「障害年金」の判定結果を、ひそかに職員が捨てていた…日本年金機構 でも「職員が悪い」では解決しない根本的な原因とは
医師の個人差と短時間の判定という二つの要素が合わさり、判定結果を見た職員が「この判定は明らかにおかしい」と感じるケースが生じるのは自然なことだろう。 つまり、職員がいわば「調整弁」となって、判定を平準化していたとみられる。しかし、その職員の判断が本当に公正に行われているのか、外部からは分からない。恣意的に行われ、受給権を奪われた人が過去にいた可能性も否定できない。 ▽「紙折り」と呼ばれていた この点については、年金機構の幹部はこう釈明している。 「支給判定が不支給に覆った例はほとんどなく、むしろ支給に転じた例の方が多そうだ。悪意でやっていたわけではないと思う」 判定結果の破棄は、記録を折って捨てることから「紙折り」などと隠語で呼ばれていたという。幹部は「(2010年に発足した機構の前身組織である)社会保険庁時代からやっていたのではないか」と推測する。 職員が判定を破棄する際の判断基準やマニュアルはないという。文書の保存ルールにも違反していた可能性がある。つまり、内部の統制も外部の検証もなされないまま、ブラックボックスの中で行われていたことになる。
障害年金に詳しい社会保険労務士の安部敬太さんが問題点を指摘する。 「統一的な判断基準がなければ、個々の職員やそのときの障害年金センター長の考え方によって、いかようにも運用できてしまう」 実際、2024年度は障害年金を申請しても「障害が軽い」などと判定され、不支給とされた人が前年度に比べて急増。センター長が人事異動で厳しい方針の人間に代わったことが要因として指摘され、国会でも追及された。 ▽障害者と年金機構、相互にある不信感 障害者の間には「年金を支給したくないのではないか」と不信感が広がる。一方、年金機構には別の不信感がある。幹部が明かす。 「『あの人は障害年金を不正受給している』という情報提供が一般の人から頻繁に届くんです」 障害者の中には申請が難しく、社労士に代行を依頼する人も多い。社労士にしてみれば、不支給になると成功報酬を受け取れない。そのため、診断書を書く医師に社労士が「支給されるように書いてください」などと頼み込むケースもあると指摘されている。