誤訳され起訴の女性「元の生活は戻らない」 司法通訳、乏しい担い手

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平川仁
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 一つの言葉が、人生を変える。その重みを背負う人たちがいる。

 2021年11月中旬、三重県松阪市の朝は肌寒かった。フィリピン国籍のオクイ・ローズメリー・アロチャさん(45)が、息子(当時11)に朝食を作り、出勤しようとアパートのドアを開けると、突然、10人ほどの警察官に囲まれた。

 「覚醒剤」「営利目的譲渡」。実家を支えるために17歳で来日し、ダンサーや工場作業員として働いてきた身に、聞き慣れない言葉が続く。覚醒剤を知人に売ったという、身に覚えのない容疑で逮捕され、2024年3月に無罪判決が言い渡される直前まで、勾留は続いた。

 検察の取調室。オクイさんが無実を訴えると、前方で検察官と座る通訳人は笑った。取り調べ後には、こう話しかけてきたという。「本当のことを言ったら、もっと早く終わるのに」。犯人と決めつけられているように感じた。

「ブラザー」が「アイコ」になって証拠に

 犯罪の「証拠」とされたのは…

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    白川優子
    (国境なき医師団看護師・作家)
    2026年1月11日13時58分 投稿
    【視点】

    この記事を読んで、他人事とは思えませんでした。私自身、オーストラリアに留学中に医療通訳を通して病院を受診した際、「このままでは正しく伝わらない」と感じ、自分で通訳内容を訂正した経験があります。当時は英語も完璧ではありませんでしたが、それでも

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    村山祐介
    (ジャーナリスト)
    2026年1月11日15時25分 投稿
    【視点】

    「容疑者に『自白』を促すのが仕事と思い込んでいた」という警察通訳経験者の話に背筋が寒くなりました。統一された認定試験や資格もなく、捜査機関に登録されて評価される立場に置かれれば、そうした意識が生まれやすい環境に置かれるのだと思いますが、捜査

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