「は、ははは―――ハーッハッハッハッハッハ―――!! 楽しいなぁ、これぇ!」
連続で炎剣を振いながら襲い掛かってくる宝具の雨を弾く。壊すのではなく、流れに乗せて弾くのだ。宝具の雨は直線的な動きで放たれ、完結している。そこに細かい指示はない。故にあとは技量でどうにかできる。神秘も魔力も劣ってはいるが、縮地で接近して斬った時に黄金の技量は感じ取れた。技量だけに関しては”並の英雄”クラスしかなかった。だからこの弾丸も、その程度の技術しか盛り込まれていない。だから己はこれを捌ける。握っている炎剣と宝具がぶつけ合う時に、握っている炎剣を捻る事で一つ目の円運動を、そして手首を動かす事で二つ目の円運動を生み出し、それによって直線的な動きの衝撃を、運動量を散らし、逸らしながらエネルギーを拡散させるのだ。故に、投擲による攻撃は通じない。少なくとも秒間二十連打クラスの射出量では、
掠りすらしない。
ただ、それは、
「本気じゃないな、黄金の王! そこが悔しいなぁ!」
「ハ、我の本気が欲しいのか雑種? あまり付け上がるなよ。我が貴様の思惑に乗ってやってるのはそれが正しいか正しくないのかではなく”愉しめるか否か”の問題だからだ。故に雑種、我の本気を見たいというのなら死に物狂いで謳えよ……!」
「ははは、すげぇわ」
笑いながら弾かれるように距離を一気に取る。そうやって後ろへと下がった瞬間入れ替わる様に残像を残すことなく、影を駆け抜ける様にスカサハが一気に前へと出た。影の国の女王がその国で磨き上げた技術、影の国の御業とも言うべきそれはスカサハの圧倒的技量を見せて付けていた。降り注ぐ宝具に掠る事もなく、迎撃の行動をとる事もなくすり抜ける様に、速度ではなく歩法による接近を行っていた。
宝具の雨が当たる様に見える直線、常に均一の速度で動いていたスカサハの体がわずかに揺れる様にブレ、そして宝具をすり抜ける様に前進する―――自分が愛用する縮地とはまた別の技術だ。見切りとも言われるその技術は最小限の動きで攻撃を完全に回避する技術だが、影の国超絶技巧を織り交ぜたスカサハの動きはまるで影その物の様に動く。技術に対する理解がある自分だからこそ解る。動きのベースは自分の良く知っている見切りと同じだ。だけどそれに独自の技術を混ぜる事でまるで違う生物の様に進化させている。
―――アレが俺の目指すべき姿だ。
それをスカサハは戦場で見せてくれている。
すり抜ける様に宝具を抜けた先でスカサハの周辺には赤い魔槍が複数浮かび上がっていた。それはスカサハが武器として使っている魔槍を複製した様に全く同じ姿をしており、宝具の雨を抜けた先で黄金へと向かって一瞬で射出されて行く。反応する様に自動で大地から、そして虚空から射出された宝具がぶつかり合って相殺し、魔槍と宝具を砕き合う。が、その時間すらもスカサハは接近の為に利用していた。両腕を組んで立つ黄金の前へとゆっくりと接近する様に動き、
そして魔槍が振るわれた。
「甘いわ戯け」
虚空から鎖が射出された。魔槍の切っ先とぶつかったそれはまるで意志を持った大蛇の様にうねり、動いた。その鎖は弾かれた衝撃のままに姿を広げ、一瞬でスカサハを囲み、その全身を捉えようとして、すり抜ける様に影になってスカサハが回避し、すれ違いざまに二本の魔槍による連撃が黄金へと向かって繰り出される。それを射出された宝具と鎖がガードし、そして連撃の終わり際に黄金がまた輝ける斧を片手に、嵐を払う様にそれを振り下ろした。
「―――成程」
スカサハが魔槍を車輪の様に回し、此方が宝具を弾くときにやったように、円運動に斧を絡めるように動く事で攻撃を受け流しながら弾き、そのまま滑る様な動きで黄金の前から去り、一瞬の低空跳躍で此方の横へと戻ってくる。合わせる様に生み出した炎剣を投擲して前方の大地へと叩きつけ、砕けたアスファルトを黄金へと向けて弾きつつも舞い上げた埃に姿を隠して、一気に距離を稼ぐように更に跳躍した。
「大体絡繰りは読めてきたな」
「マジか、俺は一切解らないわ」
「とりあえず私なら殺せぬ事はないな―――相性が良い」
「―――神性か」
