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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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5分

※視点変更 九条大作 → 内海達也

絶体絶命

 僕の土人形(つちにんぎょう)は、掃除用具入れの影からグラウンドで繰り広げられている戦いを、ただ見ている。  戦闘能力の無い土人形ではどうすることも出来ないし、もし破壊されてしまったら、これから数日間〝内海達也は行方不明〟という事になってしまいかねない。  ユーリが倒れ、大ちゃん……レッドもピンチだ。  新機能〝メルキオール・マリオネット〟は凄まじい威力だが、相手はダメージを与えてもすぐに回復してしまい、決定打を与えられずにいる。  そして……このまま長期戦になると、ベルトの制御回路が()たないだろう。 「にゃー! たっちゃん、頑張って!」 「先程も言ったが、人違いだ。しかしこのままではマズい。コイツの出番か」  レッドは腕のボタンを押した。  おお! あれはサッカーボ……いや、例の大技だ! 「来い! レッドキャノン!」  だが待てよ? たしか前回あれを使った直後、動力源が煙を吐いて、制御基盤が焼けてしまった。  危険じゃないか? 『レッド、大丈夫か? それは負担が……』 『大丈夫だ、タツヤ少年。制御基盤には若干の改良を加えてある。一発撃つぐらいなら問題ないはずだ』  頭上に現れた武器〝ダイサーク・キャノン〟改め〝レッドキャノン〟を手に取り、構える。 「うおおおおおおお!!! ファイヤー!!!!!!」  勝負は一瞬で決まった。怪しくうねる光が、ゆっくりと敵めがけて飛ぶ、先程まで凄まじいスピードで動き回っていた敵は、なぜか動きを止め、そこに光線が直撃した。 「ローボ!? なぜ避けない!」 「私が引き金を引いた時点で、既に攻撃は命中している。奇妙に飛ぶ光は、ただの残像だ」  そこから一直線上にある、ジャングルジム、ブロック塀、向こう数十軒の家々や車など全てに丸い穴を開け、はるか向こうの山の(ふもと)に、火柱が上がる。  怪しい光は、まだジャングルジムの手前なのに。 「スゴいにゃ……! な、何でたっちゃんが、こんな武器を持ってるんにゃ?」  どうやらユーリは、レッドを僕だと思っているようだ。 「やれやれ。人違いだと何度言ったら分かるんだ?」  腕のボタンをもう一度押すと、レッドキャノンは空中に消えた。  時間が止まった時、大ちゃん人形も止まっていた。ユーリも、まさかレッドが大ちゃんだとは思わないだろうな。 「さあ。残るはお前だけだ! 降伏するなら命までは奪わないが?」  レッドは、片手で持ったブレードを相手に向けて構え、静かな口調で降伏を促す。 「むう。確かにそのガジェット、なかなかの性能だな。だが私が何もせず、ただ見ていたと思うのか?」  そういえば……なぜアイツは、一緒に戦おうとせずに傍観していたんだ? 「普通に戦っても負ける気はせんが、俺は合理主義者なんだ」  敵は、さっきの奴らのように腰の辺りの装置を操作して、ゴリマッチョモードにパワーアップした。 「フフフ。お前の弱点、隠しきれていないな」  速い! さっきまでの奴より明らかに速いぞ! レッドはギリギリでそれを(かわ)している。しかし、敵の動きに違和感があるな。妙にレッドの背中から腰の辺りを狙っているような…… 『こいつ、狙っている!』  ……やはり狙っている? 『レッド、一体何を?』 『動力源だ』  そうか! 光学迷彩で隠している動力源と、そこからベルトに伸びているコードを狙っているのか! 「ハーハッハ、遅い! もらった!」  敵の攻撃で、ベルトと動力源を繋ぐコードが、ブツリと切断された。レッドの動きが極端に鈍くなり、レッドブレードの光が消える。これはかなりヤバイぞ! 「やはり、それが動力だったか。装甲の外部に重要な機関を置くなど、サルはやはり頑張ってもサルだな」 「く……クソ! 俺とした事が、マズったなー!」 「たっちゃん!? 大丈夫にゃ?」  ベルトにエネルギーが行かなければ、大ちゃんは、ごく普通の小学生だ。  レッドの装甲は多分ピストルの弾でも通さないだろうけど、あの敵……ヴォルフには対抗しようがない。 「お前は後で、じっくりと切り刻んでやる。先に、ウォルナミスの戦士を殺して、マーカーを頂こうか」  ヴォルフが、ユーリの方に向き直り、ゆっくりと近づいて行く。  ユーリは立ち上がることも出来ず、そのまま後ずさる。 「にゃあ……来るな! 来ないで! にゃあああ……」 「ユーリ!」  大ちゃんは、よろめきながらもヴォルフに近づき、後ろから、しがみついた。 「行かせない! ユーリ! 逃げろ! 逃げてくれ!」 「たっちゃん! たっちゃん!」  やはりユーリは起き上がれない。超回復が働かないのか、それとも、回復が追いつかないほどの怪我なのか。  役に立たないとは分かっているが、イザとなったら僕も! 『タツヤ、駄目だ。土人形を失うのはマズい』 『でもブルー! このままじゃ……』 「ほほう。なかなか見上げた根性じゃないか。そら、ご褒美だ」  ヴォルフは大ちゃんの腕を捻り上げ、ボディを蹴った。 「あぐう!」  ガラガラと、力なく転がる大ちゃん。胸部から腹部にかけての装甲が砕ける。転がり落ちるブルーの欠片(かけら)。駄目だ、これで通信も出来なくなった。 「たっちゃああああん!! にゃああああ!!」  ヴォルフは、再びユーリの方に歩き始めた。  ユラリと起き上がり、またヴォルフに飛びかかる大ちゃん。 「ユーリ……に……げろ……」 「しぶといヤツだ。やはり先に始末するか」  大ちゃんの頭部を鷲掴(わしづか)みにするヴォルフ。そのまま片手で持ち上げる。ミシミシと赤いラインの入ったヘルメットが軋む。 「うあ! あがあああああ!!!」 「イヤああああ!! にゃああああああ!!!! たっちゃん! たっちゃん!!!」 『くそ、このままじゃ駄目だ! ブルー、僕も行くぞ!』 『いけないタツヤ。残念だが土人形では、彼を助ける方法が無い』  畜生! 一体どうすればいいんだ……!  絶体絶命の挿絵1

