ほぼ漫画業界コラム278
【最近の漫画編集者志望が、驚くほど漫画を読んでいない話】
漫画編集者を育成していて、正直かなり戸惑うことがある。それは――本当に皆漫画を読んでいないということだ。
「え? なんで漫画編集者志望したの?」
と何度突っ込んだか分からない。というか心の中ではブチ切れている。
もちろん新人漫画家さんにも漫画は読んでいてほしい。
でも編集者は、それ以上に読んでいなきゃダメだろ、と。
ただ、土日に冷静になって考えた。僕はこの時代になっても漫画編集者になんてわざわざなりたいやつは漫画を当然沢山読んでいると思っていた。最近の僕らの会社の門を叩くのは皆高学歴で、スペックもコミュ力も高い。だが、教えていると信じられないぐらい漫画を読んでいない。何かの間違いなのではないかと動揺した。
だが、間違っていたのはどうやら僕の方かも知れない。
僕らの世代にとって漫画を多読してしていることは、別に特別ではなくごく普通の事だった。普通。
実家の本棚、友達の家、床屋、病院、親戚の家、喫茶店。
そして何より、コンビニの立ち読み。
好き嫌い以前に、
漫画が勝手に目に入ってくる環境があった。
でも今は違う。
•家に本棚がない
•紙の漫画を置かない
•サブスクは興味のある作品しか出てこない
•アルゴリズムが世界を狭める
結果、漫画は
「選んで読むコンテンツ」になった。
そして、最近の漫画編集者像がちゃっとおしゃれになってきた。そのせいか最近の編集者志望の動機は、こんな感じだ。
•エンタメ業界で働きたい
•IPに関わりたい
•クリエイターを支えたい
•なんとなく面白そう
悪くない。全然悪くない。
でもそこに
「漫画が人生だった」
「漫画以外、正直どうでもいい」
みたいな狂気が、あまりない。
編集者は
企画職でもあり、判断職でもあり、伴走者でもある。
•読書量=引き出し
•比較した数=判断力
•文脈理解=未来予測
漫画を読んでいない編集者は、
音楽を聴かない音楽プロデューサーみたいなものだ。
仕事としては成立しない。
娯楽の覇権が、完全に分散したのだ。
昔は娯楽が少なかった。
漫画、テレビ、ゲーム。
だから漫画が“覇権”だった。
今は違う。
YouTube、TikTok、Netflix、アニメ(倍速)、
ゲーム実況、VTuber、配信文化。
若い世代にとって漫画は
数ある選択肢の一つでしかない。
しかも、時間効率が悪い娯楽になっている。
結果、
編集者志望ですら
「漫画<動画」になっているケースは珍しくない。
そして今は読まなくても“知った気になれる”時代
これもかなり厄介だ。
•SNSで名シーンだけ流れてくる
•要約や考察動画が山ほどある
•アニメで履修した気になる
•バズコマだけ知っている
読んでいないのに、
「知っている感覚」だけは手に入ってしまう。いや、悪意を込めれば読んでいないのに読んでいるふりすら出来るだろう。
もちろん、多くは悪気はない。
だからこそ、読書量不足の自覚が生まれにくい。
これはかなり危険だと思っている。
はっきり言おう。漫画編集者に必要なものは漫画の多読だ。
編集者はセンス職じゃない。
読書量職だ。
というよりセンスは莫大なインプットでしか身につかない。
読んでいない人は、
まだ編集者の入り口にも立てない。
企画会議で、
•「これ、過去10年で何に近い?」
•「類似失敗例、3つ言える?」
•「このヒロイン像、どの系譜?」
こういう問いに、
読んでいない人は参加できない。
読書量が、そのまま発言権になる環境を作る。読書量が少ないやつは企画会議でダンマリするしかない。そんなの嫌じゃないの?
だからもっと読もうよ漫画。
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