【完】いつだって、チャンスを逃してから後悔しても遅いのだ。(クロオ)
【X (旧ツイ) 】
①https://x.com/mhna1704/status/1925896887522984039?s=46&t=0Ob6-0ScfFrW5zKjfij5kw
②https://x.com/mhna1704/status/1927835629074927847?s=46&t=0Ob6-0ScfFrW5zKjfij5kw
⚠️名前変換あり、漏れてたらごめん。
⚠️くっつかない。でも矢印は向いてるので、タグはプラス・マイナス共にあります。
⬇️はpixivまでわざわざ見てくれた人への、ちょっとしたオマケです。
本編 読了後を推奨です。
◇◇◇
幼馴染を振って、振られて、何度か季節が巡った。
俺は未だ幼馴染を諦められていなかった。
俺に長年片思いしていたらしい[FN:名前]すら諦めたというのに俺の方はどんだけだよ…と思わないでもないが、俺の諦めの悪さは元々である。
[FN:名前]には過去「大丈夫、諦められるよ」と言われたが、何だかんだで諦められない気がするんだわ。
何より、振られたけど拒絶された訳じゃないんだよな。
[FN:名前]に責任をなすりつけるようであまり好きじゃない考え方だけど、だからこそ諦められないのもあると思う。
まぁ拒絶されたとして、諦められるとしても何年後かはわかんないですけどね?
本当に諦められるのか?という問題もある。
そもそも、それでも諦める必要ってある?って思うワケです。
好きでいるのは自由だろ?
個人の勝手だもんな。
こう見えて俺、長期戦は得意なの。知ってるだろ?伊達にネコマの主将やってねぇよ。
横断幕に恥じない動きで粘って粘ってねばりまくって夢を実現させたし、そのための努力だって惜しまなかった。
例えばの話。考えたくないけど、例えばな?
将来[FN:名前]に好きなやつができて、それが俺じゃないとして。
ソイツと結婚して、子供が出来たとする。
それで俺の気持ちは変わるのか?
……そう自分に問いかけてみたけれど、心情は変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
その時にならないと分からない。
そりゃそうだ。
だから、どうせなら どれだけ振られても振られても諦めずにいこうじゃないの。
俺は絶対諦めないから、早く折れたほうが[FN:名前]のためじゃねえのかな〜〜なんて。
内心思ってます、ハイ。
『……そんなことを割とずっと考えてて、片思い歴が年単位で、かなり一途だと思うんだけど俺のことはどーですか?
高校のあれ以来一切浮ついた話もなく、というかあれも俺的には人助けで恋愛の【れ】の字もなかったわけだけど。
経験も匂わせも何もない、清廉潔白で誠実な男のつもりなんですけど』
_____チャンスは作りにいかないと、な!
◇◇◇
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- 214
- 5,611
いつだって、チャンスを逃してから後悔しても遅いのだ。
クロオ
#HQマイナス #819マイナス
#HQプラス #819プラス
『……ごめん、今はちょっと…。
それにお前とは、そういうの全く考えらんねぇから。』
_____そう言われたのが約1か月前。
「なのに!なんで!!自分は彼女作ってんの?!!」
まぁまぁ、と友達に慰められて、教室の窓から中庭を睨みつければ、髪型が特徴的な幼馴染が視界に入る。
嘘。幼馴染を目で追っていたら、それが中庭だった。
幼馴染は、私と同学年の女の子と付き合っているらしい。
華奢で可愛いと噂のあの子の隣でお弁当を食べている幼馴染が、鼻の下を伸ばしているのが気に食わない。
その顔は、私やもう1人の幼馴染にいつも向けられていたものと違って……緊張していて、頬と耳が少し赤くて、目尻が垂れていて…本当に愛おしく思う相手なんだろうな、と思う。
告白した時の、返事を貰った時のあの表情。
私は幼馴染…テツロウにそんな顔しかさせられなかったし、今までテツロウがそんな顔をする人も見た事がなかった。
胸がぎゅっとして、怒りは少しずつ萎んで、泣きそうになった。
ずっと好きだったのかな。
私はずっと隣にいたのにな。
「……私とは考えられないのだとしても、今は考えられないって言ってたじゃん…。」
せめて、半年後とかなら。
それならまだ諦めもついたかもしれない。
嘘。そんな日なんて来ない。
今までずっと、どれだけ好きだったと思ってるの。そんなすぐには無理だよ。
それでも、そうやって私を振ってすぐに彼女が出来ているなんて、もうそういうことじゃん。
断る時に私のことを『そういうふうに見れない』って言ってた。
私としては悔しいし悲しい。
かと言って、
私はテツロウの彼女より優秀か?可愛いか?スタイルは?愛嬌は?何より、テツロウの気持ちは??
……そう考えたら、答えは全てノーだ。
テツロウについては彼女より私の方が知っているはず…と思いたいが、今では恋のパワーで彼女の方が詳しいかもしれないし、
見た目は人によりけりだけど、私は平々凡々。
対する相手は可愛い部類だと思うし、彼氏のテツロウからしたら可愛くて仕方がないだろうから比較にならないだろう。
愛嬌は多少いいけれど、彼女のように分け隔てなく良いのではなく、悪意がなく自分が大切にしたい人には良い…というもの。
何より彼女は私が見たことの無いテツロウを見ていると思う。
……私だけしか知らないテツロウ。
幼少期については彼女より私の方が知っていることが多いだろう。じゃないと、今までこんなに好きな人の側にいたのに、私はずっとテツロウの何を見ていたんだとなってしまう。そんなのは悲しい。
今はあんなに大きく成長したテツロウだけど、幼い頃は可愛くて、人見知りで、でも元気に走り回って、バレーを楽しんで。声だって今よりずっと高くて。
今は全体的に成長して体も顔つきも知識も性格も大人びて、怪しい感じというか…年相応な色気がある。
そこに垣間見える少年の頃のテツロウがいて、それを見た私は幼少時を懐かしみ、センチメンタルな気持ちになって手放せない。
だから私はテツロウ離れが出来ない・この気持ちは決して恋なんかじゃないと思おうとしたけれど、上手くいかなった。
結局私は諦められず、未だにテツロウが好きなまま。
「……テツロウの彼女、かわいいな。幸せそう。」
流石、テツロウが選んだ女の子だ。私じゃ到底 適いっこない。
内心、嫉妬やストレスで酷い。肌も荒れた気がする。
私って、こんなに何かを羨んだり、苛立ったり、憎んだり、嫉妬で汚い考えばかりを抱え込むことが出来たんだ。
そして、それを相手にぶつけないように自制できるくらいには成長したんだ、全然知らなかったよ。
そんなことを考えながら、相も変わらず中庭の2人の逢瀬を見る。
お互いに夢中な2人はこちらを向くことなんてない。
その表情から、2人は本当に楽しくて嬉しくて仕方がないという雰囲気で……
「いいなぁ…」
テツロウの彼女。なりたかったよ、本当に。
私から彼女に、テツロウの幼少時や私しか知らない事柄を自慢して煽ったり、マウントをとるなんてことは当然しない。
彼女に対して酷く、私も虚しく。
テツロウに嫌われて、そんな無意味なマウントでもテツロウと彼女の結束はかなり強まりそうだから絶対にしない。
私だけのテツロウを他の人に教えたくない、という理由もある。
だけど、彼女はテツロウの幼馴染の私に対して『テツロウの当時を知っている、私だけの時間やコミュニケーションがあった』ことに嫉妬しているかもしれない。
私が彼女に嫉妬するように、彼女が私に対してそういう感情を持っているかもしれないのはお互い様だけど、
内容が"幼少期"なのか"恋人にだけ見せる顔"のどちらがいいかと考えれば、私は後者がいいから全く比較にならない。
『……テツロウ、いつから好きだったのかな。』
私、ずっと一緒にいたのに、好きな人が出来たって教えてもらえなかったな。
ずっとテツロウのことを見てたのに、気付けもしなかった。
なんでも話せるような相手じゃなかったのかな。それとも、好きなのがバレてた?だから気を遣われて?
