米国がベネズエラを侵攻し、マドゥロ大統領を拘束した。国連安全保障理事会が緊急会合を開く事態になった。国際情勢の急展開に日本の対応、今後考えられる影響はどうか。

 新年早々、世界中に衝撃が走った。米軍のベネズエラ作戦は1月2日夜に開始された。空爆などで防空システムを破壊したのち、マドゥロ氏と妻を拘束。米軍の作戦の数時間前には、中国外交団とのセレモニーを中華系やロシア系TVが報じていたが、その直後に米軍によって拘束され、目隠しで移送されるマドゥロ氏がトランプ大統領のSNSに掲載された。その後、米国はベネズエラの国家運営をすると発表した。

 昨年から、きな臭い動きがあった。トランプ氏が12月16日、ベネズエラを出入りする制裁対象の石油タンカーについて「全面封鎖」を命じるとSNSに投稿した。

 ベネズエラは世界有数の産油国だ。1980年代、親米政権のもと、ベネズエラに米国石油メジャーが参入した。ところが、1999年ベネズエラに反米チャベス前政権が誕生し、2007年に石油事業を国有化した後に米国メジャーは相次ぎ撤退した。

 それに対して、米国はブッシュ政権から現トランプ政権まで長年ベネズエラのチャベス前政権とマドゥロ政権に厳しい制裁を科し、2万%インフレで国民を苦しめるマドゥロ氏に退陣を迫ってきた。

 一方、ベネズエラは石油資源を米国が奪おうとしていると非難しているが、米国は石油国有化でベネズエラが奪ったものを取り返しているだけとなる。

 また、中国はベネズエラに近づいて石油施設運営や石油の大口購入先となっているので、中国への打撃は必至だ。今年4月に行われる米中首脳会談では、ベネズエラ問題が俎上(そじょう)に載るだろう。

 今回の米軍によるベネズエラ軍事作戦は、国際法違反の疑いがあり、正当化するのは難しいとの指摘もある。もっとも、既にロシアによるウクライナ侵攻、中国による南シナ海支配が国際法をまったく無視して行われてきた。法の支配や国連が崩れたのが国際社会の現実だ。

 ベネズエラは米国から見れば「裏庭」となる。裏庭での好ましからざるものを自ら排除したのだろう。その反面、中国が台湾統一と称し侵攻する口実を与えたともいえる。ただし、台湾は中国の裏庭でない。さらに民主主義(台湾)、独裁国家(ベネズエラ)の違いもある。

 米国は日本の同盟国だ。国連や国際法が機能しないので、理屈抜きで米側にたたないと安全保障上日本に支障が出てしまう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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