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ステルス女子枠

令和7年7月7日現在、国立大学における女子枠は拡大の1途を迎えている。2025年の大学入試において女子枠を設ける国公立大学は30校に及び、前年度の14校から実に2倍以上に急増している。特に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合した「東京科学大学」では、旧東工大の女子枠58人から149人に大幅拡大すると発表した。勿論こうした施策に対し主に男性から疑問の声はあがっているが、「それで落ちるような男子はどうせ入学出来ても碌な成果を収められないだろう」「男性優遇社会がフラットになっただけ」で終了してるし、男性・男子なんかより遥かに大切で重要な存在であられる女子様は過半数が賛成しておられるのだ。この流れは当分止まらないだろう。

しかしこうした目に見える男性差別・女性優遇とは別に、女性はとっくに受験や採用においては「ステルス女子枠」とでもいうべき下駄を履いている事はあまり知られてない。端的に言えば、男性はとっくに受験や採用においては目に見えない形で排除されており、女子枠とはソノような形の排除だけでは足りなくなった&目に見える形で排除しても問題ないほど性的権力の非対称性が拡大したから出来たモノに過ぎないのだ。ここではネットではあまり指摘されない…しかし誰もが知ってるステルス女子枠について語る事とする。

まずそもそもステルス女子枠とは何か?というと、端的に言えば「女性が女性であるというだけで肯定的に評価されるバイアス」ないし「男性が男性であるというだけで否定的に評価されるバイアス」の事である。このバイアスの存在自体に議論の余地はない。何故なら採用におけるにおける男性差別は、特に公務員採用試験における面接試験の合格倍率という具体的なデータとして現れているからだ。

公務員採用試験、特に裁判所職員採用試験においては、男性が女性よりも高い競争倍率を突破する必要がある状況が確認されている。例えば平成16年度から平成30年度までの裁判所事務官(総合職)の1次試験から最終合格までの倍率は、男性が15.5倍であるのに対し、女性は10.5倍であり、その差は1.5倍に及ぶ。

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https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/04/18/saiyou-data/#google_vignette

同様に家庭裁判所調査官補では男性6.4倍、女性3.8倍(差1.7倍)、裁判所事務官(1般職・大卒程度)では男性3.7倍、女性2.2倍(差1.7倍)、裁判所事務官(1般職・高卒者)では男性5.9倍、女性2.8倍(差2.1倍)となっている。

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https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/04/18/saiyou-data/#google_vignette

特に顕著な例として、平成26年度の家庭裁判所調査官補採用試験(院卒者区分)では、男性の1次試験合格者32人中最終合格者はわずか1人(合格率3.1%)であったのに対し、女性は49人中18人(合格率36.7%)が最終合格しており、その男女差は11.8倍にも達した 。このような劇的な合格率の差は、単なる応募者数の違いだけでは説明しきれない選考過程における何らかの要因…ステルス女子枠…が存在することを示唆している。

これは裁判所に限らない現象であり、実際2024年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度)においては生物と農業とデジタル区分を除く全ての分野(9分野)で女性の方が第2次試験…面接…倍率が低くなっている。重要なのが全受験者の60%を占める最大分母の法律区分で男性1.8倍に対し女性1.43倍という顕著な差が出ていることだ。因みに数理科学・物理・地球科学区分の倍率は男性1.57倍に対し女性1倍であり、女性は第1次試験合格=第2次試験合格という有り様である。

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https://www.jinji.go.jp/content/000002478.pdf

(尚2024年度国家公務員1般職は第2次試験突破倍率は男性1.24倍に対し女性1.16倍…意外と差がない。)

https://www.jinji.go.jp/content/000004671.pdf

これらのデータは公務員採用の最終選考段階…面接などの主観的評価が伴う場面において、男性が女性よりも厳しい選抜を受けている証である。そして各試験において主観的評価の割合が増える程にステルス女子枠は苛烈になっていく。その最たるものが事実上主観的評価が全て決めるAO・推薦・総合選抜型の入試である。難関私立大学のAO・推薦・総合選抜入試では、男子学生の合格率が女子学生に比べて著しく低い状況がデータとして示されている。例えば慶應義塾大学法学部FIT入試(AO入試?)の2025年試験結果では、男子の出願者353名に対し合格者は64名で合格倍率は5.5倍であったが、女子の出願者528名に対し合格者は158名で合格倍率は3.3倍であった。

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https://www.keio.ac.jp/ja/admissions/docs/fit_gaiyou.pdf

更にに顕著なのは早稲田大学創造理工学部建築学科AO入試の2020年試験結果である。これは男子の志願者32名に対し最終合格者は1名であり合格倍率は驚異の32倍であった。1方女子の志願者54名に対し最終合格者は19名で合格倍率は2.8倍であった。…なんか最近の大学の入試は携帯プランみたいにゴチャゴチャして分かり難くて仕方ない。

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https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2020/07/2020_AO.pdf

