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J/53  作者: 池金啓太
三十話「その仮面の奥底で」

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悪魔への耐性

「中佐が言っていることはもっともよ、もしあんたの悪魔が攻撃されて、怒り狂ったらあんた止められるわけ?こっちは余計な面倒はごめんよ」


「この子の言う通りです、何よりここでしっかり味方であると認識してもらったほうがいいでしょう、妙な我儘はやめてくださいボス」


片方は直接の上司として命令をしているのに対し、片方は部下という立場から二人を嗜めている


ここまで息が合っているのもなんだか妙な光景だが、少なくともこの状態になった二人が相手では普段の静希でもまともに口喧嘩で勝てる気がしない


「いやでも鏡花、こんなたくさんの人間に姿をさらしたらそれこそ面倒なことに」


「そんなものはあんたが勝手に片付けなさい、私が関わっている間は余計な面倒を起こさないで」


要するに鏡花は自分の目の届くところで面倒を起こすなと言っているのだ、鏡花らしい、いや城島にも似た言い分である


問題は自分の見ていないところで起こして、なおかつ勝手に解決しておけという事だ、何とも静希の上司らしいお言葉である


「カレン、今回に関しては悪魔の姿を現すことにメリットはないよ、可能な限り姿は隠しておきたいんだ」


「姿を見せるだけで信用が得られるのであればそれでいいではありませんか、手を出してきたならそれ相応の始末をつければいいだけのこと、今回は協力しているのです、そのあたりをご理解ください」


カレンもカレンでずいぶん押せ押せな説得をしている、完全に部下としての対応をとっているために冷静でありながら圧力がものすごい


普段からしてカレンの方がエドよりも積極性や主張が強いが、部下としての姿だと有能秘書のようなたたずまいになる


見ている分には面白いのだが、少なくともあのような秘書が欲しいとは思えなかった


「ほら、時間もないんだからさっさと見せちゃいなさいよ、へるもんでもなし」


「ボス、時間がありません、お急ぎください」


鏡花とカレンに追い詰められる静希とエドは思い切りしかめっ面をした後で同時にため息をつく


この二人に強く言われては断ることができないのだ


「あんたも苦労してるみたいだな」


「・・・君もね」


このように同じような職場体系であると見せることで静希とエドに共通点を作り、少しだけ仲良くなるきっかけができたと軍の人間にアピールができた


その代わりに悪魔の姿を露見させる必要ができてしまったが、これはある意味必要経費だ


軍に自分たちの存在を正確にアピールするためには悪魔の存在を見せつけるしかない


さらに言えば、自分たちでしか悪魔をコントロールできないという光景を見せつけることができればなおよい


だからこそ、静希は事前に悪魔を含めた全員にこういっておいたのだ


全力で威圧しろと


静希とエドが悪魔をそれぞれその場に出すと、瞬間的に空気が重くなる、いや張りつめていくと言ったほうが正しいだろうか


軍全体に向けて放たれる強烈な殺気、今まで悪魔に慣れ親しんだ鏡花たちで僅かに冷や汗を流すほどのそれに悪魔などという存在に慣れていない軍人たちが耐えられるはずもなかった


