Fate/Grand Zero   作:てんぞー

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特異点X日目-2

 少しボロボロになってダメージジーンズ風になったものを下に履き、上半身には梵字によって魔術的防御力を付与された布を包帯の様に胸回りを―――心臓を守る様に巻きつけ、スポーツテーピングの様に両手にも巻いておく。これで心臓、両腕を狙われたとしても、或いはガードに使ったとしても刹那の瞬間、即死する前に時間を生み出せる。これだけの時間があれば縮地で移動なりカウンターを叩き込むなり、十分な行動はとれる。その為、割と防御力と言う者は重要だったりする。一応、フルアーマーでも通常と全く変わらない様に動けるようには訓練してあるが、そういう装備に関しては今回はなしである為、一切考える必要はない。そもそも鎧自体、インドで着てから一切使っていないのだから。

 

 そのまま、体に呪布を巻いた状態、素肌の上からパーカー付きのジャケットを着る。ジャケットはシンプルに見えつつも、細かいポケットが見にくいように存在し、武器を隠しておくには便利だったりする。着替えが完了したところで軽く拳を握り、足を持ち上げて蹴りと繰り出し、そして調子を確かめる。完治……とはいかない。だが動くには十分なレベルには回復している。痛みを無視すればいつも通り動く事も出来る。ならこれで戦うには十分な筈だ。そう判断しながらジーンズのベルトにポーチとウェポンホルダーを装着する。ホルダーに【天を翔けろ、太陽よ(サルンガ)】を装着し、ナイフを装着する。ベルトと重ねる様に鞘を装着してその中にロングソードを収め、パーカーのポケットに魔宝石を収納する。

 

 これで一先ずは着替えと準備が完了した。コンバットブーツは玄関にあるからそれはそれでいいとして、

 

「―――装備完了だな」

 

 確認を終えてからリビングルーム、他の三人と合流する。イスカンダルもスカサハも既に現代風の衣装ではなく、召喚された時の戦闘装束へとその姿を変えている。それも当然だ。これからこの家の外へ―――怪物とシャドウサーヴァントが跋扈する空間へと出るのだ、そんなところを抜けるのだから戦闘の準備をするに決まっている。

 

「じゃあブリーフィング……じゃねぇな、目標と目的の再確認を行う。俺達の目標はアインツベルン城であり、そして目的は衛宮切嗣との接触だ。このまま、この状況を乗り越えるまでの短期的同盟を結成し、合流する事。既にウェイバーが使い魔を通して連絡を入れ、了承を得ているからあとは設備の整っている向こうへと行くだけ―――オーケイ?」

 

「なんかお前、手慣れているな」

 

 ウェイバーの言葉にまぁ、そりゃぁ、と答える。こうやってブリーフィング、或いは事前の打ち合わせをするのは初めてではない。仕事で魔術師の工房を潰したり、逃げたキメラを始末したり等、そういう事も何度か経験している。だから割と慣れているもんなのだ、こういうのも。

 

「今回は目立つからオッサンには悪いけど―――」

 

「余の宝具はなしであるな。宝具が取り柄のライダーから宝具を奪ってどうするんだという話だがな」

 

「その代り私が露払いを果たそう」

 

「俺はまだ完治している訳じゃないからサポートに徹するから、今までの様に動けるとは思わないでくれよ―――そんじゃあ移動を開始しますか」

 

 全員、移動に対して一切問題が無い様なので家の外へとさっさと移動してしまい、そのまま移動を開始する。空を見上げれば夜空が広がっているのに、そこには不気味に輝く光輪が見える。アレは邪魔だなぁ、と思いつつも視線を夜空から外し、闇に包まれている冬木の住宅街へと向ける。壁蹴りや屋上を伝った移動は早い反面物凄く目立つ―――少なくとも一般人にとってはそうではないが、一般の領域を超えた者からすれば非常に目立つ動きなのだ。だから奇襲に対する警戒を行いつつも、普通に道路の上を駆け足で移動する。あまり速く走るとウェイバーがどうしても遅れてしまう為、スカサハとイスカンダルを先頭に、ウェイバーを中央に、そして後方警戒に自分が並んで進む。

 

 それにしても何故だろう、ウェイバーが英霊達と揃ってるとそのうち”計略だ”なんて言いそうな気がするのは。

 

 変な電波を拾った気がする。

 

