「障害年金」の判定結果を、ひそかに職員が捨てていた…日本年金機構 でも「職員が悪い」では解決しない根本的な原因とは
支給を絞るために組織的にやっていたのだろうか。それはどうやら違うようだ。 年金機構のある幹部は当初、取材にこう話していた。 「文書の破棄なんて、犯罪に当たりかねない。そんなことはしないと思うが…」 この答えからしても、上層部が指示したのではなく、現場の職員レベルの慣行として行われていたとみられる。 Aさんの次の説明も、それを裏付ける。 「破棄することは、医師の判定が『支給』『不支給』どちらの場合でもあります」 この話が本当なら、本来なら受け取れたはずの人が不支給になった可能性もあれば、逆に職員の判断で救済された人もいる可能性があるということだ。 ▽「この医師は優しい。あの医師は厳しい」 どうしてこんなことが行われていたのか。 理解するにはまず、判定の実務がどのようになっているかを知る必要がある。 年金機構から審査を委託された医師は障害の種類ごとに分かれ、昨年1月時点で計140人いる。ただ、基本的には複数の医師による合議ではなく、単独で審査する。
医師も人間である以上、個人差がある。 特に、数値で判断しにくい精神障害や発達障害などの場合、「『この先生は優しいけど、あの先生は厳しい』というふうに判定にばらつきが出る」(障害年金センター元職員)。 しかも判定医に支払われる報酬は安く、年金機構は担い手を探すのに苦労している。医師を選べる立場にはない。そのため、発達障害にそこまで詳しくない精神科医が審査する、先天性心疾患の専門ではない循環器科医が審査する、といったことが起こり得る。 医師の多くは、通常の診療の傍らで引き受けている。だからそんなに時間はかけられない。年金機構としても「申請受理から3カ月以内に処理する」という標準期間を定めているため、早くさばく必要がある。 一方で、障害年金を申請する人は年々増えていて、2024年度は18万~19万件。既に受給している人の中には1~5年ごとに更新手続きが必要な人もいて、その審査も年間20万~30万件ほどある。そのため「1件の審査に1分かけられないことも多い」(センター職員のAさん)。