年明け早々の2026年1月7日、福井県の杉本達治前知事のセクハラ問題に関する調査報告書(ハラスメント事案に関する特別調査委員)が公表された。前知事の長年にわたる言動は……、怒りを圧倒して凌駕(りょうが)する「気持ち悪いもの」だらけだった。職場で及んだ行為だから「ハラスメント」と表現されているだけであって、街で同じことをやれば「痴漢」「ストーカー」でしかない。その汚らわしさは、ここで文字にするのもおぞましい。だから書かない。
一方で、企業などのハラスメントも含めた不祥事に関する報告書は、たびたび取り上げてきたけれど、これほどまでに「被害者に寄り添った心ある報告書」は見たことがない。通報者と情報提供者を徹底的に守り、ハラスメントを個人間の問題としてではなく組織的ハラスメントと捉え、責任を追及した。加えて、いかなる法律や制度も「現場」で機能しなければ意味を持たないことを教えてくれるものだった。果たして、その実効性を担保する運用努力を、日本の企業組織はしているのか? と強く考えさせられた。
そこで今回は、本報告書を読み解きながら、「あなた」があなたの組織と向き合い、すべきことを考えてみる。
まずはみなさんに知ってほしいと強く感じた箇所(矢印は理由)を、抜粋・要約し紹介する。
<調査開始までの経緯> → 通報・証言のハードルの高さ
- 2025年4月中旬、県の公益通報の外部窓口に被害者から通報があった。
- 同年9月、特別調査委員が設置され県職員全員(約6000人)に情報提供を依頼。調査委員が接触を試みた職員17人のうち、最終的に詳細な事実関係の聴取に応じた職員はたったの3人。いずれも被害者だった(通報者を含めると4人)。
<通報者・情報提供者の保護> → この部分はすべての人が知識として知るべき内容
- (公益通報者保護法、刑法、厚生労働省のセクシュアルハラスメント対策指針などを示し)個人が特定されることを避けるために、報告書では全事案について包括的、概括的な記述とする。
<被害感情について> → あなたの周りにも「雨」にぬれている人はいないか?
- 突如、性的なテキストメッセージが送られ、驚愕(きょうがく)・動揺するも「機嫌をそこねると仕事を失うのではないか」と強く悩んだ。
- 親子ほど年齢の違う男のセクハラに気持ちが悪くなり、恐怖を感じた。
- 被害者らは加害者から愛情を求める性的なメッセージを何度も受信し、恥ずかしく、屈辱的で、心の底から気持ち悪かった。
- 被害者らの中には、加害者に怒りをあらわにした者もいた。それに対し加害者は謝罪するも、2カ月後には再び加害行為を継続した。
- セクハラを公表しようかと悩んだが、狭い福井の中で、噂がたって家族に迷惑がかかるのではと心配した。
- 被害者らは、加害者の弁明や、支持者らからの攻撃、SNS上で攻撃されることに強い恐怖を感じている。
- 通報者は加害者の常習性を感じ、このまま放置してはさらに被害者が発生すると、二次被害は恐ろしかったが、勇気を出して通報した。
<管理職の対応・通報体制の問題> → 管理職あるある、窓口の形骸化
- 通報者はセクハラを上司に相談したが、上司は半信半疑で受け止め「また同じようなことがあったら言って」と助言したのみ。
- 通報者は知り合いの職員にも相談し、その職員から別の部署の管理職にも伝わったが、「通報者自身が加害者に断ればいい」と考え、ハラスメント対応をする部署に情報を提供しなかった。
- 人事課にはハラスメント相談窓口があったが、通報者はその存在を知らなかった。
- 県の人事委員会事務局内の人事相談所が、ハラスメントなどを相談できる体制になっているが、通報者が電話で相談したものの、適切な対応には結びつかなかった。
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