この金型屋さんには悪いけど…もしこの人が。ポストで語ってる認識しか持っていないのならズレてます。そんな事は無いと思うけど。
だけどこの文章をそのまま受けとってしまうと多くの人が認識を間違える。それがこの長文を書こうと思った理由です。
ここで書くのは阪神大震災のど真ん中で被災して。新築した自社工場が壊滅し。生き残る為にやむなく中国製造へと舵を切り。最短時間で強制的に移行した経験を通して得た知識です。
多くの日本企業が。日本での金型製造を諦めて。中国製造に移行した理由には大きく分けて2つある。
この人が言うように。中国が安かったからだけじゃない。今回はそれを書く。
◉素材の移行(鉄からアルミ)
過去とは違い。現代の技術革新は指数関数的な爆速になってきた。その結果。商品のライフサイクルが猛烈に短くなってるの。
新商品の設計から製品化までの時間をどれだけ短縮するか。どれだけ他社を出し抜くか。これが過酷な競争の勝敗を左右してしまう最大要因になったわけ。
誰よりも早く新技術を採用した新商品を製造し。誰よりも早くそれを市場に投入したメーカーだけが勝てる時代。二番手は死を意味する。
たとえ大手でも。新商品投入で2番手になっちまうと儲からないどころか在庫の山を抱える時代。そんな時代に突入したんだわ。
更に重要なのは。それが速度だけを意味しないって事。
個々の商品の製造ロッドを「どれだけ少なくできるか」も実は勝負の分かれ目になってきたんです。
最も美しいのは初期ロッドだけで終わらせること。
新商品が市場で陳腐化する前に更なる新商品を投入する。それを続けないと生き残れない時代。矢継ぎ早のアップデートが重要視される時代がやって来た。
だって他社に魅力的な新商品を投入されると。それまでの価格がアッという間に暴落してしまう。在庫を投げ売りするしか無くなるの。
それは最終消費者の皆さんなら理解してるでしょ?
こうなると…鉄(鋼)の金型はマイナス要因しか残らない。つまり時代遅れの金型になったわけ。
鉄(鋼)は非常に硬い。それで造った金型は数十万回〜数百万回のショットに耐えられる。つまり「長期大量生産」に向いていた金型です。
だけど猛烈に硬い素材を0.001mm単位で調整するには工作機械だけじゃ絶対に無理なのよ。超絶熟練した職人の神技が必要なんですね。
そんな職人を事前に確保できないと精度の高い鉄(鋼)金型って製造できない代物。だから図面を渡してから完成までの時間もエゲツなく長いのよ。
だから日本全国の金型屋さんは。大量生産時代(製品のライフサイクルが長い時代)に急激に増えたわけ。
熟練職人ともなると順番待ちの超売れっ子で年収もバカ高い。大企業部長並みの猛者がゴロゴロいた時代。
だけどね?時代は移るもの。熟練技術者の確保が必要で。完成までの時間も非常に長く。コストの高い鉄(鋼)の金型は…今では完全に時代遅れな代物に突入してる。
製品のライフサイクルが極端に短くなってくると。マイナス要因ばかりが目立つようになってしまったわけなのよ。
それに対してアルミは柔らかい。削りやすい。金型としての寿命・耐久性は落ちるけど。それ以外のメリットが半端ない。
柔らかいから職人が必要ない。工作機械だけで(必要十分な)精密加工が可能になるわけです。
俺も中国で。初めてアルミ金型を作った時は腰を抜かした。なんしか完成までの速度が早い。鉄(鋼)と比較したらアッちゅうま。
完成度も最初から非常に高い。鉄(鋼)の時には必ず必要だった職人による(場合によっては)数回に渡る微調整がほとんど不要。
これはCAD/CAMと工作機械による技能のデジタル化が進んだ結果でもあるんだけれど。なんしか図面通り寸分たがわずできてくる。
それだけじゃない。アルミは熱伝導率が良いので冷却時間まで短縮できちゃうの。結果的に生産効率が大幅に上がるのよ。
◉日本の金型屋がアルミを拒否した
まぁ…気持ちはわかるけど。日本の金型屋さんは非常に頑固でさ…その殆どがず〜っと伝統的な鉄(鋼)の金型に固執し続けたの。アルミ金型を嫌ったんだよね。
作って欲しいとお願いしても「何を言ってんだ!舐めんじゃね〜よ!アルミだったら他をあたれ!」みたいな門前払いをする金型屋さんも多かった。
そんな事もあって。日本での金型製造を諦めて中国で作るようになった会社は多い。
◉部品構造が変化した
素材が変化したこと以外に実はもうひとつ。部品の設計概念(思想)が過去とは大きく変化したこと。
以前はアナログ思考で部品が作られてたの。部品同士を微調整しながら組み立てる「すり合わせ」型だったわけ。
でも今は個々の部品をパズルのように組み合わせる「モジュラー」型が増えたのね。
日本が得意としてきた「超精密な微調整」の価値が下がっちまった理由にはこれもある。
Quote
株式会社松野金型製作所
@MatsunoMold
たくさんの反響ありがとうございます。
続編です。
「なんで日本の金型屋は価格で勝てないの?」
よく聞かれます。
答えはシンプル。
中国:国が土地をくれる。電気代が安い。人件費は1/5以下。
日本:全部自腹。
同じ土俵で戦えるわけがない。
でも、本当の問題はそこじゃない。 x.com/matsunomold/st…
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