一つ下の学年のケンマは知っているのかな。それとも、周りをよく見ているケンマは気付いてた?
……そうだとしたら。
そこも、すごく、くるしい。
「……虚しいなぁ…」
テツロウ、あの子が好きで、付き合えたんだ。
私は彼女になれなかったけど、今後も幼馴染として仲良くしていきたい気持ちだってあるんだよ。
告白して振られているから、そんなのありえないかな?
でも、テツロウは優しいから、そんな私の気持ちも汲み取ってくれるだろうし、お願いすれば自然体で、でもしっかり線引きをして、距離を取ってくれるよね。
「テツロウに、ちゃんと、心からおめでとうって言えるようになりたいな…。」
だから、私の気持ちなんて、早く消えてなくなっちゃえ。
私は窓から目を逸らした。
◇
クロオがほかの女の子と一緒にいる。
いつか、キスとかもするよね。
恋人なんだし…関係が長く続けば当然スキンシップの回数も増えるし、内容も濃くなるでしょ。
付き合ってる期間と恋人としての行為は人によりけりだし、クロオは身持ちがしっかりしていそう。
春高に受験とその勉強…と色々あるので『そういう行為』は卒業間際まではしなさそうだけど、クロオと彼女が交際を初めて3ヶ月は経っているので既にしているかもしれないし、そろそろ…、するのかもしれない。
なんなら、交際してすぐにしてたり…いや、クロオに限ってそれはないか。
……こんな下世話なことを考える自分が嫌だった。
ドロドロとした感情を抱えて、鬱屈した気分になるけれど、最近はそれに慣れてきた。
2人が幸せそうな姿を見て思う。
クロオには彼女がいるのだから。
到底私じゃ割り込めない。太刀打ちできない。
最初は辛くて苦しくて仕方なかったのに、2人を見て、そんな考えや感情は、少しずつ少しずつ薄れていった。
心が麻痺したのかもしれないし、上手いこと感情の切り替えができるようになったのかもしれないし、ようやくクロオのことが諦められている兆しなのかもしれない。
良かった、ほんとうに、よかったとおもう。
最近では幸せそうなふたりを眺めても内心少しざわつくだけで、笑って「良かったじゃん」と言えるくらいになってきた。
「彼女が出来たのだから、不安にさせない為にも距離感は気をつけないとね。」ということを理由にして、彼のことを"テツロウ"から"クロオ"にしたことが功を奏したのかもしれない。
もっと早くこうしていればよかった…。
そう思ったところで、後ろからクロオに呼びかけられた。
『[FN:名前]ー!今日、帰り雨降るかもって!季節はずれにも程があるよなぁ。傘もってきたか?!』
優しいなぁ。こういうところが好き。
これはあくまで、人としての"好き"だから。
恋愛感情として好きだった頃は、こんな一声が嬉しくて堪らなかったし、だからこそ諦められなかった。
でも、今は違う。
私は少しどきりとしたけれど、笑顔を作って、自然体な声で、いつものように受け答えた。
「うん、ばっちり!」
『なんだよ、お前のことだから持ってきてないと思ってたわ』
「その場合は、折り畳み傘が常に鞄に入ってますのでね!
最悪、今日は体育があるからそれなら濡れてもいい!制服が濡れるのは勘弁だけど!
案外 大丈夫なんだよね~~」
そういえばそうだったな、と明るく笑うクロオを見て、私からもなにか話題を…と思考を巡らせれば。
『[FN:名前]が傘もって来てなければ俺の貸して、俺は彼女と相合傘できたのに。
仕方ないけど、まぁ折り畳みだと小さすぎて彼女1人がギリだし、そしたら俺の肩が濡れるとかじゃ済まないもんな。』
「でも、雨でびしょ濡れなら、彼女のおうちでタオル借りたり、クロオの部屋でまったり彼女との時間が過ごせるかもよ?」
ううむ…と悩むクロオにそうやって声をかけてあげれば、クロオは目をパチクリとさせて、小さく声を漏らした。
呆然として、突然ハッとした素振りを見せてから『そっ、そうだナ!うん、流石、…マジで?……』なんて慌てる素振りを見せた。
多分だけど、真面目で誠実なクロオだから、その考えはなかったんだろう。
「いい案でしょ!
クロオからしたら好きじゃない作戦だろうけど。だからこんなこと思いつかなかったでしょ?」
ニコニコ…ニヤニヤした顔でクロオに言えば、顔を真っ赤にさせて『そんなことになったとして、どう過ごしたらいいんだよ』なんて言う。
そこは自分で考えなさいな。
『そう…、そっか。それなら、遂に…。あっ、いや、なんでもない!』
その言葉を聞いた瞬間、無防備な頭をいきなり殴り付けられたような衝撃が襲ってきて、グワンと揺れた気がした。
今日、そうなったら。
クロオは彼女と"遂に"、『そういうこと』をするつもりなんじゃないだろうか。
そういう欲があるか…クロオの願望や性癖について今まで聞いたことがなかったけれど、彼だって年頃の男の子。
好きなことは一緒にいたいだろうし、意識だってするはず。
そういうことをする気がなくても、いくらクロオが誠実でも、あわよくば…と考えていてもおかしくない。
クロオの彼女だって交際している以上、好きな人とそういう欲だってあるだろう。
『あっ、その![FN:名前]…ッ、[FN:名前]も風邪ひかねぇように気をつけろよ!じゃあな!!』
クロオと彼女にとっての、幸せな時間。
それは、私にとって辛くて仕方ない時間になるのだと思い知らされた。
◇
2人の距離が近い。
クロオと彼女に対して、そう感じた。
遂にか…と思って、家でひとしきり泣いた。翌日休みでよかった。
さらに翌日は友達と買い物に出かけて、愚痴を言い合って、恋バナをして、慰めあった。
"[FN:名前]は、もしクロオが別れたらどうする?"
