その対峙は因果応報
お告げに従い更新です
侵入から十分後。大量の殺戮無人兵器から、からくも逃げ出した俺達はパイソンがハッキングしてロックを解除した、かつては人間NPC用のスペースだったのだろう部屋の中で一息ついていた。
「侵入成功」
「宇宙に放り出されて危うく死にかけたけどね……」
「誰も死んでない、第一目標達成、なんの物言いが?」
「……結果論、ヨクナイ」
フォックス氏、残念ながら結果を出さない奴が過程に文句を言ってもそこに説得力はないんだ。
まさか初手で切り札の艦載ガトリングとパワードアーマーを切らされると思わなかったが……まぁ、まぁ何とかなるだろう。手持ちのハンドガンがとんだポンコツなんだが……いや、使えるよ? すげー便利なんだけど今の状態だとハンドガンだけじゃどうにもならないんだよな。
「どうだパイソン、俺達としては武器庫か動力室のロックを外してもらえると嬉しいんだが」
「無茶言わないでよ、テラトン級のセキュリティとか手持ち装備でどうにかなるわけないじゃない……端っこから段々セキュリティを解いて進んでいくしかないわよ」
「これをか」
テラトン級って控えめに表現してもラスダンみたいなもんだぞ、テラトン級を用意できる資金力ってのはつまりテラトン級を運営できるだけの資金力って事だ、NPCの強さは言うに及ばず……つまり戦争期間でGカップムネ肉氏あるいは連合に参加するプレイヤーを削っていく場合、プレイヤーが乗艦してないテラトン級なんぞに何日も時間をかけていられないのだ。
「いや、アップデート前からどんなテラトン級でもプレイヤーの乗艦及びプレイヤーが指揮をとる操舵室への転送床は封鎖できない。だから転送床さえ見つけられたならディアホーンの所まで行けるはずだ」
「これの中から見つけるの?」
「「「「「…………」」」」」
これ、行けるかなぁ……?
やる気はあるがそれとは別方面のモチベーションが端から削られ始めたのを感じていると、突如としてゴォーン、ゴォーンと鐘の音が鳴り響いた。
「なんだぁ!?」
「あ、これがそうなのか……」
「どう言うことだよ」
「ライノさん話聞いてなかったん? 今回の戦争は日を跨いだ時点で休戦になって、次の日の夜七時から再開なんだよ。紳士協定? だってさ」
「へぇ、そんなのあったのか。聞いてなかったわ」
へぇ、そんなのあったんだ。聞いてなかった……でも声には出さない、黙っているだけで保たれる格というものはある。
「休戦中は一切の戦闘行動は禁止、ゲーム側でそういう設定になってるから私達がこっそり破壊活動してもシステム側から感知されるから大人しくここでセーブするしかないわね」
と、その時だった。
『……聞こえるかね? こちら、愛板。現在生存している五人のプレイヤー達……ええと、ライノ、パイソン、ウルフ、フォックス、ガゼル。聞こえているかな?』
「「「「「!!」」」」」
ヘルメットの内側から響いた声に五人のメタルアニマル達が顔を見合わせる。アバターの目は見えないが、雰囲気で皆一様に理解する。これ誰が対応するんだ、と……
スッ、と掲げられた五つの拳。無言ながら各々の脳内で共通の文章がリズムに合わせて流れ……
グー、パー、パー、パー、パー
「くっ」
「頼むわねキャプテンウルフ」
「特に命令権があるわけじゃねぇが頑張れよキャプテンウルフ」
「クレ担じゃねぇんだから……はい、五人を代表してウルフです」
『おお、無事なようで何よりだね。そちらの状況は?』
「とりあえず侵入は成功しました、元人間NPC用の区画に潜伏してます」
『重畳重畳、こちらの戦況はあまり芳しくはないが潜入を成功させられただけでも収穫だ、ログアウトするつもりなら申し訳ないが少しブリーフィングを行いたい。他の者達も聞いてくれ』
要約すると、
・潜入の為に輸送機に乗り込んだプレイヤーは俺達以外全滅
