第871話 試写会とやらは一部の人間のみで行うそうだ。

 試写会とやらは一部の人間のみで行うそうだ。

 とくに、ネバンには刺激が強いので見せられないとの事――


 あんまりグロイのは止めてね?

 ポップコーンが進まなくなるので――


 試写会は俺、ニーナの他に、ヌゼとコーネリア、それとヘブロムとさっちゃん。それと一部のメイドだ。ミランダはいない。


「それでは、試写会を始めさせて頂きます」


 メイドがホームシアター用の、プロジェクターの魔道具を起動させる。


 

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 映し出された映像では、女神が普通に動いている。


「女神役はサマヨエルに任せました」


 さらっと言うニーナ。

 ……その上でグロい事になるのだろうか?

 流石のさっちゃんもブチ切れそうだが。


『私は美の女神(―――――)!』


 さっちゃんが喋る。声は美の女神のそれだ。

 そう言えば、さっちゃんは神々の名前を口に出来るんだったっけ。


『知り合いの神々には見放され、ペットにも逃げられ、天使も使い果たし、神界で1人ボッチな哀れで愚かな女神!』


 ……絶対に本人はそんな台詞は言わないと思うよ?


『今は人間の復讐を恐れ、創造神達の御膝元に本体を隠し、毎日ビクビクと隠れ住むだけのちっぽけな存在!』


 なんか、動きがミュージカル調である。

 多分さっちゃんもノリノリでやってるな、これ。


「ちなみに、演技監修は劇団スライムの座長に任せています」


 ふ~ん……


『最近では、モンスター神の息子(―――)までもが我が命を狙っているらしい! ああ、恐ろしい! でも、創造神達の御膝元ならば安心・安全!』


 その台詞のあと、女神のアバターがガクリと肩を落とし、まるで中から抜け出たような演出でさっちゃん本体の登場。


『(―――――)様、覚えておいでですか? 以前貴方の神殿でお会いしましたね。サマヨエルです。ご無沙汰しております』


 そんな挨拶をするさっちゃんの足元に歩み寄る影がる。

 チョコだ。


『わふ!』


 チョコは軽くジャンプし、さっちゃんの胸へとダイブする。


『ん~? どうしましたかチョコ様』


 さっちゃんがわざとらしい演技を披露しながら、チョコの口に耳を近づけた。


『ふむ……ふむふむ……なるほど~』


 これ、チョコも一応演技してるのかな?

 さっちゃんの耳元で口を動かしている様にも見える。


『女神様。チョコちゃんは貴方の様な性格ブスなアバズレより、私のところにいる方が100倍楽しいそうです。もう迷惑だからストーカー行為は止めてくれと仰っています。どうせそこから出てくる根性もないんでしょう? もう一生そこに引きこもっていたらどうですか? その方がお互いの為ですよ? 仮に出て来たとしても、貴方如きに出来る事なんて、アーバン様の靴を舐めて許しを請うぐらいでしょうし――ああ、でもアーバン様も、貴方みたいなドブスに靴を舐められても、ぞっとするだけですね。つまり貴方に出来ることなんて何1つありません。ご愁傷様です。最後に、薬神様からもメッセージを頂いておりますので、お聞きください』


 さっちゃんに紹介され、画面端からヤクトが登場する。


『我、もう(―――――)には興味ないんだな。我は気が付いたんだな。あんな性格が濁り切ったブスより、下界の人間の方がよっぽど美人さんなんだな』


 そこに登場する【踏まれたタンポポ】の2人。

 2人は左右からそっとヤクトに抱き着く。

 台詞はない様だ。


 ……この為だけに、アーキセルから呼びつけられたのだろうか? 可哀想に――


『つまり、貴方は人間以下の存在みたいですよ? 美しか誇れる物がない癖に、それすら人間を下回ったら、貴方には何が残るんでしょうね? 答えは何も残らない、です。他の神々も、貴方を神とは認めないんじゃないですか? と言う訳で、他の神々に問いかけます。(―――――)は真に神に相応しい存在でしょうか? 私からは以上です。では、失礼します』


 さっちゃんはチョコの前足を手に取ると、バイバイと言った感じでカメラに手を振る。


 最後に、ヤクトが抜け殻になった女神のアバターを魔法で消滅させて、映像は終了した。


 実は内心、ちょっぴりエッチな動画を期待していたのだが……そんな事はなかったんだぜ。


「如何でしたか?」


 ニーナが感想を求めてくるが……

 しょ、しょうもない。


 正直、このぐらいなら別にネバンに見せても問題なかったんじゃね?

 最後の女神のアバターがはじけ飛ぶシーン以外は――


 あと、アバターをあんな使い方して大丈夫?

 人形神に怒られるよ?


 これで女神が出てくるとでも?

 んな訳あるか。


「ふふ、確かに、そんな訳はないと、私も思います」


 ニーナはにっこりと微笑んだ。

 ……だから、俺の思考と会話するの、止めてもらって良いですかね?

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