、自分で編み出した生存戦略だったのだと思います。

そして友人は、同じく10歳の頃、あまりにも生きて行くことが辛く、耐えられないと感じて、こう思ったそうです。

「大丈夫、私は、10年後には、死ぬから」

だから、この苦しみは長くは続かない。生まれてから過ごした10年を、もう一周耐えたら、この苦しみは終わるんだ。彼女はそう考えて、一日一日を過ごしていた、と言っていました。
それを聞いたとき、私は思わず息をのみましたが、きっとこれも、彼女が生きて行くために自分で生み出した、ひとつのルールだったのでしょう。

お互い生きるのが下手くそな子どもだったね、と、今なら苦笑いできますが、当時の私たちは、ただ生きるのに必死でした。

2. 死ぬはずだった10年後、そこからさらに10年後


ですが私達は、20歳の時に出会いました。つまり、彼女が死ぬと自分で定義した時に出会っていました。そして彼女は死なずに、今も生きています。

先日お茶をした時に、ふとそのことを思い出して、どうして、20歳を過ぎた今も、あなたは生きていられるの?と、私は彼女に尋ねました。苦しい世界の中で、彼女はどうして生き続けることができるのか。すると、彼女は、はにかんで言いました。

「私は今、人生のボーナスステージにいるんだ」

彼女は死ぬはずだった20歳の時に、大切な人と出会いました。それが、今の彼女の旦那様です。不器用だけれど優しくて、筋が通っていないことは許さない、けれど可愛いものが好きで人情深い、私も知る、素敵な人です。

彼との出会いは、彼女の人生を大きく変えました。

20歳できっと、彼女は一度死んだのだろうと思います。そして今は、神様からもらった、彼とともに生きる、幸せなボーナスステージにいる。だからどんな困難や苦しみがきても、今は耐えられる。

苦しい本編が終わって、その先にあるまだ見ぬボーナスステージを生きる彼女は、20歳に出会った時よりも穏やかで、幸せそうな目をしていました。

今年で彼女は、ボーナスステージ2周目に入ります。10歳の時に、20歳で死ぬと決めて、今年で彼女は30歳。コロナで会えませんが、幸せな一日を過ごしたことを、そしてこれから何十周と、そのボーナスステージが続くことを、私は願ってやみません。

3. 一度「死んだ」人間にしか見えない世界


「私は今、人生のボーナスステージにいるんだ」

この考え方をはじめて聞いたとき、私は心臓がドクンと音を立てたのを覚えています。

何故ならば、これは一度本編を「クリア」した人間にしか言えない台詞です。人生を一度、本気で諦めて、終わらせてもいいと腹を括った人間にしか、その本当の価値は理解できないくらい、言葉の響きとは裏腹に、ずしりとした重みがある考え方です。

以前私は、「絶望しても、人生というものは簡単に終わってはくれない」と綴ったことがあります。私は、こんなのにいつまで耐えなければならないんだ、と文句ばかり言っていましたが、彼女はある意味、簡単に終わってくれないものと真正面に向き合って、生きてきたのだと思います。
人生はちゃちな悲劇のように簡単には終わってくれないと気づいて、お前が幕を降ろさないなら、私が降ろしてやる、と10歳の時に悟ったのだとしたら、彼女は一体どんな人生を歩んできたのか、私には想像もつきません。

私はもうすぐ30歳を迎えます。これまでの人生、振り返ってみたら、何かに耐えることばかりでした。自分を押し殺した選択ばかりしてきたと思います。だから、一度死んでみるのも、ありなんだな、と彼女の言葉を聞いて、真剣に考えました。

周囲の目を気にして、期待したことに応えようとして、条件をクリアしないと居場所がないと信じ込んで、自分の感情を失い続けたカタカナちゃんが主人公の悲劇(もしくは、喜劇)は、一回、幕を閉じてみよう。そして、新しく始まった「ボーナスステージ」では、与えられた役割も、役名もない、自分の意志と選択で生きる、私になる。

しかし、それには相当の勇気と、腹括りが必要です。これまでの自分を一度全て手放すことに近い行為です。失敗したことや苦しいことはもちろんのこと、成功体験にも、私はもう縋れなくなります。自分が失敗したり、苦しんだことを、過去の自分のせいにすることもできなくなります。

挑戦するにはハードルは高いです。
けれど、そんな風に美しく、潔く、生きてみるのもいい。
彼女の考えを聞いて、思ったと言う、お話でした。



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コメント

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ほしまる
ほしまる

カタカナさん、はじめまして。フォローさせていただいて以来、とても素敵な文章、そして温かみあるイラストに癒されてます。今までもコメントしたいと思うほど共感する投稿、あったのですが特に今回の投稿のボーナスステージ、一度死んだことのある人間という感覚は、カタカナさんと異なる経験でも私にはわかるだけに一言一言噛み締めながら読みました。大切なお友達さんに再会できる日が1日も早く訪れますように。これからも楽しみにしてますね。

ほしまるさん はじめまして、カタカナと申します。コメントいただき、また、私の綴ったものに共感をいただけて、とても光栄です。一度死んだことのある人間というのは、本当に潔い、さっぱりとした水のような気持ち良さをお持ちで、通常なら中々できない決断をためらいなくしたり、未知をさらりと受け入れたり...。本当に、生きているステージが違う、と圧倒されます。同時にそこまで自分を追い込むしかなかった友人が毎日を幸せに過ごしていることが、私が生きる勇気をくれたりします。ほんと、おっしゃる通り、早く会いたいですね。
今後も何か思うことや感じたことなどあればぜひお気軽にコメントして下さいませ。コメント欄でお話しできることも、とても嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。

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企画/編集etcがお仕事。この世界は私にとっては生きづらくて、その中で出会った様々な「伝えたいこと」を「誰か」に伝えたくて、noteをはじめました。あなたがその「誰か」でありますように。生活、日常、仕事、エッセイ中心。大学の専門は哲学。コメント大歓迎。Twitterは神出鬼没。
『私は今、人生のボーナスステージにいる』|カタカナ | 企画・編集・執筆・PRのお仕事
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