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AI に指示するのではなく、まずは AI に質問させた方が捗る

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はじめに

頭の中には手順や判断のポイントがあるのに、それを明文化出来ていない。
その結果、関係者間で前提が共有されないまま話が進み議論がすれ違ってしまう、ということがあると思います。

これは、暗黙知が言語化されていない状態です。
そしてこれは、 AI ≒ LLM を使う上でも同じ課題に直面します。
頭の中にある暗黙知を明文化しないと、 LLM から良い回答は得られません。

この記事で紹介するのは、そういった状態をプロンプトエンジニアリングの力を使って、解決する方法です。

結論

暗黙知の言語化には、"AI に答えさせる"のではなく、AI に質問してもらう(インタビュー型プロンプティング)のが有効です。

なぜなら、自分がまだ言語化できていない前提・判断基準・制約を、AI の質問であぶり出して メタ認知(自分の思考を一段上から見ること) を起こすことができるからです。

本題

なぜ「指示」より「質問」なのかー LLM の特性から考える

LLM の基本的な性質は、「入力(プロンプト)に含まれる情報から、次に来るべき言葉を確率的に予測する」というものです。

つまり、 LLM に「設計レビューして」「良い案を出して」と指示すると、LLM は不足している情報を「一般的な知識(学習データ)」で補完しようとします。その結果、あなたの状況には合わない それっぽい一般論 が返ってくることになります。

インタビュー型プロンプティングは、この構造を逆手に取ります。
LLM に「推論に足りない情報を質問させる」ことで、不足していた暗黙知を強制的に言語化させ、LLM の推論材料を揃えていくアプローチです。
これにより、LLM の回答精度が上がるだけでなく、あなた自身の思考も整理されます。

インタビュー型プロンプティングの型

では、実際にどのようなプロンプトを書けばよいのでしょうか。

私の経験では、以下の3点を押さえると LLM が効果的に質問してくれます。

  1. インタビューしてほしいことを明文化する(目的とゴールを示す)
  2. 自明な質問は避けるように指示し、質問数を制限する(大量質問の防止)
  3. 途中で切り上げられるようにする(質問ばかりで進まない状況の回避)

具体例:技術設計で「トレードオフ表」を作る

ここからは技術設計の作業をする際に、インタビュー型プロンプティングを使ってみた時の流れの例を記述します。

最初に投げるプロンプト例

まず、あなたが考えている内容と共に以下のようなプロンプトを入力します。(今回だと新機能の通知配信を想定)

あなたは「技術設計のレビュワー」です。
私の暗黙知を言語化し、思考を整理してください。

具体的には、私が提示する新機能のメモから、言語化できていない前提・制約・判断基準・優先順位を引き出してください。
質問は表面的・自明なものを避け、最大 3 問ずつ。

こちらが「十分」と言うか、あなたが十分だと判断したらトレードオフ表を作成してください。

# 入力(メモ)
- 新機能:通知配信(ユーザーに Push / メール)
- 想定:ピーク時に数十万件 / 日
- 失敗しても致命傷は避けたい(取りこぼし最小化)
- できれば段階導入したい
- 監視 / 運用コストは抑えたい
- 候補:同期処理 / 非同期キュー( SQS 等)/ バッチ処理

このプロンプトのポイント

このプロンプトには、言語化を促すインタビューを成立させるための 3 つの工夫があります。

  1. 「インタビュアー」という役割の固定
    作業してほしいのではなく、質問をしてほしいので、インタビューしてほしいことを明確にしています。
  2. 「表面的・自明な質問」の禁止と「最大 3 問」の制約
    AI は大量の質問を投げることがあります。質問の質を高く保ち、かつ一度に答える負担を減らすことで、思考のラリーを継続しやすくしています。
  3. 終了条件を設ける
    「こちらが『十分』と言うか、あなたが十分だと判断したら表を作成する」という終了条件を設けています。これにより、質問が延々続いて議論が停滞することを防ぎ、適切なタイミングでアウトプットへ移行できます。

AI との対話イメージ

上記プロンプトを入力すると、例えば以下のような質問が返ってきます。
(この例は ChatGPT 5.2 Thinking のものです)

了解。まずはメモから「暗黙の前提・制約・判断基準」を仮説化しつつ、設計の分岐点だけを突く質問を最大3つ投げます。あなたの回答に合わせて次の3問を出し、十分になったらトレードオフ表にまとめます。

では最初の3問です。どれも「方式選定(同期/キュー/バッチ)」の分岐を決める前提を炙り出すための質問です。

1. **取りこぼし最小化**の定義を、重複との関係で決めたいです。  
    「1件も落とさない」優先なのか、「重複は絶対NG」なのか、どちらに寄せたいですか?(例:Pushは重複OKだがメールは重複NG、などチャネル別でも)
    
