【採択者インタビューvol.1】エンタメ共創の仕組化で地域課題解決へ 東北発キャラクター「東北ずん子・ずんだもん」の軌跡
- 社会課題に挑む採択者8団体のストーリーを、シリーズでお届けする「採択者インタビュー」。事業の背景、描く未来、そしてプログラムコンセプトである「Think,Our Social」への想い―それぞれの挑戦のかたちをお届けしていきます-
第1段は、東北発キャラクター「東北ずん子・ずんだもん」を生み出したSSS合同会社の挑戦です。「東北の企業であれば無料で商用利用が可能」という、前例のない仕組みから生まれたキャラクター「東北ずん子」と「ずんだもん」。今では全国、そして海外にまでファンが広がり、イラストや動画など多様な創作活動を通して人と人をつないでいます。この仕組みをつくったのは、SSS合同会社の代表・小田恭央(おだ やすお)さん。震災やコロナ禍といった困難な時期にも、「エンタメの力で地域を元気にしたい」という想いを胸に、活動を続けてきました。そして今、プロジェクトは地域とともに、さらに一歩先のステージへ。「地域共想プログラム」を通じて、小田さんが描く東北の未来について伺いました。
東北発キャラクター誕生の背景
大手IT企業に勤務し、ITコンサルティングやコンテンツ制作に長く携わってきた小田さんは、これまでの経験と知見をもとに「キャラクタービジネスをつくろう」と、SSS合同会社の立ち上げを決意。2011年1月、東京で会社を設立しました。
ところがそのわずか2ヶ月後、東日本大震災が発生します。大阪出身の小田さんは阪神淡路大震災の経験から、「東北のために何かできないか」と当初制作予定だったキャラクターの方向性を転換。「東北ずん子」が生まれました。
プロジェクト立ち上げ当時を振り返り、小田さんはこう語ります。
「震災のような大きなできごとが起こると、どうしても気分が暗くなります。それを、エンタメの力で元気にしたいと思ったんです」
キャラクターを自由に使える仕組み
「東北ずん子」とは、東北の企業であれば無料で商用利用できるキャラクターです。公式サイトでは、イラストなどの素材を誰でも自由に使えるように配布しています。
当初は「東北ずん子」だけのプロジェクトでしたが、その後キャラクターはどんどん増えていきました。「ずん子」とあわせ、東北3姉妹と呼ばれる「東北イタコ」「東北きりたん」など別のキャラクターも誕生。キャラクター素材の開発、アニメや漫画などのコンテンツ制作、ライセンス営業、ポップアップショップでのグッズ販売と幅広く展開していきました。やがて黒字化したのをきっかけに、「もっと東北に貢献しよう」と本社を仙台市へ移転します。
コロナ禍を機に進化した「ずんだもん」
順調に事業が拡大していた2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により緊急事態宣言が発令されました。動画配信サイトで人気となった「ずんだもん」の“人型モデル版”が誕生したのは、ちょうどそのタイミングです。
ステイホームが叫ばれるなか、「家の中で誰でも遊べるコンテンツをつくろう」という話が社内で立ち上がりました。もともとずんだ餅をモチーフとしたマスコットキャラクターだった「ずんだもん」に人型のモデルを追加したことで、無料の音声合成ソフトが登場しました。「震災に続いてコロナ。大きなできごとがあるたびに『エンタメとして何ができるか』を考えてきました」と小田さんは話します。
「ずんだもん」もその他のキャラクターと同様に、東北の企業であれば無料で商用利用が可能です。さらにもう一つの特徴として、個人のクリエイターであれば東北在住でなくても、非商用利用に限り無料で使うことができます(その他のキャラクターも同様)。動画配信サイトなどでの広告収入も容認しており、これによって「ずんだもん」は多くの創作活動に使われるようになりました。(プロジェクト実績の引用元はこちら)
信頼と共創による、持続可能な運営の仕組み
ここまで「公式で自由に」使える運営にしている背景には、利益を追うよりもキャラクターを通して地域に元気を届け続けたいという小田さんの想いがあります。
キャラクターが長く生き、愛され続けるためには、持続可能な土台づくりが欠かせません。小田さんはあえて会社を大きくせず、少人数で運営を続けています。現在のスタッフ数は小田さんを含めて4名。限られた体制で運営するため、利用申請のチェックなどに多くのコストをかけることはできません。
