視界が戻り、意識が戻った途端、膨大な量の情報と、変革が体に叩きつけられた。抑止力との契約を通して肉体が、
ここからは自分の番だった。
「ゾォォォルゥゥケェェ―――ンッ!」
体にかかる泥はもはやただの泥としか感じられなかった。弾き飛ばしながら全身にみなぎる魔力と力のまま、炎剣を生み出そうとして、それが炎ではなく、光によって生み出された剣に変貌したのを知覚する。抑止力との契約、それによって根本的な変質が体内で行われているが、
「死ね―――!」
光剣を全力で投擲する。一瞬で音速を凌駕した光剣はそのまま、大空洞を抜けようとしていた入口付近のゾォルケンの体を貫通し、爆裂しながらその体を割った。目視出来ないが、それでも始末しなくてはならない、抑止力が恐れる存在はどこにいても知覚できる。だから岩盤を貫いて割いたゾォルケンの姿が解り、それでいて抑止力が現在、この瞬間、この状況を恐れ、干渉する為の端末を何よりも欲しがっている事も理解出来た。
「あーそーぼぉーおーぜぇ―――! ゾォォォルケェェェンくぅぅぅーん!」
太陽弓を握りながら―――前へと跳んだ。【魔力放出(光)】で一気に加速する様に跳躍しつつ、大空洞の通路を駆け抜け、その先にいるゾォルケンの姿を捉える。憐れみに満ちた姿は此方を目撃するのと同時に憤怒の表情へと変わる。
「抑止力の狗が―――」
「うるせぇ、死ね。こっちは就職が決まったんだよ。新たな上司へのゴマすりで忙しいんだよ! 死ね! 早く死ね! お前も本能寺にしてやろうかぁ!」
すれ違いながらラリアットを叩き込み、その姿を全力で大空洞の外の空間へと殴り飛ばし、太陽弓を構える。それに番える矢は今までの様な炎ではなく、完全な太陽光で生み出された太陽の一矢―――
「今日からお前の名前は松永弾正! 死因は爆死で決定だな! ほら、お前蟲だし! 平蜘蛛って名前の蜘蛛いねぇの!?」
間髪入れず【
「―――貴様、自分が今どうなっているのかを理解しているのか」
聖杯を片手に、ゾォルケンが無傷の状態に復帰し、戻ってきた。その視線は此方の姿へと、憐れむ様に、怒る様に向けられている。ゾォルケンは正しく世界と契約した者、抑止力と契約した者の末路を完全に理解している。その知識がどこからきているのかは理解できないし、その背後にいる存在も気になるが―――抑止力が消す必要があると判断したら、そのうち絶対に会って殺しあう事になるだけだ。抑止力が死んだら知ったこっちゃない。その時は自分の意志で殺しに行くだけだ。だから答える。
「ん? つまり死後―――あと数分の命だけど―――を星に縛られて便利屋として星の存続に協力するんだろ? 時代を! 国を! 場所を無視して俺は戦えるんだぞ!? 聖杯戦争かもしれないし、処理の為に召喚されるかもしれないし、時代を終わらせるためかもしれない―――どっちにしろ、いろんな時代でいろんな場所でいろんなのを相手にできるんだ。天職だろうがぁぁ!」
しっかり働けば有給休暇をくれるのを信じる。
「さあ、死ね、超死ね、ウルトラ死ね、とりあえず死ね。言葉で止められると思うなよ。
笑いながら太陽弓を消失させ、光剣を二刀流に生み出すのを見て、ゾォルケンは笑った。
「こいつが蛮族だと? 生ぬるい表現だな。こいつはそんな生易しいものではない。人の形をしていて人の様に理解していて実際、中身が全く違う。貴様、生まれからして干渉されて育った、怪物の類だな……!」
「うるせぇ、死ね」
「無駄だ!」
「じゃあこっちもスペシャルゲストを呼ぼうかぁ! 大聖杯ちゃん! インターセプト頼むぜ!」
直後、叫びながら再び【
「貴様ッ!」
「未完成の聖杯では完全な無効化は無理だとしても無限コンティニューぐらいは無効化できるだろ? さあ、納得したら死ね!」
大聖杯による干渉が効いている今のみが殺害可能な時間だった。故に迷う事無く殺す為に【
「―――魔神、か。楽しいな」
魔神バルバトス―――どこからどう見ても友情を回復しそうな姿には見えない。
殺す。
核爆発を光剣で切り裂きながらゾォルケン―――バルバトスに向かって切り込む。襲い掛かってくる邪眼の眼光を完全に精神力で無効化しながら二刀の光剣で一気に切り込み、突き刺し、爆裂しながら飛び上る。薙ぎ払う様に襲い掛かってきた死の風を飛び越え、頭上から叩き込む様に【