2. 通知は主にどっちですか?(設計が大きく変わります)
    - **単一ユーザー起点のトランザクション通知**(例:決済完了、コメント返信)
    - **多数ユーザーへの配信/キャンペーン型**(例:お知らせ一斉送信、セグメント配信)  
        ※後者が混ざるなら「1イベント→大量fan-out」をどこでやるかが重要になります。
        
3. ユーザー体験として許容できる **遅延の上限****再送の期限** はどれくらいですか?  
    例:「基本は数秒〜数分、最悪でも30分以内」「翌日まで届けばよい」「24時間過ぎたら捨てる」など。  
    (ここが決まると、同期/キュー/バッチの“勝ち筋”がほぼ決まります)
    

まずはこの3つに答えてください。返答をもとに、次の3問で「段階導入の切り方」「監視を最小化するための観測点」「失敗時の安全策(永続化/再試行/冪等)」に踏み込みます。

これらは「通知機能を作る」といった表面的な設計ではなく、あなたが暗黙の前提としていた判断基準をあぶり出す問いになっています。

ゴール例:トレードオフ表

ある程度質問に答えて、「トレードオフ表を作成して」と入力すれば、例えば次のようなトレードオフ表ができあがります。
※各評価はあくまでも仮のものです

選択肢 信頼性(取りこぼし) 遅延 運用負荷 実装難度 コスト
同期処理 低:失敗時にユーザー体験に直撃
非同期キュー 高:再試行 / 冪等性で堅くできる 中〜高(監視・ DLQ )
バッチ 中:まとめて処理しやすい 高(遅延大) 低〜中

「なんとなく非同期がいいかも」ではなく、判断軸と前提が見える化されているので、チーム内での議論もスムーズに進みます。

その他の活用シーンとプロンプト例

設計レビュー以外にも、言語化が難しいあらゆる場面でこの手法は有効です。

1. 技術記事の構成案作成(編集者型)

「書きたいことはあるが、どう構成すれば読者に刺さるか分からない」というときに、 AI に編集者としてインタビューをさせます。

あなたは「技術記事の編集者兼インタビュアー」です。
私の暗黙知を言語化し、読者にとって価値のある記事構成を提案してください。

# 依頼内容
私のメモから、ターゲット読者・解決したい課題・独自の知見を引き出してください。
質問は「何を書くか」という表面的な内容ではなく、読者がなぜその記事を読むべきか、どのような変化を期待できるかという深層を突くものに限定し、最大 3 問ずつ投げてください。

# 終了条件
こちらが「十分」と伝えるか、あなたが「構成案を作成できる情報が揃った」と判断した時点で、読者のベネフィットが明確になる構成案を作成してください。

# 入力(書きたいことのメモ)
- テーマ:{{テーマ}}
- 伝えたい結論:{{結論}}
- ターゲット:{{想定読者}}

2. キャリアや目標の振り返り(コーチング型)

「なんとなく忙しかったが、何を得たのか確信が持てない」というときに、 AI にコーチとしてメタ認知を促させます。

あなたは「キャリアコーチ兼インタビュアー」です。
私の活動メモから、自分でも気づいていない成長や価値観を言語化してください。

# 依頼内容
表面的な出来事の確認ではなく、「なぜその選択をしたのか」「何に違和感を持ったのか」など、私の行動原理や価値観を深掘りする質問を最大 3 問ずつ投げてください。自明な質問や事実確認は避けてください。

# 終了条件
こちらが「十分」と伝えるか、あなたが「強みや価値観を構造化できる」と判断した時点で、私の強みや次のアクションを整理してまとめてください。

# 入力(活動メモ)
- やったこと:{{箇条書き}}
- 印象に残っていること:{{出来事}}

まとめ

この記事では、「AI に指示する」のではなく「AI に質問してもらう」インタビュー型プロンプティングについて紹介しました。

  • LLM は、暗黙知を明文化しないと良い回答は得られない
  • インタビュー型プロンプティングによって、 暗黙知の言語化とメタ認知をフォローしてもらう(前提・判断基準・制約・優先順位を可視化する)

是非今回紹介したプロンプトテクニックを普段の業務で使ってみてください!

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HataLuck and Person, Inc. Engineering

Discussion

無限無限

本当にその通りですね。どうしても「自身では考えが及ぼない」領域は有るもので、しかしそれに気づけていないと、その時の状態を100%と思うのですが、問われてみれば「あまかった」と気づくことは多々有りました。

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