中には立っていることもできなくなるものもいる始末、その中で静希とエドは堂々とその場に立っていた


静希のそばに浮くメフィは静希の首に腕を回しながらその場にいる軍人たちに強い殺気を放ち続けている


以前手を抜いた状態で静希達と対峙したそれとは圧倒的に違う、本気の殺意を向けていた


エドのそばに立つヴァラファールは牙をむいた状態でその場全員に威嚇を放っている


上級悪魔という、存在としての格が違うものが二人、同時に強烈な殺気を放っているのだ、普通の人間が耐えられるはずもない


かつて悪魔と接触し戦闘経験のあるラルフでさえ、脚が竦んで完全に動けなくなってしまっていた


「・・・で?姿を見せたわけですが・・・これで満足ですか中佐」


「人見知りなもので、できるのならさっさと戻してやりたいのだけれど?」


静希とエドの言葉にラルフは言葉を出すこともできずにその場で何度も首を縦に振る


恐らく彼がかつて対峙した悪魔とは格が違う存在を味方につけているようだ、そう言う意味では静希達は運がいい、いや運が悪いというべきか


「全員さっきの奴の姿は目に焼き付けたな?もし俺の悪魔に手を出してみろ、たとえそれが誤射だったとしても、然るべき報いを受けさせるからな」


静希は満面の邪笑を浮かべ、軍人たちを圧倒する、それに対しエドは少し申し訳なさそうに笑っている


「僕の悪魔は気性が荒くてね、もし誤射なんてされようものなら・・・僕でも止めることはできない・・・その場合はもういろいろ諦めてくれると助かるよ」


いろいろ


その言葉の中に一体どれほどの意味が含まれるのか、やんわりとした口調でエドは軍を威圧していく


静希は静希で、エドはエドで、自らの悪魔の為を思って軍に全力で牽制している


もし自分の契約する悪魔に何かあっては事だ、それをさせないために静希はわざわざ全力で威圧させたのだ


その効果はどうやら抜群のようだ、少なくともこの場に静希達の敵に回ろうとする人間はもういないだろう


静希とエドがそれぞれ悪魔をしまうと明らかに恐慌状態に近かった軍人たちは徐々にではあるが平静を取り戻しつつあった


『随分と情けない軍隊だこと、ちょっと威圧しただけであの様なんて』


『お前の威圧って実は初めて食らった気がするぞ・・・結構強いのな』


『あら、それにしては全然平気そうじゃない?さすが私の契約者だわ』


静希だけではない、メフィのことを良く知っている人間は彼女の威圧に関してはかなり強い耐性を持っていたようで多少驚いた程度で済んでいるらしかった


特に明利やアイナ、レイシャなどはほとんど動じていない、契約者でもない彼女たちが全く動じていないのも、偏に悪魔と過ごした時間の違いというものだろう


契約者以外で、この中でもっとも悪魔と過ごした時間が長いのは恐らく明利、アイナ、レイシャの三人の中の誰かだろう


アイナとレイシャは日々日常的にヴァラファールやオロバスと一緒に行動したり訓練したりする、明利は静希の家に入り浸っており、過ごした時間はかなり長くなっている


いい傾向であるとは言えなかったが、先程のような圧力をかけられても平然としていられるのはこの状況ではかなりありがたい


「中佐、悪魔に対しての有効な手段をとることが・・・とかおっしゃっていましたが・・・この様でも同じようなことが言えますか?」


静希の言葉にラルフは口を噤む以外のことができずにいた、大口をたたいておきながら部隊はほぼ半壊に近い、ただ威圧感を与えただけでこれだ、実際に攻撃を受けようものならまず間違いなく部隊は瓦解していただろう


「まぁ、ある程度予想はできていましたけどね・・・この程度でビビるようでは実戦ではお話にならない・・・」


ある程度までは予測できていた、今まで悪魔と対峙した人間の反応というのは二つに分かれる


怯えても立ち上がれる人種と怯えて竦んでしまう人種、今の軍を見てもそれは明らかだ


静希達も、恐らく今の圧力を一年以上前のあの時にぶつけられたら、きっと体が竦んで動かなくなっていただろう


いきなりこれだけの圧力を向けられて平気で居ろという方が無理なのである

蛇に睨まれた蛙ではないが、圧倒的強者を前にすると体が硬直してしまうものだ、それは生き物として当然の反応で、責めるべきことではない


「その点ミスターパークス、俺はどうやら貴方に・・・いや彼女たちに謝罪しなければならないようだ、悪魔の圧力にあの二人は全く動じていない、素晴らしい胆力だ、貴方の言う通り彼女たちは俺が思っているよりもずっと優秀であるらしい」


静希の言葉にアイナとレイシャは嬉しそうに胸を張る、その言葉を聞いてエドとカレンは誇らしそうにした後、小さく咳払いをする


「いやいや、それはこちらも同じこと、ただの学生でありながら悪魔の圧力を前にして平然としている、この場に連れてくるに値するだけの実力者というわけだね・・・こちらも非礼をわびよう、すまなかった」


