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【採択者インタビューvol.5】医師不足の不安をなくし、誰もが安心して暮らせる地域社会へ ーコルシーが挑む医療DXー

社会課題に挑む採択者8団体のストーリーを、シリーズでお届けする「採択者インタビュー」。事業の背景、描く未来、そしてプログラムコンセプトである「Think,Our Social」への想い―それぞれの挑戦のかたちをお届けしていきます。

第5弾は、東北や新潟で長年続く医師不足と専門医の偏在という深刻な医療課題に挑む、株式会社CORSHY(コルシー)。代表の堀口 航平(ほりぐち こうへい)さんは、紙での運用が中心だった心電図判読をデジタル化し、クラウド上で専門医が遠隔で診断できる仕組みを構築。医療機関の負担を軽減しながら、限られた医療リソースを地域で循環させる取り組みを進めています。「医師不足なく、誰もが安心して暮らせる地域社会をつくりたい」―そんな想いを胸に、医療DXを進める堀口さんの原点と、描く未来を伺いました。

医師不足に立ち向かう―「仕組みを変える」という選択

大学卒業後、人材紹介会社に勤務していた堀口さんが医療の世界に関心を持ったきっかけは、大学時代を過ごした新潟が「医師不足率全国ワースト」というニュースでした。

「これまで培った経験とスキルを生かして、自分にも何かできるのではないか」

居ても立ってもいられなくなった堀口さんは、医療系の人材紹介会社へと転職。しかし、地方の医療機関での「医師の確保」や「専門科目の偏在」といった課題は既存の人材サービスだけでは太刀打ちできず、「無力感に近いものを覚えた」と当時を振り返ります。

さらに、医師不足は新潟だけではなく、震災の爪痕が残る東北でも深刻です。地域医療が抱える課題を目の当たりにする中で、「もっと根本的な仕組みを作らなければ、地域医療は守れない」と堀口さんは考えるようになります。

そんな時に出会ったのが、現在コルシーの代表契約医師であり循環器内科専門医の佐野宏和さんです。

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株式会社コルシー前で(左:佐野さん、右:堀口さん)

当時、佐野さんは、以前勤務していた病院から心電図の画像やデータを受け取り、遠隔で判読を行っていました。これは、佐野さんの退職で循環器専門医が不在となった病院からの提案をきっかけに始まった取り組みで、遠隔対応によって専門医不在の状況でも診療体制を支えていました。

「同じようなニーズは全国でたくさんあるのではないか」という佐野さんの話をヒントに、堀口さんは「デジタルとかけ合わせることで、より多くの医療機関を救う仕組みが作れる」と可能性を感じ、2018年に株式会社コルシーを創業しました。以来、「すべてのハートと専門医をつなぐ」というビジョンを掲げ、心電図の遠隔判読サービス「コルシー」を展開しています。

専門医と医療機関をつなぐ、クラウド型プラットフォーム

「コルシー」は、医療機関から送られてきた心電図データを循環器専門医が遠隔で判読し、所見を返却するサービスです。

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CORSHY(コルシー)サービスのイメージ(公式サイトより)

従来の心電図検査は紙運用が中心で、全体の約7割が紙ベースでした。そのため、医療現場では、医師の手書きの所見をデータ入力する手間や、専門医不在の医療機関では判読に時間がかかるなど、対応の遅れが課題となっていました。そこでコルシーは、紙の心電図をスキャンしてデータ化し、他のデータ形式で送られてきた心電図と共にクラウド上で一元管理。専門医がオンラインで迅速に判読できるプラットフォームを構築しました。

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コルシーの拠点の一つで、医療データ集約等を支えるメディカルラボ(群馬県高崎市)

これにより、心電図判読の専門知識などの限られた医療リソースを、専門医が常駐していない医療機関ともシェアできるようになりました。さらに、医師がオフィスに常駐する必要がなくなり、副業・留学・子育てなど、職務環境やライフステージに応じた柔軟な働き方を実現できるようになっています。
現在、契約医療機関は100以上、年間判読件数は50万件を超える規模に成長しています。
「登録している専門医は約20名です。この人数だけを見ると年間50万件という対応件数に対して、少なく感じるかもしれません。しかし、私たちは医師のリソースを最大限に活かせる仕組みを整えています。だからこそ、限られた人数でも効率的に対応し、専門医の力をより多くの人に届けることができるのです」と堀口さんは語ります。