 しっかりしろよ俺―――そう思った直後、前方から迫ってくる敵の気配を察知する。素早く【天を翔けろ、太陽よ(サルンガ)】を持ち上げて構えるのと同時に正面、交差点を曲がってくるように出現する六体のスケルトンと一体のシャドウサーヴァントが見えた。そのシャドウサーヴァントはあまりにも見覚えのあるサーヴァントの姿をしていた。

 

 脱落した、アサシンの姿だ。

 

 その姿が視界に入るのと同時に先制を奪う様に最少出力で太陽弓から矢を放った。閃光の炎は素早く放たれるのと同時に敵の集団の前で弾け、火花の様に輝きながらチャフとなって相手の視覚、そしてエーテルの流れを乱す。一瞬だけ意識を奪う事に成功した瞬間、スカサハとイスカンダルが既に前に出ていた。普通の人間にはありえない速度を英霊という身だけで完結させ、一瞬で集団へと接近する。

 

 次の瞬間、スカサハの槍とイスカンダルの剣が集団を割った。骨を砕き、アサシンの首を飛ばし、そして残骸を砕いた。一瞬で総勢七体の姿が魔力の塵となって消えて行く。後方と周囲からの援軍や奇襲がない事をチェックしながらイスカンダルとスカサハにサインを出す。それを受け取った二人が再び真っ直ぐ前へと、目的地へと受かって進み始める。現在の冬木は敵で溢れている為、無論警戒を怠る事はなく進む。

 

 最初は不安そうに警戒しているウェイバーも、自分がそうするだけ無駄だと悟ったのか、途中からだんだんと無駄な力が抜け始める―――とはいえ、恐怖を感じていることには変わりがない様だが。だが恐怖は良い。アレは臆病にしてくれる。完全に恐怖を殺すと咄嗟の襲撃に反応できなくなる時がある。だからある程度は恐怖を保ったままなのが”健全”な人間というものだ。だからそのままでいてくれ、とは思う。

 

 そう思って進んでいると、更に敵の気配を察知する。

 

 やる事は一緒だ。先制を奪い、隙を作り、そして切り込ませる。スケルトンやゾンビ、シャドウサーヴァントの中でスカサハやイスカンダルに勝利できるだけの化け物は存在しない。戦いとなれば蹂躙と表現できるレベルになる。ゆえに問題はどれだけ魔力の消耗を抑え、そして戦闘時の音を生み出さないか、と言うだけになる。そこら辺は完全に二人の英霊の技量任せになる。

 

 が、

 

 ここで初めて、英霊が前で、マスターが後ろと言う普通のサーヴァントとマスターの戦闘風景になっている事に、少しだけ苦笑を零した。この聖杯戦争で、もっともマスターらしくないよなぁ、俺、と思いながら前へ、敵の残骸を踏み越えながら更に奥へ―――アインツベルンの森へと向かって突き進んで行く。

 

 

                           ◆

 

 

 合計七度のエンカウントを経験するが、少しだけ魔力を消耗した以外の損害は皆無でアインツベルンの森へと到着する。霊地へのダイレクトアタックで霊地としての防衛能力は失われているが、その代わりに簡易的な結界が張り直されていた。無論、それをすり抜けて侵入するのは魔術に関す津知恵がある者であればそう難しくはない。霊地を破壊してしまった為、大掛かりな魔術を維持できないのだろう。だから到着したことを知らせる意味でも対策もせずに中に入れば、アインツベルンに到着のサインが送られる。そこで足を止める事もなく、森の古城へと向かって歩いて行く。

 

 が、やがて森の中に気配を感じ始める。気配のする方角は丁度アインツベルン城へと向かう途中にもある為、回避する事もなく真っ直ぐ気配へと向かって進めば、森の中にある、不自然に開けた場所へと出てくる。

 

 その向こう側に、青いウォードレスに身を包んだ金髪の騎士王の姿が見える。こうやってその姿をしっかりと確認すれば、骨格と肉付きからして女性であるというのがしっかりと理解できる。身長は低い、年齢は十四ぐらいだろうか? 物語のアーサー王は男であり、そして成人した男性だった筈だ。となるとアレか、過去のブリテンは相当目が腐ってたのか、或いは中性的な美少年美少女の類が多かったのだろうか。

 

 まぁ、それはともかく、間違いなく節穴アイだったよな、とは思う。

 

 魔術で隠蔽していたのなら話は別なのだが。まぁ、今はどうでもいい話だ。

 