スカサハが返答のない肯定を行い、直後共に跳躍した。埃を分断する様に放たれた宝具の豪雨が襲い掛かってきたからだ。それを回避しながら更に逃げる様に距離を作り、炎剣を投擲して舞い上がるアスファルトを弾丸代わりにして弾幕を張る。同時に横でスカサハが虚空に陣を描いて魔弾を数百と一気に生み出し、それを宝具の弾幕へと叩きつける。影の国の女王、魔術においてもその追随許さず、と言った所だが、
本来よりも効き目が大きい、という感覚がスカサハのパスを通じて伝わってくる。スカサハは【神殺しB】のスキルを保有している。これは単純に神性を、つまりは【神性】というスキルを保有した存在を殺す事を目的としたスキルであり、【神性】を保有するサーヴァントの能力を阻害、殺し易くするというスキルだ。スカサハの反応を見るに、この黄金の王は間違いなく神性を保有した存在―――しかし聖杯戦争の都合上、完全な神霊を召喚する事は不可能だ。つまりは神とのハーフ、或いはクォーターの様な存在である事になる。
スカサハなら真名を看破しているのかもしれない。何せ、彼女の観察眼は一瞬で凡才と天才を触れずとも見抜く程だからだ。だけど、それを口にするだけの余裕が今はない。スカサハの神殺しを振り払う様に黄金の背後にある空間が更に広がる様に揺らめく。今まで開いていた砲門が一度に四十程ならば、それが一気に二倍の八十へと増えた。単純にして二倍の物量が襲い掛かってくる、という姿でもある。次の瞬間発生するであろう掃射に備え、構えた瞬間、黄金の動きが止まる。
「―――時臣、興の何たるを理解しない奴め」
黄金のその言葉に何があったのかを理解した。故に口を開いた。
「いえーい、遠坂のマスター聞いてるぅー? 開幕で家を爆撃しちゃってごめんねぇ! でもねぇ! サイコロ神の導きだからしゃーないの! 何回振っても6しかでねぇからたぶん黄金様がお帰りになった直後もっかいノックしに行くけど許してね!! アラヤとガイアと俺の中で目覚めたケルト魂が遠坂を襲えと囁いてるんだ!」
「そこでケルトを引き出して私を巻き込むのはやめろ」
そんな事を言っているが、スカサハもレフを殺した直後にこのまま襲撃をかける、と宣言した時の楽しそうな気配は絶対に忘れない。この女も、結局は根っからの武人なのだ。戦う事を捨てられない、闘争が日常の類の生き物だ。長い間戦いから離れていたからこそ欲求不満が募っている。死んではいない、今も生き続けているからこそ発生する欲求だ。だからスカサハも間違いなくこの戦いを楽しんでいる。
「という訳ださあ、続けましょうぜ、黄金様。きっと貴方はどこかの凄い王様だったに違いない。きっと壮絶な人生を送ってきたに違いない。そして俺には想像できない事を成し遂げたんだと思う。じゃなければこんな凄い存在はあり得ない。そして、そんな貴方に全力を出せるのは凄く、凄く楽しい。踊るなら頭空っぽにして全力で楽しまないと損というぐらいに……!」
「フ、フフ、フハハハ! 聞いたか? 奴め、戦わん限りは本気で襲撃を続けるつもりだぞ。ここで潰さない限りは安心して眠れまいな、時臣」
言葉を放った直後、黄金が戦闘態勢に入る。その両手には鎖が巻かれ、明確に攻撃の意志が加わる。今までの様に防衛しつつ適当に宝具を射出するだけではない。明確に攻撃する、という意思が黄金には加わっていた。此処から更に攻撃が激しくなるのか、その想像に気分を高揚させた直後、
「―――ァ、A、aaa……ァァァAaaaaaaaaaaaaaaaaar―――」
夜に狂咆が響いた。
眼前、黄金と此方の間に黒い甲冑の戦士が出現した。完全に黒一色に染め上げられたその存在はまるで闇を纏うかのように黒をその体から発し、反射的にマスター権限によるステータスを読み取ろうとした此方の読みをあっさりと無効化した。ただ、その身に纏う狂気は鎧で身を隠そうとも消し去ることはできない。この戦士は―――いや、騎士は間違いなく狂気に囚われている。即ち狂戦士、
―――バーサーカーの登場だった。
「新たなお客様のエントリーかなぁ!」
「どうした狂犬? 飼い主の怨念が染みついて見えるぞ」
「Aaaaaaaarrrrr―――!!」
狂戦士の咆哮が夜空に響き渡るのと同時に八十を超える砲門から宝具が射出された。すかさずバックステップと迎撃の動きで距離を取る此方とは対照的に、迷う事無く狂戦士は前進し、