初回投稿日時:2019年10月23日 1:02

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2019年10月23日 12時48分

    次回! ユーリ、伝説の戦士に超進化! 逆立つ金髪、纏う金色のオーラ! 「オラはこうなっちまったら前みたいに優しくないにゃ! ミカン貰っても許さないにゃ!」

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    SHO

    2019年10月23日 12時48分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月23日 13時58分

    ぜ……ぜってぇ見てくれよなッ?!  ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル  それはさすがに、ゆるパクどころの騒ぎじゃないですよね?! (゚A゚;)ゴクリ   いつもありがとうございますッ!

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    ガトー

    2019年10月23日 13時58分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2019年10月23日 7時21分

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    つづきたのしみにしてます!!

    hake

    2019年10月23日 7時21分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月23日 7時42分

    ふぉおおおおおおおおおッ!!!  有難うございます!!!! ヾ(*´∀`*)ノ

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    ガトー

    2019年10月23日 7時42分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡100pt 2019年10月23日 12時32分

    ※ 注意!このコメントには
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    くっ!早く続きを書け!

    渡鴉

    2019年10月23日 12時32分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月23日 13時55分

    ああっ! (´;ω;`)ブワッ ありがとうございますッ! 頑張りますッ!!

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    ガトー

    2019年10月23日 13時55分

    カレーうどん

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