風俗行ったらポーカー店で大事なものをエクスポーズした話


2025年の年末。私はある場所と決別した。
もうあの店に行くことは無いだろう。
完璧主義な上司と馬が合わず、日々心をすり減らす毎日を送っていた自分にとって、欠かせない場所の一つだった。
それがどうしてこんな事になってしまったのか…



あの夜は、別に何か特別なことをしようと思ってたわけじゃなかった。
ただ、いつものようにポーカーを打って、負けて、負けた腹いせと寂しさをごまかすために、
アミューズメントポーカー店の最寄りにある、あの薄暗い路地の風俗店に足を運んだだけだ。
「どうしてこちらに来られたんですか?」
案内された部屋の先で、彼女が唐突に聞いてきた。
「ああ、趣味でポーカーやってましてね。相手にラッキーされてむしゃくしゃしちゃって。」
大して興味も無いだろうに、と思いつつも無視や嘘は具合が悪い。
嘘偽りなく何気なく答えたら、彼女の目が少しだけ鋭くなった気がした。
シャワーの後のことだった。
彼女が「ちょっと待っててね」と言ってスマホを手に取った。
俺はまだ何も気づいていなかった。
呑気にタオルで体を拭きながら、これからの事に胸を高鳴らせていただけだった。間抜けにも。

俺がその日の真実を知ったのは、
いつものように店に行ったある日の夜、
常連同士の雑談の中で、ある常連が聞いてきた。「最近、風俗行ったの?」と。
ニタニタと歯を剥き出しにして、少し上擦った声で聞いてくる。
「はぁ、まあ」
途端に、爆笑。
聞いてきた本人だけではない。周りに目を向けると別の客も同じ様に笑っていた。
意味がわからない。
何がそんなにおかしいのか。
その場で笑顔でないのは自分1人だけだった。
ただただ漠然とした不快感を胸に抱きながらも、話を聞いた。

話を聞いた私は頭の中が真っ白になった。
足元が抜けるような感覚は、初めて味わった。
風俗店に行った際に動画で盗撮をされていたという。
なんと風俗嬢とディーラーが知り合いだったらしい。風俗嬢はディーラーに盗撮動画を送って知り合いかどうか確認してきたのだとか。
そしてそのディーラーは、それを「ネタ」として、営業中の店内で他の従業員に見せ、常連客にも見せ、とやりたい放題である。しかも一度だけではない上に男女問わずである。

勤務時間中に何やってんだよ...社員もその場で止めろよ…無意味な正論が意味もなく頭の中をぐるぐると回っていた。

顔とち⚪︎ちん、どちらもエクスポーズした状況でこの現実と向き合わねばならなかった。
ポーカーだったら2枚エクスポーズしたらリシャッフルだが、現実にこのルールは適応されない。
もう無かった事には出来ない。

混乱した頭を抱えながら、足早に警察署に向かった。
「盗撮...をされた側で来られた?で合っていますよね?」
猛禽を思わせる目付きの警察官が、困った顔で聞いてくる。困ると眉尻が下がるタイプだ。
「盗撮被害の聴取はほとんど経験が無いんですがね...ほら、こういうのは同性が対応するんで」
大丈夫、自分も盗撮されるの初めてですから、なんて戯言が頭の中で浮かんでは消えていった。もし言ってたらコワモテの警察官も少しは笑ってくれただろうか。

慣れないながらも対応は早く、警察官の人は静かに、でもしっかりと話を聞いてくれた。
「これは肖像権とプライバシー侵害、場合によってはわいせつ物頒布にも抵触しますね」
その言葉に、初めて少しだけ息ができた。

一方、店舗側の反応はあまりにも遅かった。
1週間、音沙汰なし。
動画を見た従業員にも連絡したら、
「私、関わりたくないんで」の一点張り。店舗の社員としてアルバイトのしでかしに対して誠意ある対応をしてくれるだろう、そんな楽観的な考えは一撃の下に粉砕された。こめかみに鈍い痛みが走る。
下手に出て何度か交渉を重ねたが、一向に効果は見られなかった。メッセージを送るたびに痛みの間隔は短くなっていった。
「警察に対して嘘の証言だけはするなよ。
それ、犯罪だから」
あまりの不誠実に、つい苛立ちが勝ちメッセージを送った。やりかね無い、そんな不安から釘を刺さねばいられなかった。
「脅迫ですか? 怖いんですけど」
返ってきたのはこちらを非難する言葉。ズキリ、と頭が殊更ひどく傷んだ。
そこからはもう、出来の悪いコントを見せられてるようだった。

「この程度で怒るなんて、器が小さい」
「謝ったら?」
「この地域でポーカー出来なくなるぞ。事をこれ以上大きくするなら俺も縁を切る」

従業員やディーラーと仲の良い常連客から次々にこんな連絡が届く。
被害者に向ける言葉では無い。
被害者が一方的に責められる筈がないから、筆者にも重大な過失があったのでは?と考える方も中には居ると思う。
その疑問には答えられない。私自身が最も困惑しているのだから。
彼らは店側からの話を聞いてこちらの非難に動いている。どのような壮大で荒唐無稽な物語を聞いたかは、残念ながら知る事はできない。

店舗責任者とも話をした。被害判明したその日のうちに。しばらく音沙汰がなく、日に日に不信感を募らせていった。
1週間後にこちらから進捗の確認を聞いた。
「今日、拡散したディーラーと話をした。」そんな連絡を受け取った。
1週間あれば更に多くの人に広まってるだろう、そんな怒りを抑えつつも話を進める。
「悪いのは盗撮した風俗嬢。ポーカー店はあくまで第三者。可哀想だから協力してあげてる善意の第三者。」
「動画確保したから店に直接来たら渡す。データで送れって?汚いデータを自分のスマホに入れたくないから嫌だ」
「やっぱり動画データ渡すのなし。警察来たら対応する。」
文章量の割に中身が薄いメッセージが来る。要約すると100文字にもなら無い。意味をなさ無い文字列は、二転三転する話は、どうしようもなくこちらをイラつかせた。多大な疲労と引き換えに、最低限の協力を得られた事は進展と呼べるだろうか。


そこから幾許かの時が経ち
ポーカー店の店舗責任者と、動画を拡散したディーラー
、両方に事情聴取が入り、事実関係はおおむね認めているらしい。盗撮した風俗嬢にも遠くない未来に制裁が下るだろう。
しかし、失った物は大きい。見られた事実は消せないし、楽しくポーカーしていた思い出まで汚された気分のままだ。

元は放っておけば鎮火するような話だったはずだ。だが、店舗関係者は、口さがない常連客は水の代わりに油を注いだ。それはもしかしたら私の怒りを抑えようと思っての行動だったのかもしれ無い。
ただ確実なのは、俺はもうあの店には二度と行かない。
行ける気が、しない。

2026年、年も明けて10日
店舗やディーラーからの謝罪はまだ無い。



※常連からの死体蹴りを話題にあげましたが、ごく一部だけ取り上げています。全員が全員こうではありません。
6割 可哀想だと思うけど、正直オモロい。
3割 ドン引き。

※店舗特定のための質問には答えられません

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