「能登は見捨てられた」説に現地から猛反論…じつは被災地で進行していた「現代の魔女狩り」という「人災」

【能登半島地震・緊急アンケート結果報告】

2026年の元日を迎え、能登半島地震から2年という時が経った。被災地では少しずつ、しかし確実に復旧への歩みが進められている。だが、その歩みを阻害し、現地の人々の心をへし折る「もう一つの災害」が、今なお進行している課題がある。

それは、災害や感染症流行などの危機時に、真偽不明の情報やデマが急速に拡散され、社会的混乱を引き起こす現象である「情報災害(インフォデミック)」と呼ばれているものだ。日本では、大災害となった東日本大震災以降に顕在化しつつある。被災地に対して無責任な言説が現地を混乱させる現象などが、特にソーシャルメディアの普及に伴って問題が拡大している状況にある。能登半島地震でも、SNS上での心無い投稿が目立ち、それは、今年の正月3が日にも再発し、多くの地域の方々の落胆があったように感じた。

前回のコラム「能登は見捨てられた」説に現地から猛反論…被災地で起きている「劇的な変化」と、あえて「復旧しない場所」がある納得の理由で、SNSや一部メディアによる「能登は見捨てられた」論の実態について、現地調査をもとにコラムで紹介した。その実態は、実際の復旧復興状態などを無視して行われているものが多かったように感じられ、①理由があって解体が進んでいない建物や、②優先度の低い未復旧の地点をあげつらっているケース、③政治・政権批判とセットになっているケースなどが目立つように感じられたが、これは筆者一人の所感や見聞した範囲によるものに過ぎない。

そこで、SNS(X・旧Twitter)を中心とした情報災害に関する緊急アンケートを実施し、被災された方やSNSを活用する方々に、情報災害の実態について多くの方からの声を募ってみた。その結果、実際に被災地(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市など)に住む、あるいは実家を持つ方を中心に、能登地方と石川県内、県外の約130名から回答があった。

この中には地域で代々暮らしている方、自治体職員の方、復興関係の事業の方など、さまざまな方が含まれていた。頂いた回答に綴られていたのは、ネット上の「正義」が被災者に牙を剥いて苦しめるという、現代SNS社会に、またメディアの姿勢が問われる実態であった。

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「デマを見た」97%の衝撃

まず、数字が示す事実はあまりにも重い。能登半島地震後に「明らかに誤った情報(デマ・虚偽情報)」を見かけたと回答したのは、アンケート回答者の97%以上に及んでいた。「頻繁に見かけた(数回以上)」と答えた人も84.6%にのぼっていた。

具体的にどのようなデマが彼らを苦しめたのか。自由記述欄には、怒りと諦めが入り混じった報告が溢れている。実際に回答があった回答として、アンケートの自由記述を太字で示す。(回答者の居住地として、個人の特定を避けるため石川県能登地方、富山県氷見市居住の方からの回答を「能登地方」、能登地方以外の石川県内を「石川県」と記載し、性別と年代を示す。)

「発災直後、『自販機が破壊され盗まれた』という拡散があった。実際は緊急避難的に飲み物を確保した行為だったのに、犯罪が起きたかのように報道が出たことで被災者の間に不安が広がった。訂正報道は地元紙のみであった。もっともストレスの高い誤情報は陰謀論であり、避難児童や学生が誘拐されたなどという荒唐無稽なSNSの投稿には呆れる。」(石川県・40代女性)

「発災直後は偽の救助要請であふれ、収拾がつかない状態になっていた。全体で言えば対策済みなのに「何もされていない」とする誤情報が多く、災害対応に追われる(地元市町役場の担当)部署へのカスハラクレームに繋がっている、観光による支援が停滞するなどの妨げも感じた。」(能登地方・40代女性)

「誤情報により特定の地域の印象が悪くなり、実際にボランティアを辞めた投稿を見た。また、デマとまでいかなくとも、一部を切り取り政治的主張に能登を利用するのが本当に不愉快であった。」(石川県・実家の実家の能登町地方帰省中に被災・30代女性)

「発災直後は、初動の遅れ、渋滞はないといったデマ情報が頻出し、被災者を傷付けた。未だに、能登が見捨てられている、という発信が観光事業者はじめ地域経済の足枷になっています。」(能登地方・50代女性)

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