友達に聞かれた。
完全に吹っ切れてはいないだろうけど、このまま私はクロオを諦める。
そうすることが出来る。そうするしかない。
友達と話して、そう思ったのだ。
確信したから、そう言った。
万が一、クロオが彼女と別れることがあったとして。
億が一、クロオに交際の申し込みをされたとして。
今の気持ちとして、それらを受け入れられるか?
____答えは"否"だ。
こうなった以上、万が一、億が一があったとして私はクロオを受け入れられない。
交際したら絶対に今の彼女とのことを想像して、嫌な気持ちになってしまう。
手を繋げば、
彼女とこんなことしたのかな。
キスをすれば、
彼女とした時はどうだったのかな。
それ以上のことをすれば、
彼女と比べられていないかな。
絶対に考えて、その度モヤモヤして、嫉妬して、傷付くんだ。
……だからそんな未来は訪れない。
◇
その後。
考えがまとまった時から、私は途端に気持ちの面で楽になった。
今後の人生で、絶対にクロオと私がくっつく未来がないと正しく自覚したからだろうか。
今まであんなに諦められず初恋を引き摺っていたというのに、大切な思い出としてストンと自分の中で落とし込むことが出来たのだと思う。
クロオを見て、燃え上がるような気持ちも、恋心が燻ることもない、凪いだ心地。
どうでもいいとまではいかないけれど、幼馴染の情しか残ってない。
こんな気持ちになるなんて信じられなかったけれど、この状態はとても心地がいい。
幼馴染として、今はクロオの恋路を見守って、心から応援できる。
気持ちの面でストレスから開放されることで、こんなにも楽になるなんて考えたこともなかった。
だから今は少しハイになっていて、新しいことに色々挑戦する意欲が湧いてきている。
学校生活も残り少ないから、恋も勉強も、学生にしかできないことやシチュエーション、空気感を楽しみたい気持ちでいっぱいなのだった。
「クロオォー!ケンマァーー!!
学校生活も残り少ないし、今度の部活終わりかオフの日、幼馴染で学生らしいことしたい!買い食いとか寄り道したい!!
あっ、クロオは彼女と一緒にいたいよね!ごめん!!クロオは卒業の時に記念写真だけでいーよ!!」
『え?俺混ぜてくんねーの?』
「いや彼女持ちが普段から幼馴染優先とかしちゃダメでしょ、卒業時の写真の1枚や2枚はまだしも。
幼馴染で記念に何かするとはいえ、その中に女がいるなんて彼女可哀想じゃん。だから卒業式は写真1枚でいいよ!」
『えっ』
私が過去に告白したから、この言い方はクロオに気を遣わせてしまうかもしれないと思い、わざとらしいくらい明るくフォローを入れた。
そしたらクロオは驚いた様子を見せたあと、モゴモゴと言葉にならない声を漏らした。
『え、ぁ、うん、う~~ん…』
「??クロオ どうしたの、そんな言いにくそうにして…」
「……はぁ。[FN:名前]、クロって最近彼女と別れたからそんなの関係ないよ」
ケンマの発言に驚きすぎて、今度は私が大きな声を出してしまった。
「えっ?!いつ?!!あんなに可愛い子なのに?!ラブラブだったのに何で?!!」
『ゔ…もういーじゃんか、そんなことは!』
「よくない!」
思わず詰め寄れば、ありえないくらいに目をウロウロとさ迷わせたクロオは、遂に顔ごと背けて『…言いたくない』と言った。
「っていうか、クロオはまた私に教えてくれなかった!ケンマには言うのに私には言ってくれないの、何か仲間はずれみたいで悲しいんですけど…?」
『いやいや、そういうつもりはねーっていうか…とりあえずまぁ、そういうことだから、呼び方も前みたいに戻しても…』
「もうクロオで慣れちゃったしいいや、テツロウってちょっと長いし」
『?!長くないですけどぉ?!1文字差じゃん!!!』
「1文字って大きいよね」
『ケンマまで?!!』
アハハ、と笑い合う今の私たちに、男女のあれこれがあったなんて誰も思わないだろう。
私が望んだ理想の形。本来あるべき姿。
私はちゃんと、今までのように、明るく楽しく幼馴染と過ごせている。
……それが嬉しくて、幼馴染の顔をちゃんと見ていなかった。
◇
【クロオ視点】
幼馴染。
その言葉がこんなにもありがたくて、こんなにも煩わしいなんて思っていなかった。
「テツロウ、私、テツロウのことが好き…なの。」
何となく言われる気はしていたから、それを避けて、遮っていた。
だって今は受験生で、俺は春高に出て、俺達なりの"ごみ捨て場の戦い"を実現したかった。
将来ネットを下げる活動をするのが夢で、そのために協会に入るのが道だった。
協会に務めるために何をどうすべきなのか調べたら、春高に出て、大学に行った方が有利だと知ったので、それが目標になった。
その他にもバレー経験があること、主将などを務めていると尚良く、ビジネス会話くらいの英語力が必要だったりするらしい。
『……ごめん、今はちょっと…。
それにお前とは、そういうの全く考えらんねぇから。』
胸がチクンと痛みを訴えてきた気がしたが、仕方ない。
こういうのは、断る方も、断られる方も辛いもんだろ。
今まで告白されたことが無いわけじゃなかったが、どうやって断ればまた幼馴染としていられるか分からなかった。
……だから俺は逃げて、[FN:名前]が傷付くと分かっていたのに、告白を断った。
こんなの嘘だろ。
全く考えられないんじゃなくて、
考えたことがないから分からないんだろ。
傷付いた顔をした[FN:名前]は「そっか、言いにくいこと言わせてごめんね。答えてくれてありがとう。」と言って、顔を歪めながら笑った。
[FN:名前]は、こういう話で人をからかうことはしない。
そんな風に誰かが傷付く嘘はつかない。
だから、自分も辛いのに俺のことを考えて必死で笑顔を作ってくれているのだとわかって、今度は胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。
それから幼馴染歴が長い[FN:名前]は俺が言ったことを正しく理解していたし、
「気まずいかもしれないけど、幼馴染としてちゃんとするから…だから疎遠にならないでほしいな…」と言ってきたので
『当たり前だろ!お前はずっと、俺の大事な幼馴染であることに変わりないからな』と答えれば、また傷付いた顔を一瞬だけ浮かべて、それから嬉しそうにした。
本当に本当に嬉しそうで、そんな[FN:名前]を見てほっと一息ついて、気付く。
安心したのは、何故?
