住まいと暮らしの今を映し出す「RoomClip」。投稿数、検索数、いいね数、保存数、コメントなど、ユーザーの多様な行動データを徹底分析し、2025年に注目を集めた住生活のトレンドと、2026年の展望をお届けします。本レポートでは、現代の暮らしを特徴づける10の重要トレンドを選定。データに基づく客観的な考察とともに、これからの住文化の行方を探ります。
harumaru / Room No. 5561343
2025年は、「日本」に改めて目が向けられた一年となりました。大阪・関西万博という世界の文化が交差するイベントの開催、そしてさらなるインバウンドの増加。これらが相まって、「日本らしさ」への意識の高まりが、暮らしや住まいにも確かな影響をもたらしています。「日本リバイバル」とは、昭和・平成期の記憶やかたちを単に懐かしむのではなく、現代の暮らしに積極的に取り入れようとする動きです。和モダンやジャパンディといったインテリアスタイル、国産地域材の再評価など、複数の潮流が重なり合う複合的なトレンドといえます。その影響は、住空間からインテリア、そしてライフスタイルの細部にまで及び、今の日本をもう一度見つめ直す契機となっています。
nyarome / Room No. 113738
3畳前後の小さな個室への注目が高まっています。仕事、ゲーム、トレーニング、ペット用など、自身の趣味やライフスタイルに寄り添った一人時間を過ごすための「私室」。特定の活動に没頭するための「専用部屋」。あるいは寝るためだけと割り切った最小限の「寝室」——。広さは1畳から4畳程度と非常にコンパクトながら、活動に応じてカウンター、収納、遮音、照明、空調、電源などを最適化する工夫が随所に見られます。1台のテレビを家族で囲む時代から、スマホをはじめとした個人用デバイスの普及や趣味嗜好の多様化により、家族世帯であっても一人ひとりが異なる時間と空間を求める時代へ。用途に特化した、新しい個室のかたちが生まれています。
akomo / Room No. 4934520
日本各地で観測史上最高気温を更新した2025年の猛暑は、住まいの心地よさを追求する以前に、生命を維持するための対策を講じなければならない状況を生み出しました。この経験は、夏の住まいのあり方を根本から見直す契機となっています。エアコンだけに頼る冷房から、複数の手段を組み合わせる「複合冷房」へ。窓際の遮熱カーテンや日除けシェード、断熱リフォームといった建築的対策に加え、サーキュレーターやスポットクーラー、さらには冷感寝具など身体周辺の冷却アイテムまで、多層的な組み合わせが進んでいます。電気代の高騰や環境への配慮もあり、複数の冷房手段を状況に応じて使い分ける、効率的で持続可能な夏の暮らしが模索されています。
「推し」への愛を壁一面に表現する「推し壁」づくりの関心が広がっています。垂直に立ち上がる推し活スペースは、狭い部屋でも構築可能で、100円ショップで買える1段のウォールシェルフと、カプセルトイひとつあれば始められます。この手軽さが、推し壁トレンドの背景にあります。ライト層から数年来のヘビー層まで、フィギュア、アクリルスタンド、缶バッジ、コースター、キーホルダーなど、多様なグッズを自由に追加・配置換えしながら、集める・飾る・組み替えるを繰り返す「進化型コレクション空間」として、SNSでも盛んに共有されています。推し活がニッチな趣味からメインストリームへと変化する中で、限られた生活空間という現実的な制約から生まれた、誰もが推し活を楽しむ方法——それが推し壁と言えるでしょう。
テレビの前にソファとローテーブル——そんな定型のリビング像が大きく変わりつつあります。リビングの一角に、学習・仕事・ゲーム・読書・推し活・ディスプレイなど、特定の活動に特化した「小さなコーナー」を設ける動きが急増しています。棚やラグの配置で緩やかに領域を分けたり、カウンターデスクや専用シェルフを設置したり。リビングは住まい手が目的に合わせて空間を細かく編集し、多機能に活用するのが当たり前の空間となりました。家族が集う場でありながら、それぞれが異なる活動を同時に楽しむ場。2010年代後半から徐々に姿を変えてきたリビングのあり方は、コロナ禍を経て数年、決定的な変化が訪れたと考えています。