「ようこそ来てくれました。もう既に相対した事もあるのでわかっていると思いますが、私がアインツベルンのサーヴァント―――セイバーです。マスターは残念ながら顔を見せるつもりは一切ないらしく、彼の言葉は私が代弁させてもらいます」

 

「ま、あの性格からして予想出来た事か」

 

 事態が解決したらまとめて始末する―――なんて事を考えているのかもしれない。ただ今はそれを疑っていてもどうしようもない話だ。マキリ・ゾォルケンを殺す為には間違いなく全戦力を投入する必要がある。ギルガメッシュに関しては諦めているが、アーサー王が加入してくれるのであれば何よりも心強い。その伝説は現代においても数多くの人間が知っている。

 

 星の聖剣エクスカリバー、

 

 世界を繋ぎとめる聖槍ロンゴミニアド、

 

 あらゆる害から守った聖剣の鞘。

 

 アーサー王伝説に登場する数々の新具の持ち主が目の前に存在するのだ。今の所確認できている宝具はエクスカリバー一つだけだが、それだけでも十分すぎる破壊力を持っている。それに伝説と同一人物なら、0%の勝率の中から1%を生み出す程度の事はやってのけるだろう。これで戦力アップだな、と頭の中で計算しているとでは、とアーサー王が口を開く。

 

「アインツベルン城へと案内します―――ただしピクト人、貴様は駄目だ」

 

「俺は日本生まれだっつーの!」

 

「……本当か? 本当はピクト人の両親を持っていないか? 或いは魂を継承していないか?」

 

「なんでそこまで疑うんだよッ!」

 

「貴様の数々の行いは切嗣に―――マスターに似ているがどこか()()()の側面がある。それはどうしても祖国を落とさんと音速で飛来し襲い掛かってくるあの蛮族の姿を思い出す。貴様も音速で動けるだろう?」

 

「現代人にいったい何を期待してるんだこいつ」

 

 この騎士王の蛮族に対する疑り深さと言うか殺意の高さは一体何なんだろうか。目の前で疑うような視線を叩きつけてくる様子を横でイスカンダルが笑いながら見ている。

 

「……仕方がありませんね。少なくとも見た目はこの国の者の様ですし……あの蛮族どもの縁者だったら迷う事無くこの聖剣で薙ぎ払ったんですが」

 

「殺意高くない?」

 

「当時は聖剣を放つだけの仕事とガウェインに表現されましたが、ぶっちゃけた話をしますと聖剣をぶっ放さないとどうにもならない蛮族だったと表現するのが正しいと言いますか……一応、円卓に集った騎士達は一騎当千の猛者であり、それらを集めて殲滅にあたったのに全滅させることは出来ず、また数を揃えて襲い掛かってきましたからね。同じ人類かどうかすら疑いましたよ」

 

「過去の蛮族ってすげぇ……」

 

 ウェイバーが恐怖の視線を此方へと向けてくるが蛮族イコール俺と言う図式を勝手に結びつけるんじゃない。自分はもっとヒャッハー系であって違うと思う。伝説の騎士王にエイリアン扱いは流石にちょっと心が傷つく。

 

「まぁ、そう落ち込むな。お前は蛮族と言うよりはケルト寄りだ」

 

「それ褒めてねぇから。結局ウォーモンガー扱いって事だから」

 

「……何かいけないのか?」

 

 アーサーもそこであぁ、ケルトの方ですか、とか妙な納得もしているし、後でスカサハには文句を言っておこう。なんか空気が変にぐだぐだし始めているし、森がアインツベルンの領域とはいえ、シャドウサーヴァントならば何時入り込んでもおかしくはないのだ、さっさと設備の整っている城の方へと移動しておきたい。その意志を伝えるとアーサーがあぁすいません、と言葉を置く。

 

「それでは拠点の方へと案内します。正確な情報の交換と作戦の立案はそちらの方で行いましょう。この状況に関する詳しい情報も欲しいですし」

 

 空を見上げれば光輪が見える。まるで冬木を捉え、隔離しているかのように浮かびあがる光輪。それを眺めてからアーサーへと視線を戻し、その先導の下にアインツベルン城へと向かって進んで行く。

 

 騎士王アーサーって意外と愉快なキャラしてたんだなぁ、と思いながら。




 蛮族はエイリアンと言う扱い。ピクト人、一体何者なんだ……。

 しかしアルトリアさん、君の願いをかなえると人理定礎破壊して今と全く同じ状況になるんだけど、それで盛大にアルトリアを煽りたい。苦悩している所を反復横跳びで往復しながら盛大に煽りたい。
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