「いち、に、さん、し」。広々とした校庭で準備体操する子供たちの声が山あいの集落に響く。地方の学校らしい雰囲気だが、もうすぐこの光景は見納めとなる。愛媛県の最南端に位置する愛南(あいなん)町の「高知県宿毛(すくも)市愛媛県南宇和郡愛南町篠山(ささやま)小中学校組合立篠山小・中学校」は日本一名前が長い学校だ。
校区は2つの県にまたがり、小学生3人、中学生6人の計9人が通う。毎日の給食をはじめ、文化祭や運動会などのイベントは小中合同で行われている。
校舎のそばを流れる篠川が県境で、地区同士の交流も盛んだったため、両県の児童・生徒が通えるように学校組合が作られた。昭和24年に中学校、27年には小学校が開校。当時の校名は「高知県幡多郡宿毛町愛媛県南宇和郡一本松村篠山小中学校組合立篠山小・中学校」で現在よりもさらに長かったという。その後、改称を繰り返し、平成16年に現在の校名となった。
ピーク時の児童・生徒数は小中学校合わせて約300人ほどだったが、過疎化や少子化の影響で入学者が減少。今年度末で休校し、来年度末で閉校することが決まっている。
卒業生の一人、国松正人さん(65)は「父から孫まで4代通っていました。閉校で地域が寂れてしまうかもしれないが、時代の流れなので仕方ない」と語った。
「閉校の話を聞いたときはびっくりしました」と話すのは生徒会長を務める中学3年生の岡崎心愛(みあ)さん(14)。学校生活を振り返り「少人数ですが、校舎がきれいでみんな仲が良い、私の自慢の学校です」と話した。また、課外活動などを通して他校や地域との交流も盛んだという。
学校関係者によると新学期からは近隣の愛南町立一本松小、同中学校に通うことになる。学校施設の今後に関しては協議中だという。
児童・生徒同士が助け合い、地域と学校が一緒に子供たちを見守り、育てる。かつて日本のいたるところで見られた姿がそこにあった。(写真報道局 鴨志田拓海)
鴨志田拓海
東京写真報道局記者。東京都生まれ、茨城県出身。令和3年入社、ニュース担当。ローカル鉄道の取り組みなどを追った写真で2024年東京写真記者協会企画部門賞を受賞。趣味はドライブ。