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Conversation

「人事を数学する」の③です。 今回はエージェンシーモデルについて語ってみます。人事なら一度は名前を聞いたことがある人も多いと思います。 エージェンシーモデルとは「エージェントと呼ばれる経済主体が、プリンシパルと呼ばれるもう一つの経済主体から報酬を受けることを約束して、プリンシパルのために『不確実な環境の中で行動を取る』という状況を分析するためのモデル」です。 「経済主体」というやや固い表現ですが、エージェントもプリンシパルも、利益の最大化を目指していることを「経済主体」と呼んでいるだけなので、個人でも会社でも想定してもらえれば良いです。 また同じく、「利益」はお金でも称賛などの精神的利益でも想定してもらえば良いです。 このようなプリンシパルとエージェントの関係を「エージェンシー関係」と呼び、多くの契約の中で見られます。 例えば、P社がA店に、ある商品の販売を委託する場合を考えてみると、P社の売上は不確実性があるもののA店の努力で伸びていくものです。 その際にP社がA店に対して、商品の売上高に関係なく一定の手数料しか支払わないとすれば、A店は販売努力を怠り、P社の売上が上がらない恐れを生みます。 したがって、A店の販売努力を喚起するためには、売上と手数料を比例させることが必要です。 また、P社がA店に特別な販売を請け負ってもらう場合を考えてみると、P社はその仕事のために一定額の報酬をA店に支払います。 そうするとA点は最小コストや効率的なコストでその仕事を完成させようとします。 しかし、この時のコストは不確実性があるものです。 そのためA店はその不確実性を見越して、報酬を高めに設定してP社に要求することになります。 それを避けるために、P社がA店に一定の利益を保証する形、つまり実際に掛かったコストに一定の利益を上乗せして報酬とする「コストプラス契約」という方法を取るとします。 しかし、コストプラス契約を行うと、今度はA店のコスト削減意欲が低下し、P社は余分なコストを負担することになります。 したがって、P社は、A店のコスト削減努力を喚起しながら、なおかつ報酬額を引き下げる方法を工夫する必要があります。 この2つの例の他にも、保険者と被保険者や、上司部下の関係なども、エージェンシー関係の例とみなすことができます。 エージェンシー関係はかなり普遍的で基本的なものであり、色々なことに応用が効きます。 ではエージェンシー関係の肝となる、「エージェントが不確実な環境の中で行動を取る」について数学で見てみます(かっこ書きは理解のための例です)。 エージェントAが実行できる行動をdとし、その集合をDとします(売り子がアイスクリームを客に勧める方法で販売活動するとします)。 Aが行動dを取ると、ある結果が生じますが、常に同じとは限りません(しかし客にアイスクリームを勧めても毎回売れるとは限りません)。 それはAの行動以外に結果に影響を及ぼす要素があるからです。それを環境と呼び、環境が取る個々の値、つまり環境の状態をθと呼び、その空間をΘとします(何故なら、暑い日も寒い日もあり、夏か冬も重要で、朝か昼か夜かにも影響され、客の好みの味を切らしているかもしれないからです)。 すると、Aの行動dと、環境の状態のθ、からある特定の結果が生まれることになります(売れる、売れない=売上が上がる、上がらないという結果が生まれます)。 考えられる可能な結果の空間をXとすると、Aの行動、環境の状態及び、結果の間の関係は関数 ρ:D×Θ→Xによって、𝒙=𝝆(𝒅,𝜽)と表すことができます。 前述の委託販売の例ではP社に帰属する売上が𝒙に相当し、請負の例ではA店が負担するコストが𝒙になります。 エージェンシー関係を考える上では、何を結果𝒙としてモデル化するかが非常に重要と言えます。 #エージェンシーモデル
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