水性アクリル樹脂素材「ジェスモナイト」を使ったトレイやオブジェづくりが人気を集めています。好みの色や模様を調合して自ら型に流し込み、仕上げるプロセスが支持され、複数カラーのマーブル模様や独創的な形状に挑戦する人も増加。既製品では得られない質感や、偶然生まれる模様が、暮らしの中に新しい個性をもたらしています。
ジェスモナイトや編み物、大人の塗り絵といった、ゆるく没入できるクラフト系の趣味は、タイパ・デジタル時代のデトックス的な活動として注目されています。効率や生産性を追い求める日常から離れ、手を動かすことそのものを楽しむ活動。そこに、2025年らしい新しい余暇時間の過ごし方が見て取れます。
RoomClip Housing Culture Institute TREND REPORT 2025 - 2026
3畳私室やリビングの小さなコーナーづくり、推し壁に象徴されるように、住まいは個人の時間・活動・好みを起点に変化する時代に入っています。この変化は2025年に突然現れたわけではなく、ここ十数年で積み重なってきた社会の動きが、着実に住まいの形に表れた結果です。背景にはいくつかの大きな流れがあります。まず、世帯人数の減少やライフスタイルの多様化により、家族が常に同じ空間・同じ時間を共有するという前提がゆるやかに解け始めました。そこに、住宅価格の高騰と住宅面積の縮小が重なり、限られたスペースを自分にとって最適な形に編集する必然性が高まりました。さらに、スマートフォンの普及により余暇時間の過ごし方もパーソナル化へと向かい、一人ひとりが異なる時間と空間を求めるようになりました。
こうした背景が複合的に作用した結果、2025年の住まいでは、1〜4畳のミニマムな私室、壁一面を趣味で満たす推し壁、リビングの隅に生まれる作業・ワーク・ゲーム・推し活コーナー、そして過去のレポートで紹介したヌックやソロソファなど、家のあちこちに個の空間が立ち上がる風景が当たり前になりつつあります。小さくてもそこには、生活者それぞれがひとりの時間を豊かにする工夫が凝縮されています。用途に特化した空間設計、後から拡張できる柔軟性、そして何より「自分のための居場所」を持つことの価値——。住まい全体の広さよりも、こうした質的な豊かさが重視される時代へと移行しています。
こうした背景が複合的に作用した結果、2025年の住まいでは、1〜4畳のミニマムな私室、壁一面を趣味で満たす推し壁、リビングの隅に生まれる作業・ワーク・ゲーム・推し活コーナー、そして過去のレポートで紹介したヌックやソロソファなど、家のあちこちに個の空間が立ち上がる風景が当たり前になりつつあります。小さくてもそこには、生活者それぞれがひとりの時間を豊かにする工夫が凝縮されています。用途に特化した空間設計、後から拡張できる柔軟性、そして何より「自分のための居場所」を持つことの価値——。住まい全体の広さよりも、こうした質的な豊かさが重視される時代へと移行しています。
RoomClip住文化研究所 主任研究員
水上淳史
RoomClip住文化研究所は、RoomClipに投稿された膨大な写真やコメント・タグなどの実例データと、検索や閲覧などの行動データ、ユーザーアンケート・インタビューなどを基に、住まい・暮らし領域への興味関心が高い生活者についてのトレンドや消費性向などについて研究・発表するプロジェクトです。
少子高齢化やテクノロジーの進展、気候変動による災害の激甚化など、様々な社会的変動は人々の暮らしを変え、それに伴って住まいも形を変えていきます。
RoomClipのデータとコミュニティを最大限活用し、住まいや暮らしの変化を定量・定性の両側面から調査することで、住まいと暮らしの「今と未来」がわかるレポートを発信していきます。