死んでくれてありがとう
タイトルにもあるように、「父親」は私の結婚式1ヶ月前に死んだ。
肺がんだった。
死ぬ1年半ほど前だったか、母から「父親」ががんになったと告げられた。
母はとても深刻そうな顔をしていたが、私は正直ちょっと嬉しかったしワクワクした。
当初余命2ヶ月と言われていたが、意外としぶとく笑、
なんやかんや1年半ほどは持ったようだ。
結婚式の前に死んだ。
私の人生はこれからやっと始まる、と希望に満ちた感覚になったのを覚えている。
今後人から父のことについて何かを聞かれても、
もう死んでいるから、と言えばそこで話が終わる。
なんて素晴らしいのだろう。
結婚式に呼ばなくてもなんの違和感もない。
死んでいるのだから当たり前だ。
嬉しい、とにかく嬉しい。
以前ある友人の結婚式に出席した時の話だ。
その友人も結婚式の前にお父さんを亡くしていた。
結婚披露宴の最中には、天国にいるお父さんに向けて手紙を読んでいて、
本人含め周りも涙を流していた。
そうなんだ、父って死ぬと悲しいんだな。
普通はこんなにも愛していて大切な存在なんだな、と
あまりの自分の信心情との違いに驚かされた。
当の私は結婚式で自分の「父親」について全く触れなかった。
手紙なんて読まないし、今まで生きてきた人生の中で
いない存在として扱ったし、
人からもそう見られたかった。
私はシングルマザーの母に女手一つで育てられたのだ。
あの男は自分の人生には関係ない。
私がどんな生き方をしようと、誰と結婚しようと
アイツに話す義理もない。
とにかく関わらないでほしかった。
だから、良いタイミングで死んでくれてありがとう。
私があの人に唯一感謝していることである。


コメント