そこで、利用方法を明記したガイドラインを整え、利用者自身が内容を確認したうえで自由に使える仕組みを採用。ガイドラインに抵触する事例にはファンが通報できる仕組みを設け、信頼と共創によって支えられる運営体制を築いています。
誰かが許可を出して管理するのではなく、利用者が自らの判断で楽しみながら「勝手に」キャラクターを広めていく。そうした自発的でゆるやかな広がりこそが、小田さんの理想とするかたちであり、地域活性化の最適解なのです。
東北をクリエイティブの聖地に
「東北は今、クリエイティブの新たな聖地になりつつあります」と小田さんは語ります。
その背景にあるのが、地域の人々の遊び心です。宮城県白石市では地元有志が「東北ずん子スタンプラリー」を企画し、2013年以降、不定期で開催を続けてきました。今では「東北ずん子の聖地」と呼ばれるまでになり、2025年の第15回では1,600人超が参加し、過去最多を更新しました。(詳しくはこちら)
地域がアニメや漫画の舞台になることはありますが、「聖地」の多くは偶然の産物であり、狙ってつくることは難しいかもしれません。
しかし「ずん子」をはじめとするSSSのキャラクターなら、地域の人々が自らの手で「聖地」を生み出すことができます。これこそが「ずん子」や「ずんだもん」、そして東北の持つ大きな強みです。
キャラクターを通して東北のあちこちで「楽しそうな場所」が生まれ、人が集まり、新しい文化が育っていく。そんな未来が、少しずつ形になりつつあります。
経済産業省によると、コンテンツ産業は海外需要を取り込む鍵として注目されています。日本発コンテンツの海外売上はこの10年で約3倍に拡大。2023年には約5.8兆円に達し、自動車に次ぐ規模となりました。
「今後もこの分野は伸びていくと思います。だからこそ、東京だけが盛り上がるのではなく、東北でもしっかりと産業の土台をつくっていく必要があります」と小田さん。
コンテンツ産業は設備投資より人の力が中心で、クリエイターやデザイナーなど、地域に新しい雇用を生み出しやすいという特徴があります。小田さんは、東北でもこの分野を産業として根づかせ、雇用が生まれる規模へ育てていきたいと考えています。
あなたにとっての「Think, Our Social…」とは?
地域共想プログラムに応募したのは、「より多くの人にキャラクターを活用してもらうきっかけになる」と感じたから。
小田さんが描くのは、「世界中の人が『東北ずん子』『ずんだもん』ファンになり、東北に興味を持って遊びに来る」未来です。
「私たちができるのは、キャラクターを好きになってもらうところまで。そこから先は、各地域の人たちが自由に動いてくれたらいいと思っています」
「この指とまれ」の感覚で、やりたい人が集まって、面白がり、楽しみながら活動する。その輪が広がることで、東北に新たな流れが生まれていく。
小田さんの考える「Our Social」とは、誰かが主導するのではなく、人々の想いや創意が自然に広がっていく社会です。
「プロジェクトをここまで続けられたのは、応援してくださる皆さんのおかげです。動画をつくる人、イラストを描く人、音楽をつくる人、地域でキャラクターを活用する人、そして作品を見て楽しんでくれる人。そのすべてが支えになっています。これからも、誰もが自由に使えるキャラクターとして、東北ずん子やずんだもんが生き続けられる環境を守っていきたいと思っているので、応援よろしくお願いします」
あなたも、「東北ずん子」や「ずんだもん」と一緒に、東北を盛り上げる仲間になりませんか?
Profile
SSS合同会社 CEO
小田 恭央
活動拠点:宮城県仙台市
実現したい未来
世界中の人が「東北ずん子」「ずんだもん」ファンになり、東北に興味を持って遊びに来る
事業概要
東北応援キャラクター「東北ずん子」「ずんだもん」を起点に国内外の創作活動を促し、認知を広げる。企業に商用無料で提供し、東北の文化振興と経済活性化につなぐ。
※本インタビューは、2025年11月に行いました。




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