戻る

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

59 / 267

6分

姉と妹

「全くの健康体ですね」 「いいえ先生、そんな(はず)ありません。もっと詳しく調べて下さい!」  ……ということで、栗っちの土人形(つちにんぎょう)は、入院して精密検査を受ける事になった。 「ゴメン、たっちゃん。今日は帰ってこれないね」  地下の練習場に栗っちがいる。咄嗟(とっさ)にフォロー出来るように、〝精神感応〟を使って僕の思考を読み、土人形とお母さんの会話を、間接的に聞いてもらっているのだ。 「検査入院かー! やっぱりそうなるよな」 『大丈夫だタツヤ。絶対にバレはしないよ』 「いや、検査ではバレないだろうけどさ。僕のモノマネがどこまで通じるかが問題だろ」  栗っちのお母さんに心配を掛けないように、なるべく普段通りに振舞おうとはしているが、やはり少し違和感があるようだ。 「えー、次は心電図とエコー検査ですので、こちらの部屋に……」 「えへへー。〝エコー検査〟って、カラオケなのかな?」 「……和也、ふざけているの?」  くぅっ! 今のはダメだったか、言いそうなのに! 『タツヤ……カズヤの事、馬鹿にしてはいないか?』  ブルーにまで突っ込まれた。  そんなにおかしかったか? 大体いつもあんな感じだろう?! 「たっちゃん……僕、さすがにエコー検査は知ってるよ……?」  ああっ……ごめんなさい。悲しそうな目で見ないで。 「えー、これで今日の検査は終了です。明日はレントゲン撮影がありますので、9時以降は何も食べないで下さいね」  食事は、消化に良いものなら何でも良いということで、食堂で済ませる事になった。 「うどんで良いわね?」 「うん。うどん美味しいよねー!」 「……和也、ふざけているの?」  これは普通だろう! 何がいけなかった?! 『タツヤ……今のはマズかったな』  何がさ?! 何が地雷なのか教えてくれブルー! 「たっちゃん……あんまりだよ……」  どの部分が?! なんで涙ぐんでるの?! 「おいおい、何か盛り上がってるな! 差し入れ持ってきたぜー!」  そこへ、大ちゃんが現れた。スーパーのビニール袋と、電気ケトルを持っている。すぐにお湯が沸くヤツだ。 「シャワールームがある位だから熱湯も出るかもと思ったけど、念の為になー」  さすが大ちゃん、すごく気が利く。 「カップうどんで良かったか? 親父が好きなんで、いつも箱買いなんだ」 「えへへー! ありがとう! うどん美味しいよねー!」 「ほら! 言った! 今言った! さっきのと何が違うの?!」 『タツヤ……カズヤの身にもなって欲しい』 「ブルーさん、たっちゃんは悪くないよ。僕は大丈夫だから」  だあああ!! わざとだ! 僕で遊んでいるな?!  ほら、ブルーからは、なんとなく押し殺したようなクスクス笑いが聞こえてくるし! 栗っちも腹を抱えて小刻みに震えながらうずくまってるし!  ……あれ? でも、そうすると栗っちのお母さんは何に反応してるんだ? 「お前ら、本当に仲いいよなー! ……で、どんな状況?」  検査入院になってしまった事を伝えると、大ちゃんは、やっぱりな。という顔をした。 「それにしても、今日はオムライスの日だった筈だけど、うどんの日になっちゃったな」 「うん? たっちゃんは自分ちで食べるだろー? 一応、カップうどんは多めに持ってきたけどなー」  そうか。僕は今、自分の人形が操作できないから、家で食べなきゃな。  という事は、そろそろ自宅に戻っておかないとマズイ。  >>> 「……お母さん、ちょっと電話してくるわね。先に食べてなさい」  栗っち人形視点。あまりに心配過ぎて、自宅への連絡を忘れていたのだろう。栗っちお母さんが、席を立った。  いやあ、しかし、栗っちの家族にも、余計な心配を掛けて申し訳ないなあ。   「あれれ? 栗っち? どうしたのん?」  栗っち人形が、うどんをすすり始めた時、不意に声を掛けられた。ユーリだ。なんで病院の食堂に居るんだ?  ……とにかく、栗っちのフリして対応しなきゃ。 「えへへ。急に検査で入院することになっちゃって。ユーリちゃんこそ、どうしたの?」 「やー、実は姉ちゃんが怪我(けが)してさー。今日は付き添いなんだ」  そういえば、そんな事言ってたな。いや、あれは栗っちの〝精神感応〟で聞いたんだっけ。 「お姉さん、大丈夫?」 「それがさー、結構重症でね。三日前まで、ICU(アイシーユー)っていうの? 入っちゃっててさー」  ICU……集中治療室か。かなりの怪我だったんだな。 「まあ、なんとか普通の病室に移れたから、もう大丈夫だと思うんだけどね。ほら、ウチ、とーちゃんもかーちゃんも忙しくってさー」  ユーリの家が忙しいというのは聞いていた。お姉さんも大怪我をして、すごく大変だと思う。だが、それより気になるのは…… 「ユーリちゃん、大変な事に巻き込まれてない? お姉さんの怪我って何が原因なの?」 「やー、前にも言ったけど、大丈夫だよ! 心配してくれてありがとう」  やはり、何も教えてくれない。いっそ、僕たちの秘密をバラしてしまう方が良いのかも…… 「あら、ユーリちゃんじゃない。お久しぶりね!」  電話を掛けに行っていた、栗っちのお母さんが戻ってきた。 「あ、こんにちは!」  ユーリが栗っちのお母さんと話し始めてしまった。  ……これ以上は突っ込めないか。 「じゃあ、栗っちもお大事にねー!」 「うん、またねー!」  >>>  再び視点が変わり、地下室。  ユーリは、お姉さんの居る病室に戻っていった。こんな時、栗っち本人なら〝精神感応〟で色々と聞き出せるんだろうけどな。 「まあ、仕方ないか。ちょっと、晩御飯食べてくるよ」 「俺も戻るぜー! あー、もしかしたら深夜に来るかも」 「えへへ、行ってらっしゃい! 僕も部屋で、うどん頂くね」  3人揃って練習場から出ようとした時、栗っちが止まった。ニコニコしたまま固まっている。これは…… 「たっちゃん、これってまさか!」 「ブルー! もしかして!?」 『そうだね。時券(チケット)が1つ、消費された。〝時神(クロノス)休日(きゅうじつ)〟だ』 「マジか!? たっちゃん、土人形は大丈夫か?」 「大丈夫。全然問題なく動くよ」  >>>  病院の、栗っち人形視点。  食堂から、病室に向かう廊下だ。  周囲のすべての物は動きを止め、もちろん栗っちのお母さんも固まってしまっている。 『タツヤ、キミと土人形は繋がっている。時券(チケット)は離れていても有効だ』  なるほど。土人形は、時間を止められても自由に動けるのか。  でも、待てよ? ということは〝壊されても元に戻らない〟という事だな。気をつけよう。 「……ね、簡単でしょ? ガジェットを使えば、あなたも〝戦場(ボード)〟を作れる」  声だ……すぐ目の前の病室から話し声が聞こえる。  ……ってちょっと待った! 停止した時間の中、動いている者がいるのか?!   病室の名札には〝大波愛里(おおなみあいり)〟と書かれている。もしかしてユーリのお姉さんの病室?  僕は聞き耳を立てた。 「作った〝戦場(ボード)〟は、どれだけ破壊しても元に戻るから安心して戦えるわ。で、こうしてガジェットに触れている者は、自由に動ける。だから、戦士は必ずガジェットを身に着けて戦うの」  破壊しても元に戻る? もしかして、時神(クロノス)休日(きゅうじつ)の事か? 「予約の日、敵はマーカーを目指してやって来る。戦士は最大5対5と決まっているわ。でも、もう戦えるのはあなた1人。あなただけで5人に勝たないと……」 「やー! 大丈夫だよ姉ちゃん! 私、こう見えて、ちょー強いんだから!」 「そうね、あなたは〝ウォルナミス〟の血が凄く濃く出ている子だから」  ウォル……何だって? 「でも、できれば、あなたがもっと大きくなるまでは、私が戦いたかった。友里、あなたは、まだ(おさ)なすぎる」 「ううん、お姉ちゃんは充分過ぎるぐらい戦ってくれたよ。後は任せて!」 「友里……」  やはり、ユーリは何かと戦うんだな。止まった時の中で。 「さあ友里、もう一度説明するわね」 姉と妹の挿絵1

