【カマキリ】
『カマキリってすごいよな〜』
「どうしたんだよ急に」
『この前電車乗ってたら隣におじさんが座ってきたんだけど、よく見たらおじさんの肩にカマキリがとまってたんだよ』
「あー、たまにいるよね。なんか虫ついてる人。そういうときって急にこっち飛んでこないかドキドキするんだよね」
『そうなんだよ。向かいに座ってた女の子も驚いた顔してたよ。それでおれも注意して見てたんだけど、案の定そのカマキリが突然おれのほう飛んできてさ』
「うわぁマジか」
『おれの肩にとまってたカマキリと喧嘩し始めちゃったんだよね』
「お前も肩にカマキリ乗せてんのかよ」
「じゃあたぶん女の子が驚いてたのって肩にカマキリ乗せたおっさんのペアがレアだったからだよ」
『カマキリって本当にすごいよな〜。ただでさえ運賃払わないで電車に乗ってるのに、そのうえ平気で人の肩の上で乱闘騒ぎ起こせるんだもんな〜』
「すごいってそういう意味?虫相手に人と同格の怒りを向けるなよ」
『いやもちろん、純粋にすごいと思ってるよ。カマキリって虫の中じゃ食物連鎖のピラミッドの上のほうだし』
『"もしも虫が人間と同じ大きさだったら"みたいな想像の話あるけど、カマキリが人間サイズになったらかなり強くておっかないと思うよ。おれが両手に鎌持ってもああはいかないね』
「お前が両手に鎌持ってても普通に怖いと思うよ。怖さの種類は違うけど」
「あ、でもお前とカマキリにも似てるところあるぞ」
『似てる?どんなとこが?』
「ほら、お前って恐妻家で奥さんに頭あがらないだろ?カマキリもオスよりメスのほうが体が大きくて強いんだよ」
『へー、そうなんだ。ははは、言われてみればたしかにおれと似てるかもな』
『おれがカマキリの真似したって思ってる・・・?』
「思ってねえよ。どんな自意識で生きてんだ」
「ってあれ、もうこんな時間か。お前そろそろ帰らないとまずいんじゃないか?」
『やばいほんとだ。早く帰らないとまた女房に叱られちゃうよ』
「そういえばまた小遣い減らされたんだっけ?
ここはおれが出すよ」
『マジ?すごく助かるよ』
『ゴチになりマンティス』


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