なぜ「品目」を明示しないのか

さらに過激にすすめば、高市首相が「台湾有事」に言及したこととからめて、「日本に送る発酵中間体は、有事の際に自衛隊員の外傷治療や手術をするための薬剤製造に使われる、すなわち中国の安全を脅かす軍事利用だ」という解釈をされてしまうことも可能だ。

つまり「あえて品目を具体的に明示しない」という戦略は、「いつでも、どの薬の原料でも、われわれのさじ加減一つで止められる」という全権掌握の宣言に他ならないとも言えるのである。

今回の危機について「国産できるから大丈夫」と言い、普段から「中国は信用できない」と叫んでいる人たちが「軍事以外のものは対象外のはず」などと、中国に絶大の信頼を寄せて根拠なき楽観論にひたっているのは、あまりに皮肉だ。

こうした楽観こそが最大の危機といえよう。

はたして高市政権は、どこまで危機感をもっているのだろうか。

曇天の国会議事堂
写真=iStock.com/nyiragongo
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医療現場に身をおく者としての不安は、処方しようと思った抗菌薬が「欠品です」と薬局から言われる日が、あるとき突然おとずれることだ。

もちろんわが国の抗菌薬の濫用も由々しき問題だが、本当に必要な人にまで処方できない日が、それも「政治」が原因でおとずれることなど断じてあってはならない。

高市首相に伝えたいこと

この不透明な状況を突破できるのは、両国の事務方どうしの交渉ではもはや難しいのではなかろうか。現在のトップでは対話も無理なら、もうこれは政治的決断(リセット)しかない。

レアアースの供給停止ももちろん深刻な事態を引き起こすが、抗菌薬の供給停止はそれ以上に、わが国に生きる人すべてにたいして即効的で致命的な「劇薬」となることは間違いない。

この状況で高市首相に解散総選挙などしているヒマはあるのだろうか。「自己都合」などよりも、国民の命を救うための「一刻も早い政治的決断」を、最優先とすべきではなかろうか。

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