「なんとなく不安」で終わらせず 在日外国人を理解する五つの要点
多民社会新シリーズ 「不安の正体」
街でよく見かける。お店や高齢者施設などで働いている。近くに暮らしているらしい。にもかかわらず、実際の生活ぶりはよくわからない。
多くの日本人にとって、この国で暮らす外国人とは、そんな存在だろう。
昨年の参院選で「外国人への規制強化」を訴える政党が支持を伸ばした。排外主義をあおるかのような主張も目立ち、外国人に対する反発や反感が日本社会にうっすらと漂っている。
なんとなく不安。なんとなく怖い。そんな「なんとなく」ではなく、もっと解像度を高めるために、いまわかることを改めて整理してみよう。
【日本の外国人人口は?】欧米諸国よりは少ないが、増加率はトップクラス
現在の日本の総人口に占める外国人の割合は過去最高の約3%で、ほぼ33人に1人となっている。
それでも欧米先進各国と比べると少なく、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は10人に1~2人ほど。反移民の主張をする政党が支持を広げるドイツ(19.1%)や英国(15.2%)、デンマーク(12.2%)などとはまだ開きがある。
一方で、増加ペースは急激だ。最新のデータでは、日本に暮らす外国人は1年で約10%増えている。欧米諸国と比べても増加率はトップクラスで、事実上の「移民開国」状態といえる。
コロナ禍以前の2010年代から日本政府が外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切ったためで、背景にあるのは深刻な人手不足であり、産業界の要望だ。
【どんな人たち?】日本に定着している人が多数派
日本で暮らす外国人といってまず思い浮かべるのは、工場や農場などで一定期間だけ働く、非熟練労働者である技能実習生かもしれない。
だが、在留資格(ビザ)で最も多いのは永住者(在日コリアンなどの特別永住者を除く)の約93万人(25年6月現在)で、日本に定着している人たちが多数派になっている。
次に多いのは技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザを持つホワイトカラー労働者の約46万人で、技能実習の約45万人と続く。一定のスキルを持ち、定住の道が開かれている特定技能も近年急増し、34万人に上る。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)国際関係部長の是川夕さんは「私の調査では、外国人の多くは日本社会に溶け込み、日本人とほぼ同様の生活を送っている。アジア各国は堅調な経済成長の下で新中間層が増えており、ある程度、経済的に恵まれた若い世代が、ステップアップを目指して日本に来ることが多い」と話す。
国籍別では、中国(約90万人)、ベトナム(約66万人)、韓国(約41万人)、フィリピン(35万人)の順で多く、近年はネパール、インドネシアの伸び率が高い。
【外国人は必要?】外国人の労働力なしでは立ちゆかない産業
日本人の働き手は、少なくとも今後数十年は減り続ける。30年後に30歳になる日本人が、昨年生まれた赤ちゃん約66万人(推計)以上にならないことを考えれば一目瞭然だ。
さらに今後は、人口規模の大きい50代前半の団塊ジュニア世代の高齢化が進む。社人研の推計では、社会の支え手となる生産年齢人口(15~64歳)は25年の7310万人から、70年には4割減の4535万人になる。
半面、足元では、外国人労働者数は230万人を超えて過去最高を更新している。日本の全就業者数に対する割合は約29人に1人で、外国人を雇用する事業所は約32万カ所以上に上る。
特に人手不足が深刻な産業で依存度が高まっており、朝日新聞などの調べでは、製造業で17人に1人、宿泊業・飲食サービス業は15人に1人が外国人だ。
ほかにもコンビニなど小売業や高齢者介護事業での依存が目立つが、漁業、農業など第1次産業や建設業の伸びも大きい。私たちの社会を支える多くの産業は、外国人の労働力なしでは今や立ちゆかない。
総人口に占める外国人の割合が1割を超えるのは60年代後半になる、と社人研は23年に推計している。その通りに進めば、欧州諸国並みになるまで、まだ40年以上の時間が残されている。
【外国人はさらに増える?】1割を超えるのはまだ先 「労働者は足りなくなる」予測も
しかし、コロナ禍以降、推計を上回るペースで外国人は増えており、1割到達はもっと早まる可能性があると、25年に鈴木馨祐法務相(当時)は指摘。受け入れ数に上限を設ける必要性に触れている。高市政権も、外国人政策の厳格化の柱の一つとして、一定程度の受け入れ制限に向けて検討している。
一方、このままでは「足りなくなる」という予測もある。国際協力機構(JICA)の緒方貞子平和開発研究所は、政府が目標とする経済成長を実現するためには40年に688万人の外国人労働者が必要となり、現行の受け入れ方式では97万人が不足するという労働需給予測を出している。
国際的な人口移動を予測するのは簡単ではない。世界や国内の経済成長、機械化・AI化の進展、送り出し国の情勢、他国の受け入れ状況など、多くの変数があるからだ。現在の便利な生活環境をどれだけ維持するか、経済の停滞や不便さをどれだけ受け入れるかによっても、必要となる労働力は変わってくる。
自分たちの利益や都合だけを優先しても、思い通りに海外から労働者が来てくれるわけではない。
【これからどうすべき?】分断を深める道か それとも……
日本は国際人権規約や難民条約を批准しており、外国人労働者の基本的人権を保障する義務がある。労働環境や賃金水準ももちろん重要で、自身が思い描いたような仕事に就き、暮らすことができなければ、行き先に日本を選ぶ人は減り、来たとしても定着しない。
長年定住することになれば、生活者として家族を持つのは当然だ。子どもたちが日本で生まれ育てば、2世、3世が社会に溶け込み、孤立しないようにケアする施策も重要となる。
外国人住民が2割を超す東京都新宿区大久保で、小林普子さん(77)は約20年前から、外国ルーツの子どもたちに無料で勉強を教える場を設けてきた。ここで学び、大学を出て一般企業に就職した人たちが大勢いる。
「私のやっていることは投資です」と小林さんは言う。
「日本人の子に比べると言葉や環境で大きく後れをとっている子たちに、せめて同じスタート地点に立たせてあげたい。大きくなって税金を払う社会人になれば、この子たちにとっても、日本社会にとっても大きなプラスなんですから」
来る側、受け入れる側、どちらにとってもプラスになる。この言葉は、これからの日本の選択について、極めて大切な点を突いている。
移民国家として日本よりも先をいく、いくつかの欧州諸国のように、自分たちと外国人との間に線を引き、より分断を深める道を選ぶのか。それとも新宿の小さな塾のように、ルーツや文化が異なっても同じ社会に暮らす一員として手をさしのべ、いずれ支え手の一人となってもらうことを願うのか。
それを選ぶのは私たちだ。
【本編はこちら】外国人への不安の果てに ジレンマ陥る福祉国家、移民の「強制移転」
日本で外国人が急増し、人々が不安を抱え始めているように見えます。問題が政治化するなか、外国人と共生する社会をいかにして築くのか。国内外での取材から不安の正体を探り、私たちが進むべき道を探ります。
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