幼馴染を失わず済んだからに決まってるだろ。
幼馴染が泣きそうに少し潤んだ目をしているのがわかったけれど、幼馴染でいられることに対して本当に嬉しそうにしていて、可愛いと思った。
これが恋する乙女のマジックかぁ…なんて思ったもんだ。
それから約2週間。
幼馴染との関係は良好で、俺の勉強も部活もとても充実していた。
告白されてから[FN:名前]の視線に敏感になったのか、たまに見られているのに気付いてからは少し嬉しかった。
『俺、本当に[FN:名前]に好かれてるんだな』なんて考えて、ケンマに伝えたときはドン引きされた。やめろ、傷つくだろ。
「[FN:名前]はそんなことで嘘つかないでしょ。告白されて、断ったのに信じてなかったの?」
『告白されたし、驚いたけど、そういうやつじゃないと思ったからちゃんと言葉を受け止めて、断ったよ。』
「…そう、」
『というか何で告白のアレコレ知ってんの?』と聞けば、ケンマには「気付いてないの…?」と驚かれた。
どうやら、[FN:名前]が俺に振られたという噂があるそうだ。
今までは異性の幼馴染がいるから告白されることは最低限だった。
しかし、周りから見たら俺の恋人候補として有力な[FN:名前]…恋敵からしたら一番の障壁となる相手がひとまずいなくなったから…皆チャンスをものにしようと頑張っている、とのこと。
だから最近告白が増えたのか…。
「卒業まで半年切ったから、女子たちからしたら焦ってるんだよ。これからもっと増えるんじゃない?」
『それは、……それは、とても困る…。』
気持ちは嬉しいけど、俺にはやりたいことがあるから。
あと、断るのも結構しんどい。
「…クロ。」
『ん?何?』
「クロ、道を間違えないようにね。
…おれから言えるのは、これだけだから…。」
おう、そう言ったらケンマには本当にわかってんだか、みたいな顔をされ、溜息を吐かれた。
それからも告白は相次ぎ、朝練後、授業間の休憩中、部活前に……酷いものだと授業中の手紙交換、人伝、部活後…こう何度もあっては気が滅入る。
部活後、暗い中で出待ちされていたのが一番応えた。
夜、約束もしていないとはいえ送っていかないわけにもいかないからと駅のホームまで送り届けたことがあったが、それからその子含む複数名に何度も出待ちされたときは肝が冷えた。
部の面々に協力してもらってスルーして今は事なきを得ているが、またいつどこで似たような状況になるか不安でならない。
俺はバレーに集中したいのに。1分1秒だって惜しいのに。
人から好意を向けられて、これほど嫌な気持ちになることがあるのかと身をもって知った。
_____そうした告白などで日々の鬱憤が溜まる中、近くで告白を受けていた女子がいた。
その女の子と話しをしていれば、その女の子の場合は同じ男に何度もアタックされ、どれほど断っても諦めないから辟易しているようだった。
最近では付きまといのような行為もされているとのこと。
女の子の様子を伺えば、たしかに青い顔をしていて可哀想だと思った。
『…相手って誰?』
「え?隣のクラスの🚹くん…」
アイツか。真面目で一途なやつ。
そりゃ、卒業まで残り少ないからとメゲないだろう……というか、悪く言えば卒業してからもアタックしそうな、そういう粘着質なタイプのやつだ。
告白を断るにも気力がいるし、でも無視するには申し訳ないし、かといって一度気を許せば今後はもっと粘着質に絡んできそうで嫌だ…と対応していたら、現状のようになってしまったらしい。
女の子も卒業までなんとか耐えれば…と頑張っていたが、最近の🚹は目に余る言動が増えて困っているとのこと。
たしかに俺もその様子を見たことがあるし、それをもう幾度となく体験していたら…しかもこんな華奢な女の子が一人で…そりゃこうもなる。
『……なら、お互い告白に気が滅入ってるモン同士、付き合ってることにする?』
流石に見てられなくて、看過できなくて。
切り出したのは俺だった。
◇
俺らが交際したのはすぐ噂になって、友達に祝われて、🚹には悔しそうな顔をされた。
下手に恨みを買わないようにうまく立ち回っているつもりだったし、実際女の子は🚹のストレスが大幅に軽減されたためか最初の頃より顔色がいい。
ありがとう、本当に助かる。
女の子がそう言って優しく朗らかな笑顔を見せてくれる度、助けてよかったと思った。
俺も告白が減って自分の時間を確保できるし、かなり気が楽だったので自然と気が緩んでいたと思う。
……そうやって過ごすこと、約1ヶ月。
「ねぇ、クロ。最近どう?」
幼馴染のケンマにそんなことを聞かれて、
何を言っているのかあまり要領を得ないと思いつつも、彼女ができたことに対しての質問だと当たりをつけて返答した。
『どうもこうもねぇよ。めっちゃ楽。
彼女、わがままも言ってこねぇし、普通に昼飯食ったりたまに一緒に登下校するだけで🚹からのあらゆるアピールが減ってかなりストレスフリーだって感謝してもらえるし、俺は告白されることも減って自分の時間確保できるし。』
「……そうじゃ、なくて…」
『別に友達と飯食う感覚だぞ?
どうもこうもねぇし、卒業までこの関係続けるだけなんだからラッキーだわ。』
「…クロの、その彼女役。それは、[FN:名前]じゃ…だめだったの?」
『ダメだろ』
俺は即答した。
そしたらケンマは少し目を見開いて不思議そうにしていたし、何かを聞こうとしているのは俺にもわかったが、あえてそれを知らんぷりした。
それを察したケンマは「…そう。」と小さく返事をしたのだが、どこか納得がいってないというか…まだ何かを言おうとしていて。
以外と情に深いこいつのことだし、アドバイスとか忠告だろうか。
何を言われるのか少し怖くて、『自分に気がある奴の気持ちを利用するなんて、だめだろ。』ともっともらしいことを言えば幼馴染に溜め息を1つ、深くこぼされた。
それから少しして気付く。
_____あいつの、視線がなくなった。
……いつ、から…?
