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〈蹂躙された政治や選挙 奪われた命は戻らない〉雨宮処凛

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2026年1月6日6:40PM

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員。

 11月9日、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が逮捕された。

 元兵庫県議の竹内英明氏が命を落として10カ月。元県議の妻の刑事告訴が受理されてから半年。やっとやっと、立花氏がデマで人々を煽動するようなことが終わるのだ。ほっとしつつも、「遅すぎた」という言葉も浮かんだ。

 今年4月には、立花氏に住所を晒された男性が自死。また、「みんなでつくる党」の大津綾香さんに対し、長年にわたって執拗な嫌がらせが行なわれていた。ほかにも多くの人が誹謗中傷やデマによって苦しめられてきた。

 そんな立花氏と私は会ったことはないが、今年、あるネット番組で一緒になりそうになった。数人いるゲストに私も立花氏も含まれていたのだ。出演依頼を受けた時は立花氏の名前はなかったものの、その後急遽決まったということだった。結局、立花氏出演の話は流れたものの、正式に立花氏の出演が決まったら断ろうかとも考えていた。

 竹内氏を追い詰めただけでなく、死後も冒瀆を繰り返すような人と同席したくないというのが一点。もう一つは、ただただ「怖い」というものだった。

 これまで、多くの政治家と討論番組で一緒になってきた。が、一度も「怖い」などとは思わなかった。最低限のルールに則って討論が行なわれるという信頼感があったからである。

 しかし、立花氏にはその「最低限のルール」が通用しない。常に場をハックし、攪乱するというやり方だ。そして下手に立花氏に「発見」されてターゲットとされてしまったら。仕事も生活もすべて破壊され、家族も晒し者にされ、命を奪われることになるかもしれない──。そう本気で思った。

 そこまで思って、とんでもない時代になったものだと愕然とした。10年前、そんな人物はこの国に、いやそもそも世界に存在しなかった。

 しかし、SNSとそれが生み出す数字やお金によって、「手段を選ばない」人が注目され、実際に力を得るようになっていった。

 本人は逮捕となったが、彼をあそこまで増長させてしまった人々にも大きな責任がある。思えば「NHKから国民を守る党」が登場した10年ほど前、私の周りのサブカル好きな人たちは揃いも揃って立花氏を面白がっていた。

 党立ち上げから12年、あまりにも多くの人が傷つき、政治や選挙は蹂躙された。その罪を償っても、奪われた命は決して戻らない。

(『週刊金曜日』2025年11月28日号)

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