以下、少し長いですが、 年初ということで 少々お付き合いください・・。
ウクライナ戦争について、最近よく見かける、
「私はロシアの侵略を否定している。だが原因も考えるべきだ」
という一見バランスが取れているように見える言い方について、少し整理しておきたいです。
結論から言うと、
「その語り口は、意図の有無にかかわらず、ロシアが長年使ってきたナラティブと極めて高い一致」
を示しています。
問題は「侵略に反対しているかどうか」ではありません。どの因果構造を強調し、どこに視線を誘導しているかです。以下、その典型的な例をいくつか示します。
典型例その①。
> 「2014年の政変以降、ウクライナは腐敗していた」
> 「米欧がロシアを強く刺激してきた」
この2点セットは、ロシア側が一貫して使ってきた『マイダン=西側が仕組んだクーデター』、『戦争の原因は西側の挑発』というナラティブと完全に重なります。
これは「事実の一部を指摘している」ようでいて、
実際には「侵略という決定的行為の責任」を過去の文脈に分散させ論点をズラすためのフレームとして機能します。
典型例その②。
> 「ウクライナの腐敗を指摘すると、すぐ親露派と言われる」
これは「支援する側こそが感情的で思考停止している」という構図を作るための語りです。
ロシア系ナラティブでは、ウクライナの腐敗・無能・未熟さを強調することで、最終的に『そんな国を支援する意味があるのか?』という疑念を植え付けます。
重要なのは、腐敗の有無そのものではありません。
戦争責任の所在と、支援の是非という別次元の話を、意図的に混線させ論点をズラしている点です。
典型例その③。
> 「原因分析と侵略の正当化は別だ」
この一文は、親露派の言説の中で極めて頻繁に使われる「免罪の前置き」という屁理屈です。
否定してから原因を語ることで、語り手は中立的・理性的な立場に見えます。しかし、その直後に提示される「原因」がだいたいこんな感じ、、、
・西側の挑発
・NATO拡大
・2014年の政変
つまり、結論として残る印象は「ロシアにも言い分があった」になります。まさに我田引水のどっちもどっち論ですね。
典型例その④。
> 「親露か反露かではなく、ロシアと話せるルートを持つべきだ」
> 「感情ではなく現実的外交を」
これも単体では正論に見えますが、ここまでの「西側原因論」、「ウクライナ腐敗論」と組み合わさると、『和平』『対話』『現実』という言葉が現状追認の装置として機能し始めます。巧妙ですね。
ロシアの情報戦では、「和平を望む声」「支援疲れ」「もう十分だろう」という感情を膨らませ、侵略によって作られた現状という問題点から論点ずらしを図ります。そして、侵略という現状を固定化することが主要な狙いなのです。
ここで大事な点をはっきりさせておきましょう。
この手の言説を語る人が、ロシアの手先だとか、スパイだとか断定する必要はありません。無意識のエージェント、Useful Idiot(役立つバカ)である場合もあり得るからです。
問題は、彼らの使っているフレームが明確にロシア側の語りと同型であるという点です。その語りとは、「反復されるプロ・クレムリン・ナラティブ」として日米欧の専門家、情報機関が既に整理しているものです。
本当に問われるべきなのは、「侵略に反対しているかどうか」ではなく、最初に武力攻撃したのは誰かという点です。
そこを見ない限り、同じナラティブは、何度でも“焼き直し”で再生産されます。
「中立」「バランス」「冷静」を装った言説ほど、
実は最も注意深く分解されるべきです。なぜなら、
ナラティブは主張ではなく、構造で伝染するからです。
ロシアの情報戦はとても巧妙ですよね?
だから、全集中で注意深く観察しなければならないのです。表面的な言葉に釣られないように気をつけましょう。