そしてありえない事に射出された宝具を掴んだ。
「む、見事」
スカサハが感嘆の声を漏らすのと同時に狂戦士は片手に一つずつ掴んだ黄金の砲門から放たれた宝具を掴み、己の武装の様に振い、放たれた宝具の爆撃を迎撃しながら進んで行く。衝撃に耐えきれずに自壊する宝具をそのまま握りつぶしながら弾き上げた宝具を新たに掴み、それを赤黒く、己と同じ色に染め上げて奪取し、それで迎撃しながら前進する。
その光景に隠すことなく黄金が不愉快な表情を浮かべ、
そして迷う事無く【
それに対する狂戦士の反応は素早く、予知していたのではないかという俊敏さで反応を見せながら振り返る事無く体を飛ばし、黄金と此方から距離を離すように大きく跳躍、砕かれたアスファルトの上へと着地する。流石に乱戦中は奇襲警戒しているよなぁ、と少しだけ残念に思いながら【
そして着地した。
戦場は常に動いている。
それこそ遠坂邸へと【
―――アインツベルンが拠点とする森の前に。
アインツベルンの森を背に、横へと跳躍する。それと同時に放たれた宝具が先ほどまでいた空間を突き抜け、アインツベルンの森を蹂躙する様に薙ぎ払い、爆裂して行く。大地を蹴り、木片を足場にして跳躍しながら【
遠坂邸とは違い、アインツベルンの森に炎に対する耐性は存在しなかったらしい。
捻じ曲げられた【
「あー、ごめんね! 超ごめんね! 巻き込む気はなかったんだよアインツベルン! 嘘だけどな! だけど、ほら、良い夜じゃねぇか、引きこもってるのは退屈だろ? 俺が100%の善意でパーティーに招待しに来てやったんだから一緒にサッカーでもして遊ぼうぜアインツベルンー! ボールはお前の土地な! ホームレス遠坂は無理だったからホームレスアインツベルン目指そうぜ!」
「まさに
視線を戦場全体へと向ける。黄金の王は楽しそうな気配を全身から発し、狂戦士の事で多少不機嫌だったのが緩和されている様に見える。狂戦士自体は今までの暴れっぷりが嘘かのように視線をアインツベルン一点へと向けて動きを完全停止させている。
そして、アインツベルンからは魔力の胎動が感じる。
スカサハにも、狂戦士にも、そして黄金の王にも劣らないサーヴァントがこちらへと向かってきているのを感じる。
十秒、それだけの時間を新たな役者の登場の為に待った。
―――そしてそれは期待通り果たされた。
森の奥に存在する城からここまでの道のりに存在する炎、それを暴風が押し潰すように消し飛ばし、そうやって開いた道を歩いてくる姿が見える。
「全く―――このやり口は祖国を襲ってきた蛮族共を思い出させて少しイラっとしますね」
少女の様な声を響かせながら登場したのは青いウォードレスと軽甲冑姿の騎士だった。そのガントレットに包まれた両手には見えない何かが握られているようであり、そこに大量の神秘が内包されているのが見えていた。炎を押し潰した風の余波がこちらへと届き、それが頬を撫でるのを感じつつも、改めて【
「役者は足りんが……初日の夜を飾るには相応しいだけの数は揃ったか」
黄金の言葉を無言で肯定し―――構えた。
黄金の背後は揺らめき、百を超える砲門が開いた。
青い騎士が透明な何かを構え、踏み込みの姿を見せる。
スカサハが二本の魔槍を握り、足の踏み込みで重力を殺した。
そして、狂戦士が月に吠えた。
「―――Aaaaarrr■■■■―――!!」
狂喜の咆哮が夜の冬木に響き渡るのと同時に、全てが動き出した。
突撃! 隣のアインツベルンさん! あ、時臣さんアガリっすか? じゃあ3時間後にノックしに行きますんで。
鬼畜の所業。令呪を使って呼び戻したいけど再びテロリストが来る宣言しているから不可能という。とりあえず集められるだけ集めて暴れるないと(使命感
黄金様
超楽しい
黒甲冑
おじさんが現在進行形で苦しむ
青ペンギン
王は人の心が解らない。なお故郷の音速で飛行してエクスカリバーを食らってもめげずにまたい襲い掛かってくるゴキブリの如く増えて襲い掛かってくる生物を思い出す。あのころのBANZOKUっていったい何者なんだ……。
モーさんいわく「エイリアンみたい」とか言ってたけど