・徹頭徹尾対艦攻撃に徹した戦闘機乗り以外のプレイヤーも壊滅状態
・戦況はこちら側が若干不利だが今日の休戦期間中にグレートウォールの修理は終わる
・長期戦は覚悟の上なのでそう急いで攻略するつもりはないが特定の三艦だけは内部工作でダメージを与えてほしい
・簡単に言うと敵陣営艦載機のネスト「六角御殿」、防御の要「キャニング・オブ・パール」、そして敵首魁の本陣「偉大なる巨峰」の三つは意地でもダメージ与えてね
とのことだ。戦闘機乗りに徹したプレイヤーとかいたのか、てっきり全員突入班だと思っていたのだが。
『君達が最初に六角御殿に潜入できたのは大きい。こちらの戦力上、戦闘機で削られるのが最も不都合なのでね………ディアホーン本人よりも六角御殿自体の攻略を優先してほしい』
「………だ、そうだ」
「と言ってもこの広さだしどれだけかかるか分からないっスよこれ」
『ふむ、………だが、確か六角御殿はユニット連結構造だったか。それなら停戦期間中に少しこちらでも調べてみるとしよう。確か奴の船は双方共にアプデ前に建造したものだったはず、なら構造上の脆弱性を見つけられるかもしれない』
「詳しいのね」
『ハハハハハ、何せ以前ディアホーンを地球に送り返してやったのは他でもない私なのでね』
「あー………向こうに付いた理由がなんとなく見えてきた」
『聞いて驚け、向こうを構成するモチベーションの七割は私への怨みだ』
このつるぺた蛮族、多方面に敵作りすぎじゃねーの!?
……
…………
………………
「熱下がった」
やはりライオットブラッドは医療薬品だった? んなわけないか、あれが医薬品とかそれこそ世紀末だぜ。
とはいえ熱が下がった以上は学校に行かなくてはならない、趣味と最低限の義務を両立しなければ陽務家では生きていけないのだ。両立さえすればいいので家人それぞれが趣味に比重を傾けてるあたり、伊達に児童相談所に相談されてないぜ。
結局昨日は潜入組で作戦会議をしつつ、次の夜……つまり今晩の集合予定などを練って解散となったわけだが、今から夜が楽しみだ。このモチベーションを胸に学校生活を乗り切りますか!!!!
と、晴れやかに登校したのが数十分前。
「それでは尋問を開始する」
「なんで手芸部がワイヤー編んでロープなんて作ってんだよ! 条約違反だぞーっ!!」
「超法規的措置だ」
そして登校した瞬間椅子にワイヤーロープで縛り付けられ尋問されているのが現在だ。
「いやマジで何事だよ! 今日は一人で登校してただろうが!!」
「いやそれ今日以外の普段はアウトって自分で言ってるようなもんじゃん……」
「いやいや陽務クーン………今日は物的証拠もあるんだぜぇ?」
「はぁ? なんの証拠だよ………」
「はいこれ」
なんだこれ? SNSサイトか? で、投稿された動画が再生されて…………
『ピースサインだよ、俺はすぐにおててが出ちゃうお前と違って平和主義なんでなぁ? 笑って許せるんだよ、笑って許すんだよ』
「!!?!?!?!?!?!?!?!!!?!?」
!!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?
「一体これはどう言うことなのか説明してもらうぜ……?」
「な、何故そんな動画が、存在して……………!!?」
ちょっと待て、いやマジでちょっと待て!? 全国区ですか!? 全国区でこれ流出したんですか!!? 嘘でしょちょっと待ってくださいよヘルメット被ってないんですけど!! やーだー!!
「悪いが今日は暁ハートを囮にしても無駄だぞ」
「そうそう、今回ばかりはな」
「キリキリ吐いてもらうぜ………!!」
「早退しても、いいですか……?」
当然却下された。
容疑者は黙秘を貫いているとのことでしたが、度重なる疑惑の解明のため捜査班はもう一人の重要参考人と共に公開尋問を行うとの声明を発しており………