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J/53  作者: 池金啓太
三十話「その仮面の奥底で」

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危険な才能

「君が仮面を脱ぎたいというのであればそうすればいい、理由は何でもいい、自分の為でも男の為でも仕事の為でも、掟では君は縛れない」


「・・・はい、ありがとうございます」


自分の村にいなかったエルフからの助言に石動は頭を下げて感謝していた


何とも堅苦しいと思っていたのだが、これも石動らしいと思いつつ、食事を続けていると石動が思い出したように明利に目を向けた


「そう言えば幹原、イーロンが寂しそうにしていたぞ、顔くらい見せてやったらどうだ?」


「本当に?今どこにいるの?」


「今は城島女史が預かっている、食事が終わったら顔を見せに行ってやれ」


昨日今日と明利に巻き付いていないということでイーロンは妙にそわそわしているらしい


一時期とはいえ親代わりになっていた明利が急にいなくなるというのは彼女としても寂しいのだろう


城島が預かってくれているという事で問題行動は起こさないだろうが、今後が心配になる


たった二日いなくなっただけでそわそわするというのはどうなのだろうか、土日は割り切っているらしいのだが平日はまだまだ親離れは無理のようだった


「それじゃあ後で様子見に行くよ、今日はこの後学校からでちゃうからそこまでいっしょにはいられないけど・・・」


この後は学外に出ていろいろと案内しなくてはならない、それを考えると長時間は一緒にいられないが少しでも顔を見せれば安心するかもしれない


動物の子供というのはなかなか手間がかかるなと思っていると、エドが小声で話しかけてくる


「・・・そう言えばシズキが何か飼っていると言っていたけど、今メーリが話しているのがその動物なのかい?」


「あぁ、この学校で飼ってるんだ、なんなら見ていくか?びっくりするぞ?」


静希の言葉にエドは何を言っているんだいと鼻で笑う


「僕は世界中いろんなところに行っていろんな動物を見て来たんだよ?今さら学校で飼えるレベルの動物では驚かないさ」


さすがに自分の中に蓄積された経験に自信があるのか、エドは胸を張って自信ありげに鼻を鳴らしているが、その自信がいつまで保っていられるか見ものである


なにせ今学校で飼っているのはただの動物ではないのだ


奇形種、しかも完全奇形だ、場所によっては即射殺もあり得るような危険な動物である


そんなものを学校で飼っているというのも奇妙なものだが、今のところ生徒にも教師にも順調に懐いているようで何よりだ


この前校長に巻き付いているのを見た時にはさすがに肝が冷えたが、校長も案外イーロンのことを気に入っているようだった


なんでもイーロンの飼育小屋の出費には校長のポケットマネーも含まれるのだとか、私財を投じてまでイーロンの生活環境を改善するというのは教師としてどうなのだろうかと思うのだが、気に入ってくれているのであれば何よりである


無論生徒や教師の中には爬虫類が苦手な人もおり、イーロンを見るたびに逃げ惑っている、イーロンはそんな人の様子を見ると面白がるのだが、怯えている本人たちからすればたまったものではない