【魔力放出(光)】の伴ったキックを叩き込み、目玉を破裂させながら大きくその巨体を捻じ曲げる。悲鳴のような獣の声が響くが、そんな事を気にすることもなく、太陽弓そのものを傷口に差し込み、
「―――
太陽弓を爆破させて体を内側から破裂させる。爆破から逃れるためにも一気に跳躍し、縮地で逃れながら着地する。バルバトスの姿が灼熱と閃光に煮込まれるのを眺めながら、技術が一つ一つ役割に合わせて
「まぁ、出来る事に変わりがないのなら問題ないさ。そこら辺は尊重してくれるんだろ?」
答えはない。その代わりに空から火球が叩きつけられる様に落ちてきた。回避すれば稲妻が落ちてくる。それを回避すれば氷塊が叩きつけられてくる。それは余裕たっぷりの一辺倒の戦いから離れ、弾丸の様に、災害の様に叩きつけられてくる魔術の嵐となってくる。明らかに敵として、殺すべき相手として認識した故の行動であり、バルバトスの必死さが見えていた。だから殺害手段と殺害出来るだけの能力があれば、戦闘経験が圧倒的に違う。
―――一回殺している分、遥かに楽だった。
『貴様は―――』
『―――なんなんだ!?』
再生を行いそうなバルバトスの体を光剣で爆裂させながら解体し、吹き飛ばし、着地し、その姿が焦土と化した大地に倒れるのを眺めながら答える。
「
ここまで神話になぞらえて言えば解るだろ? という風に教える。つまり抑止力が欲しかったのは
「―――
まぁ、つまりなんだ、とゾォルケンに答える。
「所詮―――俺もお前も、全ては抑止力の思惑通り……釈迦の掌から逃れる事は出来なかった憐れな猿だったって事だよ。お前のボスも憐れな猿じゃなけりゃあいいな」
「私の……負け……なのか……? 救済も、人類史の焼却も成し遂げられずに―――」
ゾォルケンが言葉を何かを吐こうとしているが、知ったものじゃない。その姿を殺す為に心の目で捉え、そして役割を満たす為に与えられた
「【
与えられた新たな宝具は―――閃光だった。それがゾォルケンを中心に発生したと思った次の瞬間には地平が、光が、空間そのものが圧縮しながら歪み、時代が重ねてきた悪徳を基準に宝具の破壊力が乗算で跳ね上がる。カリ・ユガを滅ぼす為だけの宝具がゾォルケンを問答無用で消滅させ、その蘇生等の全てを無力化しながら、対界の名に恥じぬ広範囲を時代の粛清として問答無用で終焉させる。
一度始まってしまえば閃光も埃も爆炎すら発生しない。風もその物が飲み込んで粛清され、跡形もなく静かに消滅していた。発生した場所にはもはや何も残されておらず、ゾォルケンが保有していた聖杯そのものが巻き込まれるように消滅していた。
ゾォルケンという一つ目の楔、
そして聖杯という第二の楔が破壊された。
そして時代を破壊する為の宝具によって特異点が大きく歪み―――亀裂が穿たれた。
「……さすがに燃えないんじゃあ本能寺できねぇなぁ……これ……少しがっかりだ……」
そう呟いて、リアクションを取ってくれる相手がもう、一人として残っていない事を理解する。視線を大空洞へと向ければ、そちらからは誰も出て来ないし、命の気配も存在しない。ウェイバーも、そして切嗣も大聖杯の泥に飲み込まれて完全に死んでしまったのだろう―――大聖杯としても生かしておく意味はない。となると、この場で生き残っているのは自分のみで、
そして自分が死ねば、この無意味な戦いも終わる。
戦って得るものは何もない。
覚えていられるものは何もない。
だけど確かに
「……あーあ……クッソ無駄な時間で本当に無駄な戦いだったなぁ」
呟き、光剣を生み出す。それを心臓に突き立てようと思い、気配を感じた。手の動きを止めて、視線を気配の方向へと持って行けば、
此方へと向かってゆっくりと歩いてくる、黄金の王の姿が見えた。その表情は笑顔の形に歪んでおり、実に良い機嫌であるという事が見て取れる。その姿を見て、あぁ、と呟く。
「あぁ、そっか……」
呟き、刃を下ろし、
―――そしてこの戦いの勝者と相対する。
戦いは終わった―――が、あと少しだけ、この
超末世救世主!
インド神話へようこそ。カルキが気になった? さあ、調べるんだ。
最初からちょくちょくカルキに関するヒントは出していたけどそれを察知出来たのは明確にユガという単語を使ってからだと思いたい。とりあえず主人公は守護者になっても焼き討ちスピリット、松永弾正の平蜘蛛エクスプロージョン、本能寺フィーバーという過去の偉人の所業をリスペクトするそうです。えぇ。
とりあえず、後1~2話でおしまい。