互いに連れてきたチームメイトを褒めると同時に軽く握手を交わす、少なくとも自分たちの戦いについてくることができるだけの人間であるという、同格の存在であるという認識と同時に、それだけの危険人物であるという認識を持ってそれ相応の警戒を持ちながらも、この場では握手を交わす


今回に限り、こいつは使える存在だ、それなら手駒として近くにおいておいた方が後々楽になる、だからこそここは仲良くしておこう


外見上はそう言うやり取りだ、もっとも内心ではこの状況に持って行けたことに二人とも強い安堵を感じていた


ただでさえ面倒な状況であるというのに、普段から協力関係にあるのに協力できないなど面倒以外の何物でもない


だがこれでようやくまともに協力しても何の不思議もない状況を作ることができた


後は残ったこの軍に対してどのようなアプローチをかけるかである


「中佐、この結果を見る限り、貴方たちの部隊は悪魔の契約者に対しての戦闘では戦力としてカウントしない方がいいでしょうか、明らかにこれでは役に立ちそうもない」


「・・・確かに、近接戦闘では正直役に立てそうもない、だがやりようはある」


ラルフの反応に静希は内心ほくそ笑む


上手く乗ってくれた、静希の思惑通りに


「ならば中距離、あるいは遠距離だけの援護に徹してくれるとこちらは助かります、巻き込まなくて済みますしね、あとは索敵と起点の捜索と住民の避難を行ってくれさえすれば文句は言いません」


悪魔の戦闘において最も懸念するべき内容は、軍の人間が邪魔をする可能性だ、今回のことで静希達、というよりメフィ達に対する妨害はほぼなくなったと言ってもいい


遠距離からの攻撃であればこちらもある程度反応できる、その分相手にも反応されてしまうだろうが、軍の攻撃などは最初からあまり期待はしていない


足止め、あるいは相手の選択肢を少し削ってくれれば御の字程度にしか思っていなかった


静希達が何の心配もすることなく戦えるだけの条件はそろった


悪魔の存在に加えエドとの関係、さらに鏡花たちが一緒にいても何も不思議ではない状況は作り出した


軍の人間が静希達に手を出さないように釘は刺した、戦闘時に余計な手を加えないように注意もした、軍の人間において上官の命令は絶対、ラルフをしっかりと脅しておくことでそれも回避できる


何より自分の部下を無駄に危険に晒せないというラルフの軍人としての優秀さがここで際立ってくる、恐らく静希達が戦闘している間は半径数百メートルの中に部隊を配置することさえ躊躇うはずである


仲間の状態もよし、外野の排除もよし、協力の態勢もよし、後は行動を待つだけである











部隊の人間がまともに動けるようになるまで、およそ十分近くかかり、ラルフの号令と共に全員が街へと移動していく


すでに先遣隊として何個かの部隊が明利の種をまき終え、見回りという形で巡回しているようだったが、これからは本格的な軍の行動が主になる


転移能力者により街の外と街の中の二つの入り口から一斉に部隊を派遣する中、静希達もそれに紛れて行動開始していた


静希たちは仮面をつけ、無線を装備しいつでもエド達とやり取りができるようにしていた


部隊の人間が街の四方八方に分かれていく中、静希達は街のほぼ中央に位置する場所で周囲を見渡していた


「ひとまずここで待機するの?」


「あぁ、明利は街に異常があったらすぐに知らせてくれ、特に仮面をつけてる奴とかがいたら即連絡だ」


静希達の近くには約二名の通信要員が待機していた、もし仮面をつけた人間を発見することができたらすぐにその場所に軍人を向かわせることができるように


明利は地図を眺めながら常に索敵を続けている、市民にはあらかじめ退避するように勧告は出していたようだが、それに従っている人々はようやく半分程度といったところだろうか