そして賢明な皆様はAO?推薦?総合選抜?試験における男女数の説明を延々とされて、こう思ったことだろう。「なんか女子はAO推薦総合の応募者数自体も多くね?」と。それは気のせいではない。実際に鹿児島大学小林元気の研究では推薦・AO入試の拡大とともに、それらを利用して入学する女子学生の割合が高まっていることが確認されている。具体的には2000年には男女間で推薦・AO入試の利用に有意な差はなかったが、2020年には女子の方が約10%ポイント多くこれらの入試方法で入学する傾向が見られているのだ。

興味深いのはこうしたステルス女子枠及び利用する女子が拡大しても、国立大学全体の女子入学者の割合は2000年の36.9%から2020年の37.2%へとわずか0.3%ポイントしか増加していないことだ。これは女子学生が推薦・AO入試を志向する1方で1般入試からは「撤退」していることを意味している。要は大学入ってまで勉強したいようなやる気のある女子の数(割合)自体は、こうした制度があっても変わらないということだ。もっとハッキリ言ってしまえば、この手の制度は1般入試の受験者層における男性の割合を無駄に高め、無駄に男性の競争環境を間接的に厳しくしているのである。

何故こうしたステルス女子枠が生じるのか?というと、前述した通り私のnoteの読者にはお馴染みの「女性は女性というだけで公的に評価されるバイアス」が原因だ。このバイアスは学術的には「女性は素晴らしい効果(Women Are Wonderful Effect)」と呼ばれており、この性別に基づくバイアスは人種、階級、年齢によるバイアスをはるかに上回ることが研究で確認されている。詳しくはコチラ。

それが面接において如何ほど影響を発揮するのか?に関しては過去44年間に26か国で実際の仕事に提出された361645件の求職申込書を含む85の研究をカバーする大規模メタアナリシスで結論が出された。これによって判明した事は2つある。

1つはステレオタイプ的に男性向けおよびジェンダーニュートラルな仕事に対する女性に対する偏見は時間の経過とともに消え、更には逆転したのに対し、ステレオタイプ的に女性向けの仕事に対する男性に対する偏見は持続していることだ。雑に言えば「女性は××出来ない!向てない!」という偏見は無くなったが、男性に対する「男性は××出来ない!向いてない!」という偏見は無くなってないということだ。これは民間では男性は1般職を蹴られやすかったり、看護や保育士等の仕事に就きづらいことからも伺える。こういう事をXなんかで言うと「女性だって就きにくい仕事や偏見はある」的などっちもどっち論者が現われるが、このメタアナリシスはそれを明確に「どっちもどっちではない。女性に対する偏見は存在しない」ことを示すものだ。

そして第2に判明したことは、何故このようなどっちもどっち論者が現われるか?の答えであった。驚くべき事に社会は客観的には進歩しまくってるにも関わらず、学者もパンピーも進歩を認識または評価しておらず、逆に女性に対する偏見を過大評価していることが判明した。雑に言えば、我々は男女平等な社会になればなるほど「女性は差別されてる」と思うようになっているのだ。

このメタアナは、同等の資格を持つ求職者の性別を実験的に操作し、真のコールバック率(面接招待率、内定率など)を測定した研究をまとめ、またステレオタイプ的に女性が多い職業(例:看護師、人事担当者、小学校教師)及び、ステレオタイプ的に男性が多い職業(例:自動車整備士、エンジニア、コンピューター専門家)、そして性別に中立的な職業(例:会計士、営業担当者、パン職人)における性差別の時系列的傾向も調査した。そして全ての調査と時代を総合的に見ると、男性の応募者は同等の資格を持つ女性の応募者に比べて採用コールバックを受ける可能性が低いことが確認された。しかし時代によって傾向は異なり、1991年以前はステレオタイプ的に男性を多く採用する職種ではバイアスは男性に有利だった(男性の方が採用されやすい)。しかし段々と男性有利バイアスは崩れていき、2009年前後にバイアスは男性不利へと逆転した。対照的にステレオタイプ的に女性を多く採用する職種では、データがある限りずっと女性に有利な採用バイアスが続いており、今日に至るまでほぼ変化なく女性に有利な傾向が続いていることが確認された。雑に言えば、男性に有利だった偏見は排除されたり逆転したりしたが、女性に有利だった偏見は保存・保護されているということだ。

また研究では、科学者(主に社会科学と行動科学)と米国民を対象に「採用におけるジェンダーバイアスって今はどうだろ思う?またどうなってくと思う?」と予測調査も実施した。これに関して学者もパンピーも「男性有利な偏見は徐々になくなってくと思うよ。こういうご時勢だしね」と傾向自体は正しく評価していたが、男性有利・女性不利の度合いに関しては滅茶苦茶な認識を抱いていることが判明した。具体的には2009年以前は男性中心の仕事へのコールバックを受ける可能性は男性が女性よりも約1.3倍高かったが、学者はこの数字を5倍、パンピーは13倍以上と推定した。これは日本が全くそうでないにも関わらず「昭和は男尊女卑」「女性は昔は差別されていた」と答える現象を説明出来るものだろう。