初回投稿日時:2019年10月3日 0:15

0

この作品が面白かったら「いいね」を押してね!

会員登録をして、さらに応援スタンプ・コメントで作品を応援しよう!

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


  • ふるいちぶっかけうどん

    かみや

    ♡2,000pt 〇100pt 2021年6月2日 1時41分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    「キマシ…」ステラ

    かみや

    2021年6月2日 1時41分

    ふるいちぶっかけうどん
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年6月2日 1時45分

    タワ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 超絶で貴重なるポイントを有難うございます! スタンプ購入でタワー! とも思いましたが、やはりここは活字でッ!! ヾ(*´∀`*)ノ

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2021年6月2日 1時45分

    カレーうどん
  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2019年10月3日 3時43分

    さて、ここから話を聞かない系無自覚暴走娘の本格参入、そしてあの日本最大のアレが出来上がった原因などなど、SF小説になるんですよね?

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    SHO

    2019年10月3日 3時43分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月3日 4時27分

    ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。いつもありがたやあああッ! ←寝てない故の変なテンション  やはりSFですよねぇ……ジャンルエラー待ったナシ! 。・゚・(ノ∀`)・゚・。

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2019年10月3日 4時27分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2019年10月3日 1時32分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    つづきたのしみにしてます!!

    hake

    2019年10月3日 1時32分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月3日 1時48分

    ああっ!!! ネコさんッ!!! (人´∀`).☆.。.:*・゚ いつも有難うございます~!!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2019年10月3日 1時48分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡100pt 2019年10月3日 12時25分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    これは興味深い

    渡鴉

    2019年10月3日 12時25分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月3日 12時58分

    いつも有難うございます〜! (≧∇≦)嬉しいです!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2019年10月3日 12時58分

    カレーうどん
  • 復讐乙女 ネメシス(デンドロ)

    東風雲雀

    2019年10月3日 21時39分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    にゃかにゃか良い

    東風雲雀

    2019年10月3日 21時39分

    復讐乙女 ネメシス(デンドロ)
  • カレーうどん

    ガトー

    2019年10月4日 0時23分

    あああっ! いつも有難うございますッ! (;゚∀゚)=3ムッハー

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2019年10月4日 0時23分

    カレーうどん

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る
  • 癖者共のコンキスタドール

    よろしくお願いいたします

    3

    600

    0


    2026年1月19日更新

    傭兵上りの兵士だったが女王暗殺未遂の容疑をかけられた男、ガリヨンは流刑に処されてしまう……。 流刑として降り立ったその地は領主からの搾取。開拓に伴う食糧難、駐在兵の横暴にならず者共の襲撃で疲弊する村人たちが溢れた半島であった。 魔法やスキルなんて存在しない。 特殊なチートなんて存在しない。 そんな中世のとある世界のとある王国でガリヨンと共に一癖も二癖もある奴らが集う中、繰り広げられる癖者共のコンキスタドールが今、始まる。

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:1時間4分

    この作品を読む

  • VRライフ

    初めて出す物なので温かい目で見てください

    7

    20.4K

    103


    2026年1月19日更新

    あまりゲームを触ることがなかった鈴音真(すずねまこと)がVRゲーム界で知らぬ者はいない有名なJIN社が新しく造ったYour Dreams(君たちの夢)をのんびりと遊ぶ物語

    読了目安時間:15時間58分

    この作品を読む

  • ワルキューレ・シンギュラリティ

    魔女を失った大国は、魔女擬きを生み出した

    188

    223.1K

    485


    2026年1月19日更新

    ※現在ほぼ週刊更新、たまに週刊数話更新です 我々のいる世界と似て非なるこの世界は、魔法が科学として認知されている世界である。 魔法はエーテルと呼ばれるエネルギー体を触媒として、超常現象をプログラム的に再現する術式であった。 しかし、そんな世界に御伽噺から出てきた様な「生粋の魔女」が現れる。 彼女は術式を用いず呼吸をするかの様に魔法を繰り出し、人々は彼女の魔法は魔法ではなく「神通力」と称した。 彼女への畏敬を御旗とし、小国に過ぎなかったアースガルズはたった20年で、数多の国を同盟国として従える連合大国へと成長した。 だが覇権も長くは続かず、魔女は25歳になった時に仮死状態となり目覚めなくなった。 国力と軍事力の低下を恐れたアースガルズは、魔女が活動していた間に得た数多の情報や知識を元に、魔女の模造品を生み出す事を決意する。 生み出されたのは、人命保護と脅威からの防衛を最優先とする「護りのウルズ」、破壊を伴う殲滅をもってして脅威を排除する「破壊のヴェルサンディ」、彼女らは「ワルキューレ」と呼ばれた。 軍部はこの二人を数多の任務に関与させる事で競わせ、最も優秀な方を魔女の後継者として量産化する事を決めた。

    • 性的表現あり

    読了目安時間:12時間10分

    この作品を読む

  • 2022年初春、子々孫々まで祟ろうとした相手が子孫を残しそうにない弱々だった怨霊!困ったのでそいつに子孫を残させようと料理を作ったり掃除洗濯したりして奮闘! 子々孫々まで祟られてる男は、世話してもらって少しずつ体が治って人生が上向きになって、怨霊がかけがえのない存在になる! 除霊師とか術をかける人とかも2人に絡んでくる! 悪い霊が怨霊の力を奪おうとしてきたりする! 果たして2人は平穏に暮らせるのか、男は子孫を残せるのか!?だいたいそんな話

    • 性的表現あり

    読了目安時間:48時間26分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る