街の一角ならまだしも、街そのものから一時的にとはいえ退避するとなるとそれに従わないものも出てくる


急に街から退避しろと言われても従わない人間がいるのも仕方がないだろう、街の中に職場がある人間だっているのだ


以前の召喚実験のようにかなり前から布告することができなかったのが悔やまれる


『シズキ、もし悪魔が出た場合、僕たちはどう動くべきかな』


無線の向こう側から日本語でエドの声が聞こえてくる


エドたちは静希達とほぼ同じ場所、建物を挟んで向こう側の通りに配置している


両者が同時に動いても十分連携がとれる距離だ、不意打ちを受けない限りまず確実に多対一の状態に持ち込める状態である


「とりあえず俺たちは現場に急行する、鏡花たちは明利のナビに従って移動を開始して俺たちの援護だ・・・カレンは召喚陣が確認できたらそっちを優先してくれ」


『了解したよ・・・今もカレンが未来を見せてもらっているみたいだ・・・今の状況からどんな風に変化してるのか・・・まだ確定した未来は見えていないようだけど』


カレンの契約する悪魔、オロバスの予知能力で近い未来を見てもなお確定しない未来がいくつかある


戦闘が行われるのか、それとも戦闘をせずにこの場を切り抜けることができるのか、場合によっては街そのものを巻き込んだかなり大規模な戦闘になることも十分考えられる


『メフィ、お前は悪魔との対峙を、邪薙は周囲の建物や人への被害を可能な限り抑えてくれ、できるか?』


『了解よ、もし戦闘になったら任せておきなさい』


『任されよう、相手の格にもよるだろうが・・・全力を尽くそう』


メフィに比べ邪薙はかなりランクが下の人外だ、それこそ上級悪魔の攻撃などは数発までしか防ぐことはできない


メフィは大まかな攻撃を相殺し、討ち漏らしを邪薙が防ぐ、一対一ならこれが限界になるかもしれないが、今回は二人いるのだ、十分に相手をすることはできる


『ミスターイガラシ、私達はどのように動けば』


『私達でもお役に立てるでしょうか』


無線の向こうから聞こえてくるアイナとレイシャの言葉に静希は薄く笑みを浮かべる


「あぁ、お前達は鏡花たちと一緒に行動してくれ、二人の能力なら鏡花の助けになれるはずだ、どう行動すればいいかは、俺より鏡花の方がしっかり考えてあると思うぞ」


お前らは優秀だ、頑張れよと静希が無線の向こうにいるアイナとレイシャにそう言うと二人はその言葉が嬉しかったのか了解ですと元気よく返事をして見せた


とはいえ静希達の戦闘に巻き込まないようにある程度の配慮は必要だろう、どのような結果になるかはさておき今から警戒しておいて損はない


「ねぇ静希、明利、悪魔の気配とかは感じ取れないの?」


「これだけ人がいる上に・・・魔素の動きが激しいからな・・・正直自信ない・・・近くにいるエドたちのはちゃんとわかるんだけどな・・・」


すぐ近く、恐らく数十メートル程度しか離れていないエドから放たれるヴァラファールの気配は問題なく感じ取れる


だがそれ以上遠くの気配となると静希は自信がなかった


なにせ日中で人も多すぎる上に魔素が奇妙な動きをしているために感覚が若干阻害されているのだ


明利は索敵に集中しているためにそんなことに気を払っていられる余裕もない、索敵部隊との接敵を待つくらいしかできることはなかった


「せめて魔素の流れとか・・・その魔素の出入り口くらいがわかればいいんだけどね・・・」


魔素の流れ、あるいはその出入口


確かにそんなものがわかれば召喚陣の場所はすぐにわかるだろう、カレンの言葉通りなら召喚陣に魔素を取り込み、召喚陣から魔素が噴き出ることになるのだから


だが魔素計測機における計測があまりにも雑なためか、それともそこまで精密な計測ができないのか、現状ではこの範囲にその変化が起こっているという事しかわからない


『シズキ、一ついいでしょうか』


『・・・ん?どうした?』


トランプの中から語り掛けてきたのはウンディーネだった、精霊である彼女がこういう状況で話しかけてくるのは珍しい


『私を一度外に出してはいただけませんか?もしかしたらお役に立てるかもしれません』


その言葉に静希は一瞬眉をひそめる、なにせ精霊を外に出すというだけで近くの誰かしらに見られるかもしれないのだ、あまり他の人間に静希が複数人外を連れているという事を知らしめたくはない


誤字報告を五件分受けたので1.5回分投稿


最近別の小説を並行で書き始めているのですが・・・難しい、新しいものになると全く異なるもんですね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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