今までであれば、[FN:名前]の視線は常に感じていた。
特に、体育の授業中はあいつのクラスがグラウンドから見えた。
あいつの席が窓際になった時は「上の階から監視してあげるね」『いや、ちゃんと授業受けなさいよ。』なんて会話をしたもので…、……。
……そういえば、あいつは、俺とその彼女に対してどう思ってるんだ……?
幼馴染に告白されて振り、それから俺は…あいつのことを振ったばかりだというのに、そう時間を空けずに彼女ができて学校中の噂になった。
女の子を助けるためとはいえ、俺からの提案で、[FN:名前]以外の女の子を彼女として傍に置いた。
[FN:名前]はこの数ヶ月、どんな想いで俺らのことを見て、幼馴染として関わってきたのだろう。
そりゃあ、離れていっても仕方ないよな。
あいつがこの先も幼馴染として一緒にいたいと言ったとはいえ、女の子を🚹から助けるためとはいえ…どんな理由を挙げ連ねたとしても、そんな説明を[FN:名前]にはしていないし、信じてもらえないかもしれない。
そもそも「どうでもいい」と言われたら俺は…俺は。そんなの。
そんなのは…さみしいだろ…?
幼馴染が離れていくことに、大人になるってこういうことなのかと無理矢理に自分を納得させた。
心にポッカリと隙間が空いて寒々しい気がしたし、それに早く慣れないといけない。
胸がぎりぎりと痛んだ。
『意外と俺、幼馴染離れできてなかったんだな…』
「はぁ?何いってんのクロ?」
『え?』
そんな俺の様子を見聞きしていたケンマに怪訝な顔をされて、何か違ったか、変なことを言ったか思い返すけど、別にそんなことなかったよなと俺はちんぷんかんぷんだった。
そんな俺の様子に気付いたケンマは嫌な顔を隠しもしなかった。まるで「うげぇ…、何いってんの?」って言いたげな顔。
「まさか、まだ気付いてないの?」
『は、何が…』
「"クロ、道を間違えないようにね。"」
以前、ケンマが俺に言ったこと。
「……おれが前に言ったこと、覚えてる?」
『あぁ、言ってたな。なんのことか分かんなかったけど、別に間違えてなくね?え?俺 何かミスってる?』
「そう。…うん、そう…だね。
クロがいいと思って選んだ道なら、"間違った道"じゃないよ。
……[FN:名前]との未来を考えるなら、悪手だっただけ。」
『……は?何だソレ…』
「わからないならそれでいいよ。」
_____ただ、それだけだから。
ケンマはそれだけ言いおいて、ゲームの電源をつけた。
何だそれ?何だそれ。なんだそれ…
そもそも、なんで俺は、こんなに焦ってるんだ?
わけわかんねぇ…
それは少ししてから、嫌でも知るハメになった。
◇
[FN:名前]に"テツロウ"じゃなくて"クロオ"と呼ばれて幾分か経った頃。
これも初めは呼び方なんか変えなくていいんじゃないか、突然帰るのは変じゃないか…という俺に対して、[FN:名前]は
「彼女不安にさせたら可哀想じゃん。ただえさえ私たち幼馴染なんだから、他の女の子より距離が近いし、彼女からしたらいい気はしないでしょ。これが普通だし、クロオそんなこと言ってるとあんなに可愛い彼女に振られるよ?」とキッパリ言われた。
……あれ?[FN:名前]、俺のこと好きなんじゃ…ねぇの??
なんでそんな、俺と自分以外の女の子の関係を応援するみたいな…。
まぁ、そういうことを言ってくるってことは…諦めてくれたってことか?それなら幼馴染としてずっと一緒にいられる?
胸の当たりが少しほわほわした気持ちになって、俺は調子に乗っていた。
『[FN:名前]ー!今日、帰り雨降るかもって!季節はずれにも程があるよなぁ。傘もってきたか?!』
声を掛ければ、[FN:名前]は一拍固まったように見えた。
少しどきりとしながら[FN:名前]をみれば、笑顔を作って、自然体な声音で、いつものように受け答えられた。
「うん、ばっちり!」
『なんだよ、お前のことだから持ってきてないと思ってたわ』
何だろう、今の違和感は?そう思いながらも返事をする。
「その場合は、折り畳み傘が常に鞄に入ってますのでね!
最悪、今日は体育があるからジャージ持ってきてるし、それなら濡れてもいい!制服が濡れるのは勘弁だけど!
案外 大丈夫なんだよね~~」
『そういえばそうだったな』
いつもと変わらない[FN:名前]に思わず俺も嬉しくなって笑った。
それで、ふと思った。
[FN:名前]は今、俺についてどう考えているのだろうか。
わかってるはずのそれをどうにも確認したくなって、俺の彼女との恋人としてのやり取りを脚色して話して、[FN:名前]の様子を見ることにした。
…本当はそんなことする必要なんてないのにな。
『[FN:名前]が傘もって来てなければ俺の貸して、俺は彼女と相合傘できたのに。
仕方ないけど、まぁ折り畳みだと小さすぎて彼女1人がギリだし、そしたら俺の肩が濡れるとかじゃ済まないもんな。』
「でも、雨でびしょ濡れなら、彼女のおうちでタオル借りたり、クロオの部屋でまったり彼女との時間が過ごせるかもよ?」
頭をガツンと殴られる感じとは、こういうことなんだろうか。
何も考えられなくなって、[FN:名前]からそんな提案をされたことにどう返事をすればいいのかわからなくて、唇が震えて声にならない。瞬きすらできなかった。
[FN:名前]、どうしてそんなこと。
応援してくれるのは嬉しいけど、俺と彼女は本当の恋人同士じゃないのに。
しかし[FN:名前]は応援すると…、態度でも言葉でも言われて。
そんなことしたら…、俺だって男だ。
する気はなくても、そんな状況、第三者から見たら誰にだって邪推される。
そんな状況や行為を推奨されるなんて。
しかも他の誰でもない[FN:名前]に言われるなんて…心臓がザワザワして、バクバクと嫌な音を立てた。
どうしよう、何か言わないと。何か…、
ハッとした。
『そっ、そうだナ!うん、流石、…マジで?……』
こんなことを[FN:名前]から言ってくるなんて、目 眼前の幼馴染はもしかして、もう俺のことが好きじゃないってことか?
嘘だ。……ウソだ…!