次に「こういうご時勢」になった2009年以降における男性中心な仕事について聞くと、学者は男性がこれらの仕事へのコールバックを受ける可能性を2倍と推定し、パンピーは3倍と推定しまが、実際のデータは女性が男性よりも有利であることを示していた

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0749597823000560

何故こうした現実と認知のギャップが生じているか?というと、それは女子枠やポジティブアクション等の女性優遇施策の存在自体が逆説的に「女性はこういうのを必要とするぐらい差別されてる」事の証明として機能するからだろう。実際「女性がオートロック付き住宅に住む為の家賃補助」は、女性優遇ではなく「女性がソレを必要とするぐらい危険に晒されてる証」として機能している。実際には男性の方が住居侵入されやすいにも関わらず…だ。同様の例は災害避難所の女性専用スペース、プリクラの女性専用スペース等がある。

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そして女性自身も「男性は男性説いてだけで社会の中で下駄を履いており自分達女性は差別されている」と本気で考えている事が確認されている。例えばオーストラリア政府は「男性は男性というだけで出生するので公務員は性別を伏せたブラインド採用を実施しよう」とブラインドリクルーティングを開始した。これは当時女性に対する偏見を排して女性管理職や公務員を増やす画期的な方法として世界中から注目された。しかしどうも上手く行かず、ハーバード大学のマイケル・ヒスコックス教授に分析を頼んだところ「ブラインド試験だと女性が弾かれるっぽくね?」という事が発覚する。具体的には応募者に男性名を与えると面接に進む可能性が3.2%低くなり、女性の名前を加えると、応募者が採用される可能性が2.9%高まることが判明したのだ。この分析の結果を受けてオーストラリア政府は現在ブラインド採用を停止している。

オーストラリアの事例は笑い話で済ませていい話ではない。何故ならこの顛末はステルス女子枠は、その強固さに反して受益者や女性優遇論者でさえ認識出来ない殆ど不可知のバイアスである事を示しているからだ。またステルス女子枠がもたらす弊害は「男性が受験や就職の場で不利になる」に留まる問題ではない。女子枠及びステルス女子枠は男性にとって努力や能力が正当に評価されないという絶望感を生み出し、当然に「公正であるべき競争の土俵が初めから傾いてるなら真面目に努力すること自体が馬鹿らしい」という結論に至るだろう。

そして女性はこうした無意識のうちに下駄を履かされて得た成功体験により、真の実力や能力と自己評価の乖離を生み、困窮男性に対して「私達を不当に抑圧し下駄を履いてるにも関わらず落ちぶれた」とますます冷酷に自己責任論を振りかざすようになるだろう。

令和における日本の男女は同じ空間にありながら、全く別の社会を生きているが、この分断は今後もますます広がってく事は間違いない。

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コメント

7
みらい
みらい

「真面目に努力することが馬鹿らしい」…この感覚を持ってる人、自分も含め既に相当な数に上ってるんじゃないかな?
もちろんここで書かれているように大学入学や就職の場面で男性は苛烈な選別を受け、しかもやっと入ってもゆるふわに働く女性たちの横で過酷な業務や残業や転勤を押し付けられ、しかも比較的厳しい評価しか受けない男性たち…。
頑張っても報われないことが分かったら、無気力になっていくのは当たり前。「勝手にしてください、俺はもう知りません。自分を守るのに精一杯です。」と腹の内で思ってる男性、多いと思うよ。

しゅないだー
しゅないだー

一方、一般、一途を1方、1般、1途とわざわざ表記する人間が本当に存在していたことに驚きを隠せない

t_f
t_f

唖然とする事実ばかりですが、その中で

>なんか最近の大学の入試は携帯プランみたいにゴチャゴチャして分かり難くて仕方ない。

とあるのが白眉で、これは、大学入試制度が<アメリカナイズ>していることの兆候でしょう("貧乏でも、社会不適合でもペーパーテスト一発でクラスチェンジ可能"だったのが、日本の大学入試制度の最大のメリットでしたが、この"分かり難く"なっているというのは、要するには、("学力"ではなく)<アイデンティティ>で審査されているということであり、さらには、大学が、"蘊奥を究める"場ではなく、(アイデンティティの強化による)<イデオロギー>を喧伝する場に成り下がっていると考えられます(もちろん、これが、"差別"の再強化になるのは目に見えており(なんせ、バカに世迷言を吹き込んでいるだけなので)、MAGA勢力の"反知性主義"を嗤っている場合ではなく、いずれ、大学自体が"バカの吹き溜まり"になるでしょう

sasa49m1rou
sasa49m1rou

タイプミス?
>そして女性自身も「男性は男性説いてだけで社会の中で下駄を履いており自分達女性は差別されている」
⬇️
「男性は男性というだけで

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ステルス女子枠|rei
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