能登半島地震の被災者が「能登ウヨ」と罵倒されている…じつは現地で進行している「情報災害」とメディアが報じない「深刻な被害」

2026年の元日を迎え、能登半島地震から2年という時が経った。被災地では少しずつ、しかし確実に復旧への歩みが進められている。だが、その歩みを阻害し、現地の人々の心をへし折る「もう一つの災害」が、今なお進行している課題がある。

それは、災害や感染症流行などの危機時に、真偽不明の情報やデマが急速に拡散され、社会的混乱を引き起こす現象である「情報災害(インフォデミック)」と呼ばれているものだ。日本では、大災害となった東日本大震災以降に顕在化しつつある。被災地に対して無責任な言説が現地を混乱させる現象などが、特にソーシャルメディアの普及に伴って問題が拡大している状況にある。能登半島地震でも、SNS上での心無い投稿が目立ったように感じた。

前編記事<「能登は見捨てられた」説に現地から猛反論…じつは被災地で進行していた「現代の魔女狩り」という「人災」>より続きます。

実際に寄せられた当事者への罵詈雑言の数々

「能登ウヨ」。これは「ネット右翼」から転じた「ネトウヨ」という侮蔑語からの派生とみられる。ただし、この語は政治的な保守思想の方に限らず、誤情報を否定しているだけの方々を嘲りたいスタンスから、恣意的に作られた、地域名を冠した侮蔑語である。

さらに、一部の記者が、取材対象一事例の声のみを拾い上げた取材をもとにこの言葉を含む記事を書いたことへの批判も、アンケートには複数(9件)寄せられた。

「全国紙がある特定の主張を繰り返す「自称」被災者の主張だけを取り上げ、能登の名を冠した罵倒語を記事にした際には、はらわたが煮え繰り返る思いでした。」(石川県・能登地方で被災・30代男性)

「新聞記事は、加害者が被害者になりすましているのに全く逆の報道をされ、それを信じた人達から「能登ウヨ」のレッテル貼りをされた。」(能登地方・30代男性)

被災者が、自らの体験に基づいて「助かった」「ありがとう」と言うことすら許されない。政権批判のナラティブ(物語)に沿わない発言をする被災者は、「洗脳された者」として叩いてよい――。そんな空気が、ごく一部であると思われるがSNSや報道に蔓延っていた。これは現代の魔女狩り以外の何物でもない。

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アンケートで、外部からの「能登は見捨てられた」「何もしていない」といった政治的批判に対し、地元の状況(事実)をSNSなどで発信したことがあるか?という問いに対し、頻繁にある(数回以上) 41.0%。ある(数回未満):24.6%と、約3分の2がアクションを起こしていた。

さらに、「発信した」と答えた人のうち、その結果として見知らぬ人から攻撃を受けた経験がある人は、頻繁にある(数回以上):32.0%、ある(数回未満):24.0%の合計54.0%と半数以上に及んでいた。

自由記述形式で投げつけられた誹謗中傷の傾向を見ると、最多が政治的なレッテル貼りであった。中でも「能登ウヨ」は27件と大多数を占めた。

「能登に関するデマを訂正、指摘しただけでネトウヨ、能登ウヨ等と言われた。」(能登地方・40代男性)

「自分たちに反論する者を「能登ウヨ」と表現して敵意を向けられた。」(能登地方・40代男性)

「無党派なのに能登ウヨ」(能登地方・30代男性)

「能登ウヨ、自称被災者、偽被災者、自称地元民、壺、やっていない者、(地元民だと思っておらず)寄付しているのか?」(能登地方・40代女性)

「『能登ウヨ』と言ったレッテル貼り・ヘイト発言に対し、不快感を覚えるといったポストを出した後、直接的ではありませんが私も『能登ウヨ』だとレッテル貼りされました。」(能登地方・30代女性)

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そのほか、「工作員」、「自民党の犬」、「肉屋に媚びる豚」(搾取される側なのに体制側を支持する愚か者という意図のスラング)、「偽被災者」、「なりすまし」、「エア被災者」、「本当に被災者なら文句を言うはずだ」、「瓦礫の下で暮らしていろ」、「能登の下水」、「与党や政府のバイト」、「棄民」、「犬猫脳」、「差別する奴を差別して何が悪い」、「民主主義に向いていない」ほか特定の政党支持者や、宗教団体の信者と決めつける発言などが挙げられている。

これらは、被災された方々や、事実を伝えようとした方々に向けられた言葉であるとは到底思い難い。