柄にもなく、慌てた。
気さくに話しかけてくれて、よく冗談を言いながらいたずらをする[FN:名前]だけど、絶対に質の悪い冗談なんて言わない。そんなことわかってる。
こんな冗談…お前は、嘘で言うわけない。
ならば、本当に…?
「いい案でしょ!
クロオからしたら好きじゃない作戦だろうけど。だからこんなこと思いつかなかったでしょ?」
ニコニコと笑顔の[FN:名前]。
俺だって男だぞ、好きな子相手ならそういうことを考えることもあるだろう。
いや、今の彼女は可愛いとは思うけど、そんな気は全く無いんだけど!
ふと前を見つめれば、キョトンとした表情の[FN:名前]。
_____[FN:名前]もいつか、そういう相手に出会うんだろうか。
幼馴染という贔屓目抜きにしても、[FN:名前]は可愛らしいと思う。
本人はまつげが短いだとか顔が丸いだとか言って色々と気にしており、気を遣っているみたいだが、その努力する姿を含めて魅力的だ。
それらのことは[FN:名前]が自分のためにしていることだとはいえ、男ができたら、その男のためにもっとキレイに、もっと可愛くなりたいと頑張るんだろうか。
それはどんな人だろう?
その人に、どんな顔をして、どうやって接するんだろう?
"そういうこと"もスるんだろうか?
そりゃスるよな、恋人同士なら…ましてや結婚とか、そういう年になればなるほど…。それで…。
そうしたら、そんな[FN:名前]の様子を余すことなく自分のものにできる見知らぬ男。
そいつしか知らない[FN:名前]の姿があって、それは幼馴染の俺では到底知ることなどできない。
そいつにしか見せていない、[FN:名前]の全部。
眼の前のこいつは、何も知らないみたいな幼い顔つきのくせして、どうやって、どんな風に相手の男を受け入れるのか_____。
ここまで考えて、俺は自分に戦慄した。
待て、待て待て待て、まってくれ。
俺は今、幼馴染で何を考えた?
しかも俺のことを好きだと言ってくれた子に対して、既に振ったというのに、俺は今[FN:名前]で何を考えてんだ…!?
嘘だろおい、オイオイ?!洒落になんねーって…!
「クロオ?」
名前を呼ばれて我に返った。とにかく返事、何か返事を…!
『そんな状況になったとして、どう過ごしたらいいんだよ』
最悪だ。最悪なことを言った。
[FN:名前]の辛そうな顔を見て、それだけはわかった。
こんな風に、彼女とヤりてぇだけみたいな回答とか最悪だろ。
しかもその前に、彼女以外の女の子のあられもない姿を想像している。
俺も年頃の男子高生だとはいえ、流石に自分に引いた。
しかも自分に好きだと言ってきた女の子に対して、その子が俺と別の女の子が結ばれることを祝わせて、その過ごし方や誘い方について質問するとか……!
俺と俺の彼女は恋愛感情なんてない、契約関係であるのに、なんで俺はこんなことを口走ったのか。
こんなの、[FN:名前]にも彼女にも失礼だ。
「そこは自分で考えなさいな。」
困ったように[FN:名前]が笑って、やんわりと俺を突き放して。
『そう…、そっか。それなら、遂に…。あっ、いや、なんでもない!』
言った瞬間の、その声と、表情。
[FN:名前]の目の奥がくろぐろとしてなんの色も宿していなくて。
それがあまりにも寒々しくて肌が粟立ったので、自分が相当な失言をしたと気づいた。
_____[FN:名前]に、呆れられた。
遂に、諦められてしまった。
遂に、[FN:名前]が気持ちに折り合いをつけてしまった。
彼女は"遂に"、俺のことをきちんと諦めた。
いくらヤバいと思っても後の祭り。
もう何もかもが遅くて、何を言っても駄目な気がして、言葉が見つからなくて。
いつも周りの人間にあれほど"胡散臭くて詐欺師のようだ"とか、"よく回る口だ"と言われるのに、こういうときに限ってそれは発揮されなくて。
『あっ、その![FN:名前]…ッ、[FN:名前]も風邪ひかねぇように気をつけろよ!じゃあな!!』
焦って伝えれば、[FN:名前]はふわりと笑った。
俺と彼女の幸せな時間を願う[FN:名前]のなんと愛らしくて、憎らしいことか。
_____この笑顔がいつか、別のやつのモンになる。
◇
翌日も、更にその翌日も雨が振っていた。
こんなに続くなんて珍しい。
ただえさえ雨音で彼女の声が聞こえづらいのに、傘をさしててくぐもっているから尚更だった。
屈んで彼女の声を聞いてやれば、その距離の近さに彼女が頬を染めたからヤバいと思ってすぐ離れた。
しかし、それをどこかで見ていたらしい幼馴染の一人は「本当に彼女のこと好きなの?このままだと勘違いさせて面倒なことにるんじゃない?」なんて言ってきた。
『身長差も30センチくらいあるからなぁ』
自分にとって都合が悪いことは信じたくなくて、そんなことないだろって言い訳を重ねていたらケンマには溜息を1つ落とされて、それすらも見透かされてると思った。
「メインは違うでしょ。それだけじゃない。」
俺がギクリとしたのを幼馴染は当然見過ごさず、更に釘を差してきた。
「それは、クロが[FN:名前]の方へ意識を向けてて、彼女の声をちゃんと聞いてないからでしょ」
ここまでこれば、幼馴染が何を言いたいのか、俺にだってわかる。
『お前なぁ、俺と[FN:名前]のことをくっつけたかったのはわかったけど、』
「ちがう。」
バッサリと切り捨てられて、
「あぁもう面倒くさい。もう言ってもいいかな?クロ鈍すぎ」なんて言われたら俺だって混乱する。
俺が鈍いって、何が?
「まぁ、おれが[FN:名前]を贔屓してる気持ちは少しあるかも。でもおれが言いたいのはそうじゃなくて…」
ケンマの唇が一つ一つ、言葉を選ぶように丁寧に発せられて、それを待つ。
「クロ、[FN:名前]のこと好きなのに。
他の奴と付き合って、このままだと[FN:名前]が離れていくよ。」
『は?んなこと…第一、俺は[FN:名前]のこと振ってるし…[FN:名前]が離れるってそんな、そりゃ俺らも大人になっていくんだから幼馴染離れくらい…』
「そんなことあるの。あんなに[FN:名前]のこと見て、考えて、好きなのバレバレ。自覚無しとか何なわけ?」
え、うそ、マジで?