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医師はタブレット等で心電図を判読し返信(写真は佐野さん)

次なる挑戦は「予防医療DX」

限られた医療リソースを地域全体でうまく循環させるため、現在堀口さんが構想しているのが「予防医療の充実」です。

十分な医療資源がない地域では、早期発見や健康維持の強化など、予防医療の価値は格段に高まります。

例えば、現在自治体が担う市民検診では、精密検査が必要な人を抽出し、受診を促すことにとどまっており、その後のフォロー体制は整っていません。こうした仕組みを構築するには,多くのリソースが必要になると想定され、自治体だけでは対応に限界があります。そこで、コルシーが持つデジタル活用のノウハウや知見を生かし、予防医療を発展させることで、地方における健康づくりを支えていきたいと考えています。

東北・新潟全体で、医師不足解消を加速させる

創業以来、コルシーは「目の前の医療機関の課題を確実に解決する」という姿勢を大切にしながら事業を進めてきました。医師不足や専門医の偏在といった課題に直面して困っている医療機関を、一つひとつ丁寧に支援していく―これは創業当初から変わらないコルシーの原点であり、これからも続けていくと強調します。

一方で、堀口さんには「このままでは医師不足の解消スピードが上がらない」という危機感もありました。

「しらみつぶしのように『点』を潰していくやり方では、スピード感は上がりません。もっと広い『面』として、東北・新潟全体で課題を解決していく仕組みをつくりたいと考えました」

具体的には、自治体・医師会・県などと協働し、地域一帯の医師不足を解決するモデルへと転換する必要性を感じていたのです。

とりわけ、東北・新潟は全国的にも医師不足が深刻な地域です。堀口さん自身も創業以来、新潟に深く関わり続けてきました。その経験から、新潟をはじめとする地域の課題を根本から解決したいという強い想いがあります。だからこそ、今回の地域共想プログラムへの参加には大きな意味を感じていると話します。

「コルシーは『インフラのようですね』と言っていただくことが増えてきましたが、まだまだ仕組み化しきれていない部分もあります。東北電力さんは、このエリアで長くインフラを支えてきた存在です。共に地域課題について考えながら、自分たちに足りない部分を学びたいです」

あなたにとっての「Think, Our Social…」とは?

堀口さんが目指すのは、「医師不足なく安心して暮らせる東北・新潟」の実現です。

東北・新潟には豊かな自然があり、食も文化も魅力にあふれています。堀口さん自身、アウトドアスポーツが好きで、雪山や四季の豊かさに強く惹かれているといいます。

さらに近年はリモートワークが定着し、働く場所を選ばず都市部と同じように仕事を続けられる人も増えてきました。地方でも仕事と生活の両立がしやすくなり、暮らしやすさは、むしろ向上しているともいえる状況です。

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新潟の経営者仲間とウィンタースポーツを楽しむ堀口さん(写真中央)

堀口さんは、「地域を支える最後の鍵は医療だ」と強調します。医療への不安がなく、誰もが安心して暮らせる地域社会―それが堀口さんの考える「Our Social」です。

「医療の不安を取り除ければ、地域の未来は明るいと思うんです。暮らす場所にかかわらず、より安心して暮らせる可能性が広がるわけですから。そんな未来を後押しするような存在を目指したいです」

医療DXで、あなたなら誰のために何を変えますか?

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Profile
株式会社コルシー 代表取締役社長
堀口 航平
活動拠点:新潟県新潟市・群馬県前橋市
 
実現したい未来
医師不足なく安心して暮らせる東北・新潟
 
事業概要
専門医の知見をクラウドで地域医療へ届け、医師不足地域でも精度の高い診断体制を整備し、誰もが安心して医療を受けられる環境をつくっていく。
 
※本インタビューは、2025年11月に行いました。


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