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試合前のノックで監督にボールを渡す大分西・古本(左) |
試合開始前、両チームが7分間ずつノックをする。
大分西の2年生古本湖美(こもとひろみ)は、バットを振る山本一孝監督の後ろに立ち、球を渡す役だった。
この夏の、グラウンドでの役目はここまで。日本高野連の規定で、女子は公式戦には出られない。
ノックが終わると古本は学校の制服に着替え、試合中はマネジャーとしてベンチでスコアをつけた。
「最後まで何が起こるか分からないドキドキ感が好き」。中学2年生のころ、テレビでプロ野球の大逆転劇を見て、野球のとりこになった。
高校に入ると、主将の森岡紘司らがつくっていた野球サークルに入った。今年4月にできた野球部では、足手まといになることを恐れてマネジャーになった。
しかし、思いを抑えきれなくなった。4月22日夕、クラスの副担任との個人面談で「本当は野球をしたい」と打ち明けた。副担任は答えた。「その思いを今すぐ監督に伝えなさい。後悔するよ」
古本は教室を飛び出した。ランニングをしていた選手と監督がちょうど戻って来た。
「野球をやらせてください」。興奮して泣きじゃくる古本に山本監督は一瞬驚いたが、こう言った。「いいよ。でも、けがが怖いから両親に相談してからだぞ」
以来、10人の選手たちと一緒に練習してきた。
チーム初の公式戦は、7回コールド負けだった。それでも6回、小野が左越えに本塁打。その裏の守りでは併殺も決めた。選手たちの表情は、生き生きとしていた。
「私も選手として、あの場に入りたい。ボールを追いかけたい」
そんな思いが、深まった。