自分の気持ちを信じられなくてケンマに聞けば、大マジだよと言われた。
「それに、恋人役の人もそろそろ切らないとまずいんじゃない?
惚れられて、別れられなくて、無理やり離れたらストーカー化とか洒落にならないでしょ」
それらの音を重ね合わせて、言葉として認識した時、俺は狼狽えた。
それについては、最近覚えがある。
このままずっと一緒にいて、交際のフリをしていたら、彼女役の女の子には惚れられそうな気がする。
最近🚹のアプローチは何もないようで、女の子からは話しを聞かない。俺が周りを見渡している限りでも、そういったことはない。
でも、女の子に話しを振れば「でもまだやっぱり…」と不安そうにされる。
本当か嘘かは置いといて、俺らはあと2ヶ月程で卒業となるのだから、きちんと身の回りの整理を済ませておかなければならないと思っていたところだ。
それを正直にケンマに伝えれば「あわよくば本当に付き合いたいとか思ってるんじゃないの?卒業後も言われて、今のままだと関係を切れなくなるんじゃない」と言われた。……それは困る。
なんで、こうなってしまったのか。
「………あ。」
『ん?どうしたケンマ?』
考えているときにケンマが短く声を発したので、何事かと聞き返せば、幼馴染はイヤホンを外しながらにこりと笑った。
「……何でもないよ。」
その笑顔は、まるで先日の全国大会でこいつがカラスノのチビちゃんに向けていたような……。
そう思ったら、背筋がゾワリとして、鳥肌が立った。
「良かったね。[FN:名前]はまだクロのこと好きみたい。」
『え、アイツ、俺のこと諦めるって…』
「人の気持ちってそんな簡単に消えないでしょ。切り替えるのも難しいだろうし。
まあきっかけによってはその逆も然りで、簡単に消えたり切り替えたりするだろうけど。」
俺は何も言えなくて押し黙った。
アイツに告白されて、それを断って、約1年は経つ。
そこまで想われていたのは、その、まぁ、何だ。普通に嬉しい。
……ケンマは、そんな俺の考えを見透かしたように釘を勢いよく打ち付けてきた。
「クロ、否定しないってことは、遂に[FN:名前]への気持ち自覚した?
……まぁクロが自分の気持ちを自覚してどう動こうと、[FN:名前]の恋愛感情があってもなくても、付き合えるチャンスは今後一切なさそう。」
ケンマはその猫のようなツリ目で俺をじっと眺めて、何かを見定めるような様子に俺は冷や汗が滲んだ。
「そんな不安そうにしなくても大丈夫だよ。狼狽える必要もない。」
『え…?』
「ただ、クロの恋路が完全終了しただけ。
それが今、明確に示されただけだから」
ケンマの言葉が、重く のしかかってきた気がした。
◇
その後。
卒業も近かったし、『🚹からの被害もないしもう大丈夫だろ』と言って彼女とは別れた。
彼女には、突然そんなこと言われても困るとか、万が一また起こったら…と言われたり、挙げ句の果てには好きだから別れたくないだの何だと言われ何度かごねられた。
その他にも色々言われたけれど、それらすべてを突っぱねて別れ、俺は晴れて自由の身となった。
最近は彼女役と一緒にいることに対して少し息苦しさがあったから、開放感がすごかった。
そして、自分の感情を正しく自覚してからは[FN:名前]を目で追うことが増えたと思う。
ケンマ曰く「前からずっとそうだよ」とのことだが、自分で自覚しているのとそうじゃないのでは、かなり違って思えた。
そして[FN:名前]を目で追って気付いたことは、俺が[FN:名前]の交際の申し出を断った時と比べて、彼女が本当に明るくなったこと。
よく笑うし、声がコロコロと鈴がなるようで、それなのにうるさいとかは感じない。聞いていて気持ちが良くて…。
いたずら好きなのも冗談で場の空気を和ませるのも変わらない。
[FN:名前]と話せば、本人としては本当に何も変わらない様子だった。
だから、変わったのはきっと[FN:名前]の気持ちと、俺の気持ちなのかと思った。
俺らは傍目から見れば、前と何も変わらない…その関係の名前は、最初からずっと、正しく"幼馴染"だった。
変わったのは個人の気持ちで、気持ちの自覚が変われば見方も変わることに気付いた。
[FN:名前]は、本人は気づいていないけれど、結構モテるようだった。
本人に伝えれば
「そんなわけ無いじゃん」と言われ、
ケンマに伝えれば
「まぁ本人無自覚でフラグ折ってるけど、[FN:名前]のこと好きなやつ1人は知ってるかな。だけど最近クロが威嚇した人は全員ハズレ。周りを敵対視して勝手に牽制しまくってるだけだよね…カラ回ってて、今更そうなるのださい。」と[FN:名前]以上にボコボコに言われた。
もしかして、俺がなぁなぁな態度取ってたからケンマは結構怒っているのかもしれない…とアイツの好物で機嫌を取ったのは記憶に新しい。
「クロが本気なら止めないけど、線引きとかはちゃんとしてよね。
ふたりとも大事だからおれは2人のことに口出ししないし、そのかわり協力もしない。
だけどこの件に関してはクロの自業自得だから、[FN:名前]が嫌がったらおれは[FN:名前]の味方するから。」
こんな風に釘を刺されたけど、これは多分怒りの矛を収めてくれるという合図だと俺は勝手に認識したから、
『それでもいい、ありがとな』ってお礼を伝えた。
[FN:名前]は現在、卒業間近ということもあり少しハイになっていて、新しいことに色々挑戦しようとしている。
「今まではクロ優先でずっとクロクロ言ってたから、その障害物がなくなって、それらの意欲が他に向いてるんじゃない?
