【解説】整備不良事故で“整備士個人”も罪に問われる現実──Mobility Transparencyが照らす整備責任の見える化とは
🚨 はじめに
長野県で整備不良が原因とされる交通事故が発生し、整備士個人や試運転担当者にも刑事責任が及ぶ可能性があることが報じられました(TBS NEWS DIGより)。
このニュースは、整備現場における「責任の所在」がいかに曖昧であるか、そして「記録・点検・確認」といった基本工程の軽視がいかに重大なリスクにつながるかを、社会に突きつけています。
しかしこれは、整備士に過度な責任を押しつけるための話ではありません。
むしろ重要なのは、「責任の重さを正しく理解し、共有し、透明化する」──JARWA(一般社団法人日本自動車車体補修協会)が宣言したMobility Transparencyの本質そのものなのです。
⚖ 整備士も罪に問われうるという“法的事実”
整備不良に起因する交通事故では、次のような刑事責任が発生し得ます。
業務上過失致死傷罪(刑法第211条):業務上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に適用される。
構成要件は以下の3つ:
死傷という結果が生じた
整備士や試運転者に注意義務違反があった
その行為と事故の間に因果関係がある
つまり、「部品の締め付けを忘れていた」「試運転前に異常に気づかなかった」──このような行為が、法的に処罰対象になりうるというのは、実は以前から存在する明確な事実なのです。
🧩 なぜ“個人”がリスクを負う構造になっているのか?
この問題の本質は、「整備士が過度に責任を追わされている」というよりも、
整備という業務に内在する責任の重大性が、日々のルーティンや“慣れ”の中で次第に希薄になっていく──その積み重ねが、重大事故の温床となるという点にあります。
そしてその背景には、現場で以下のような風潮が見受けられます:
点検・検査が形式化し、「抜け」「漏れ」が常態化
作業者・確認者の責任境界が曖昧
作業記録が紙ベースまたは属人的で、証拠能力が不十分
このような状態では、事故が起きた際に記録も証明もできず、責任が整備士や試運転者の“主観的判断”に集約されてしまうのです。
🔎 このNEWSに学ぶべき3つのポイント
① 整備は「命を預かる業務」であることを再確認せよ
整備は単なるメンテナンス作業ではなく、「公道に出る車両の安全性を保証する最終防波堤」です。
② 点検・検査・記録の工程にこそリスク管理の核心がある
ミスをゼロにするのは不可能でも、記録と検証の仕組みを整えることでリスクは劇的に下げられます。
③ “誰が何を行い、どう確認したか”を可視化する仕組みが必要
この可視化こそ、Mobility Transparency構想が掲げる理念であり、制度として整備業界が取り組むべき方向性です。
🛡 Mobility Transparency構想がもたらす解決策
この構想は、整備業務におけるすべての工程──整備・検査・試運転・記録──に「透明性」を導入することで、次のようなメリットを生み出します。
責任の曖昧化を防ぐ:誰が何をしたかを明確に残すことで、事故時の責任追及が適正化される
整備士を守る:不当な責任転嫁から整備士を保護し、安心して働ける現場をつくる
社会的信頼を高める:エンドユーザーにも修理プロセスの信頼性が可視化されることで業界全体の信用力が向上
📌 実装例(構想内で推奨されている制度):
整備士・検査者ごとのID付き作業ログ
試運転記録と非破壊検査(NDI)の証跡保存
保険・共済制度と連動した責任分担と補償モデル
「見える化認定制度」など、制度的認証を通じた透明化の外部評価
✅ 結論:責任を恐れるのではなく、見えるようにすること
このニュースが示す最大の教訓は、「整備士も罪に問われる」ことではありません。
責任が“見えない”状態こそが危ういということです。
Mobility Transparency構想は、「事故後に誰を罰するか」ではなく、
事故を防ぎ、事故が起きても構造的に責任を適正に分担できる社会基盤をつくるための道標です。
整備士を守るのも、被害者を守るのも、業界全体の信頼を守るのも、
「見えること」からしか始まらない。
🔗 関連リンク
TBS NEWS DIG 記事
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbc/1992198?display=1JARWA(一般社団法人 日本自動車車体補修協会)公式サイト
https://jarwa.or.jp/Mobility Transparency構想とは
https://jarwa.jp/declaration.html自動車修理「見える化認定制度」
https://jarwa.jp/nintei/index.html


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