夜景

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現在住んでいる市内の中で転居
3か所目の高台の分譲共同住宅
に引越した最初の夜。
「窓からの夜景が絶景」と建設
前からの触れ込みだったので、
妻に「外見てみようか。夜景が
綺麗と建築会社が広告に出して
たから」と言って二人で外を見
た。うちの部屋は駅前のビルの
屋上よりも高い位置だった。
ワクワクしてカーテンを開けた
妻は黙った。
そして、10秒後位に「寂しいね」
とだけポツリと言った。
私たちが知っている夜景とはこ
ういう夜景だったからだ。



これが夜景。これぞ夜景。
これが私たち夫婦と親子の日常
的な夜景だった。



街に光の粒が溢れている。
ここが私が生まれた故郷だ。


それが私たちの知る夜景だった。


その光の粒は人々の息遣いだった。
多くの人たちの。


その時の妻の言葉は、その後
の遠い未来を予感させるよう
な淋しさの込められた、ため
息のような一言だった。
私たちは何か大きな間違いを
犯してしまったのではという
得体の知れない物が襲ってき
たが、それを感じたのは私だ
けでなく妻もそうだったのだ
ろう。