たまに生徒たちが面白がって教師相手にイーロンを差し向けようとしている時があるのだが、今まで見たこともないほどの俊敏さで逃走されたらしい


イーロンのいる生活はすでに日常になっている、後は彼女がどれだけ成長するのかという問題を抱えているくらいである


「ミスターイガラシ、飼っているのはどんな動物ですか?」


「可愛いですか?それともかっこいいですか?」


アイナとレイシャの質問に静希はどう答えたものかと悩んでしまう、なにせギリギリまで内緒にしておきたいのだ


エドには爬虫類系だと教えているが、この二人が知っているかは微妙である


「一応格好いいかな・・・?いや可愛い系なのかな・・・俺あいつに嫌われてるからあんまりわからん」


「へぇ、嫌われてるんだ・・・あぁ、だからこの前あんな事聞いてきたんだね」


あんな事とは悪魔の契約者の副作用についての事である、悪魔と一緒にいる事で動物に嫌われることはあり得るかとエドに聞いたことがあるのだ


結局静希がイーロンに嫌われているのは悪魔などは関係なく、ただ単に彼女の好みの問題としか言いようがない


「意外だよ、シズキはそう言うのは気にしないと思ってたんだけどね」


「別に嫌われても問題はないけどさ・・・生まれた時から見てるのに何で俺だけ嫌われるのかわからないんだよ」


「あんたが危険人物だからでしょ?」


鏡花の指摘に静希はそんなことはと否定しようとするのだが、静希自身自分が危険人物であるという自覚があるために否定できなかった


「ハハハ、危険人物が嫌われるなら僕やカレンも嫌われるかもね、一応危険人物だし」


「・・・いやぁ・・・どうでしょう・・・エドモンドさんって人よさそうですし・・・」


悪魔の契約者という意味ではエドもカレンも静希と同様危険人物という事になるのだろうが、静希と違ってエドとカレンは性格的に問題はない


静希の攻撃的過ぎる性格とは真逆と言ってもいい人の好さを持つエドと、危うさを持ちながらも家族想いなカレン、危険な性格をしているとは思えなかった


イーロンに嫌われるかどうかはさておき、鏡花にとっては静希並の危険人物は城島位しか思い当たらない、だが彼女は逆にイーロンに気に入られている

やはり好みというのが一番の理由なのだろうと鏡花は勝手に解釈していた






食事を終えた静希達はエドたちを連れてイーロンを巻き付けた城島がいるであろう職員室へやってきていた


ノックしてから中に入ると、やはりというかイーロンを首に巻き付けた状態で昼食をとっている城島を発見する


そしてイーロンはいち早く明利に気付き、城島の体からするすると離脱すると明利の下へと足早にやってきた


「イーロン、元気だね、体調もよさそう」


「・・・なんだ幹原か・・・そいつに会いに来たのか」


唐突に巻き付いていた重みがなくなったことで体が軽くなったのか、城島は首を鳴らしながらため息をついている


中々大きくなってきたイーロンを乗せるのも疲れるようだ、特に城島はイーロンに気に入られている、比較的巻き付かれている時間が多いのかもしれない


待ってましたと言わんばかりに明利に巻き付くイーロンは、体を揺らしてリズムをとっている、まるで機嫌のよさを体で表しているようだった、随分と妙な行動をとるようになったなと思っていると、その様子を眺めていたエドは驚愕に目を見開いていた


「し、シズキ、この子がイーロンかい?」


「そうだよ、本名スィー・イーロン、この学校で飼育してる動物だ」


俺は嫌われてるけどなと付け足す中、エドは明利に巻き付いているイーロンをまじまじと観察する


そして感心しながら何度も頷いてすごいなぁと呟いていた


「さすが日本・・・まさか学校でドラゴンを飼育しているとは・・・久しぶりに思い出したよ・・・日本はクレイジーだって」


どうやらイーロンの見た目から彼女がドラゴンであると信じて疑わないようだった、一緒に見ているカレンやアイナ、レイシャ、そしてセラまでもイーロンがドラゴンであると思っているようだ


確かにイーロンの外見はドラゴンのそれに近い、というかまさにそのものと言っていい、外人組が見間違うのも仕方のないことだろう


「・・・いやエド、こいつは別にドラゴンじゃないぞ?ただの完全奇形だ」


「なんだって!?完全奇形!?ならなおさらクレイジーじゃないか!あんなものを飼育するなんて・・・頭のネジが数本吹き飛んでるとしか思えないよ!」


どうやらエドも昔完全奇形というものにあったことがあるのだろうか、その危険性は十分理解しているようだった


今まで静希が接触したことのある完全奇形は二体、そのどちらも巨大な外見をしていた、そして仕留めるのにかなり苦労した覚えがある


一回目はザリガニ、二回目はトカゲ


どちらも巨大で厄介な能力を持っていた、その危険性は静希も十分に理解できる、エドがクレイジーというのもなんとなく理解できる


「というかシズキ、メーリは巻き付かれているけど大丈夫なのかい?」


「あぁ平気だよ、明利はイーロンの親代わりだったからな」


親代わり、その言葉にエドは再び驚愕の表情を作る


いかにも小動物のような明利と、危険な生き物の代名詞ともなっている完全奇形、そんな両者が疑似的にとはいえ親子の関係を築いているという事に驚いているようだった


「・・・僕は今までメーリのことは無害な子だと思っていたんだけど・・・認識を改めなきゃいけないかもしれないね・・・」


「・・・あれ?ひょっとして私危険人物認定された?」


イーロンと戯れ、アイナやレイシャ、セラたちにイーロンを触らせている中、いつの間にか無害ではないと思われたことで明利は若干動揺していた


ただ一緒にいるだけなのになぜ危険判定が下されたのかと、明利は目を白黒させていた


「いやメーリ、君は自分の才能に気付いた方がいい、見てくれよ、君の周りにいるのは良くも悪くも危険人物ばっかりじゃないか、もしかしたら君は危険なものに好かれる才能を持っているのかもしれないよ」


「そ・・・そうだったの!?」


「・・・あー・・・そう言えば明利の周りって危ない人多いわよね」


「鏡花ちゃん!?否定してよ!」


エドの言葉に静希はそう言えばと思い返す、確かに静希達の周辺には基本危険人物が多いが、その中で唯一と言っていいほど無害だったのは明利だ


そして確かにエドの言うように明利は危険人物に好かれているような気がする、静希や雪奈然り、イーロンやメフィ達然り


「そうかぁ・・・私はずっと静希が面倒を引き込んでるんだと思ってたけど・・実際は明利が呼び寄せてたのね?」


「そ、そんなぁ!私そんなことしてないよ!」


「それだけイーロンに好かれてるのを見ると説得力に欠けるのよねぇ・・・」


明利としては何の自覚もないことなのだが、確かに明利は危ない存在に好かれる傾向にある、鏡花のいう事もあながち理がないわけではないのだ


無論証拠など何もない暴論に近いが、妙な説得力があるのは確かである


思えば喜吉学園において鏡花が最初に話したのも明利だ、危険人物を引き寄せるという意味で言うなら、明利こそがすべての元凶なのかもしれない


明利の周りにいる危険人物を列挙するとその壮絶さがわかる、静希、陽太、鏡花、雪奈、実月、メフィ、邪薙、オルビア、エド、カレン、その他もろもろ


静希を経由して知り合った人物ももちろんいるが、その中で唯一無害というのは確かに不可思議な点だ、これで全員危険人物ならまだ類は友を呼ぶで片が付く


明利の意外な才能に静希達は目から鱗が落ちる気分だった


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