いいことじゃん」
『俺からしたらいいことじゃねぇもん!!あぁコラ、そんな顔すんな!』
「……。そのうち彼氏ができたとか言ってくるかもね」
『なぁやっぱりお前怒ってる?めちゃくちゃトゲ感じるんだけど』
学校生活も残り少なく、[FN:名前]と一緒にアレコレしたい、幼馴染としても…学生にしかできない甘酸っぱいアレコレもしたい…という妄想を胸に、無邪気に笑う[FN:名前]を横目に見る。
[FN:名前]は、俺をきっぱりスッパリ諦めたと言うだけあって、本当にその方向に関する言動にはドライだった。
どれだけ口説こうと、優しく接してアピールしようと、本性を知っている幼馴染だから意味がないとわかりつつもカッコつけてみても、何1つ響かなかった。
烏のチビちゃんに聞いてたけど、女版の鉄壁かよ…と思いつつ、今まで[FN:名前]のその情を向ける相手として俺がその懐き入り込めていたのがどれほど幸せだったのか噛み締めた。
そして、これは[FN:名前]だからなのか女の子だからなのかはわからないが、興味がない物や人に対してはとことん響かないということ・俺がその枠組みに入れられてしまったことにショックを隠せない。
『くそっ、どうしたらいいんだ……』
っはぁぁ〜〜、
今日も俺は深く、深く溜息をこぼす。
「どうしたらいいんだろうね?」
横にいるもう一人の幼馴染はにっこり微笑うだけ。
幼馴染としての仲は依然として良いんだけどな。
こっからの進展が一切合切ないんだよな。
「あっ!クロオォー!ケンマァーー!!」
ぼーっと[FN:名前]を眺めていれば、その視線に気付いた幼馴染が笑顔で手を振って走り寄ってくる。
あ〜〜、かわいい。転んだら危ないだろ。
ゆっくりでいいから、走らず歩いて来いよ。
色々と自覚したら、常々、こういった感情をよく抱くようになった。
「学校生活も残り少ないし、今度の部活終わりかオフの日、幼馴染で学生らしいことしたい!買い食いとか寄り道したい!!
あっ、クロオは彼女と一緒にいたいよね!ごめん!!クロオは卒業の時に記念写真だけでいーよ!!」
『え?俺混ぜてくんねーの?』
俺だけハブ?っていうか俺は今フツーに彼女いないんだけど?ケンマからの話しとか、噂で聞いてねぇ??マジで?
あんなにアピールしてたのにそんなことある?むしろアピールに気付かれてたとしたら、[FN:名前]の中で彼女持ちなのに別の女口説く最低野郎になってない??
どっちに転んでも俺にとっては最悪なんだけど???
「いや彼女持ちが普段から幼馴染優先とかしちゃダメでしょ、卒業時の写真の1枚や2枚はまだしも。
幼馴染で記念に何かするとはいえ、その中に女がいるなんて彼女可哀想じゃん。だから卒業式は写真1枚でいいよ!」
『えっ』
あ"っ"。
未だに俺に彼女がいると思われている。
しかも相思相愛だと思われて…?
しかもめっちゃ明るくフォロー入れてくる[FN:名前]もかわいいんだけど、これ、俺との時間を極力無くそうとしてないか?
俺らはもう卒業。学生として校舎に立って、制服で身を包んで学生らしく過ごすなんて経験はもうすぐ最後なのに、思い出を作らないわけないだろ?
それをどう言えば、まっすぐ[FN:名前]に伝わる?
『え、ぁ、うん、う~~ん…』
「??クロオ どうしたの、そんな言いにくそうにして…」
どうしたらいいのか、何をどう言えば良いのか検討すらつかなくて、モゴモゴと言葉にならない声を漏らしていれば見かねたケンマが助け舟を出してくれた。
「……はぁ。[FN:名前]、クロって最近彼女と別れたからそんなの関係ないよ」
ケンマの発言に、[FN:名前]は驚いて大きな声を出した。
「えっ?!いつ?!!あんなに可愛い子なのに?!ラブラブだったのに何で?!!」
『ゔ…もういーじゃんか、そんなことは!』
「よくない!」
[FN:名前]に詰め寄られて、かわいいしいい匂いだし 好きな女の子がこんなに近くにいるなんて久々すぎて、ありえないくらいに目をウロウロと さ迷わせてしまった。
ヤバい。今の俺、超動揺してる。
でも、そもそも元カノとの出会いや交際の敬意など、事細かに話したくない。
だって、客観的に見れば俺は結構ひどい言動をしていたのでは?
[FN:名前]に知られたら引かれたり"最低"って言われない?それだけは嫌だ…!
ただでさえケンマに絶望的な宣言を受けたことがあるんだ、隠せるなら隠したい!
……と、そう思ってしまったから。
だから、俺は顔ごと背けて『…言いたくない』と言葉を絞り出した。
「っていうか、クロオはまた私に教えてくれなかった!ケンマには言うのに私には言ってくれないの、何か仲間はずれみたいで悲しいんですけど…?」
そういえば[FN:名前]、昔は"テツロウ"呼びだったのに今は"クロオ"だな。
ケンマには変わらず名前で呼んでるのに、同じ幼馴染なのに俺は名字。
モヤっとした。また名前で読んで欲しい。
『いやいや、そういうつもりはねーっていうか…とりあえずまぁ、そういうことだから、呼び方も前みたいに戻しても…』
「もうクロオで慣れちゃったしいいや、テツロウってちょっと長いし」
『?!長くないですけどぉ?!1文字差じゃん!!!』
"テツロウ"って4文字だけど、"テツロー"なら3文字みたいなもんだろ!それなら文字数一緒じゃん!!
…その理論なら、"クロオ"は"クロー"で2文字みたいなもん…って言われるか。どうすりゃいいんだ?!
「1文字って大きいよね」
『ケンマまで?!!』
たった1文字だろ と叫ぶように言えば、
アハハ、と笑い出す幼馴染2人。
この朗らかな雰囲気に男女のあれこれがあったなんて誰も思わないだろうなと思いつつ。
俺が[FN:名前]を断った。あの時断らなければ。
今は元々と同じ、幼馴染としての距離。
こんなの、どうにかできるのかよ…
でも行動しなかったら、将来[FN:名前]が誰かと幸せになるのを指を咥えて見ているしかなくなる。そんなの嫌だ。
[FN:名前]はこんな気持ちで、こんな気持ちをどうやって鎮めたのか。
どうやって諦めたのか。諦めたふりをしているだけなのか?
でもケンマが、[FN:名前]は俺と二度と付き合うつもりがない旨を伝えてきた。
つまり俺を諦めて、次に目を向けた訳だろ?
ってことは、今は卒業前で色々興味関心が趣味とか記念撮影とか思い出作りに向いている?
別のことに気を取られている…
……誰か、俺以外に好きな奴ができた?
そう考えたら 口がハクと動いた。
何も考えられなくて、口が震えて、言葉が出てこなかった。
今、こんなに明るく楽しく幼馴染と過ごせているのに。
[FN:名前]は、俺らといる今も、そいつのことを考えてんのか?
_____それは、すごく嫌…だ。
泣きそうになった。
◇
大学生になり、ケンマや[FN:名前]と会うことが極端に減った。
OBとして母校のバレー部には顔を出したりしているけど、[FN:名前]とは共通点がなさすぎて、とんと会っていない。
俺達を繋いでいたのは"幼馴染"という関係のみだったと気付いて、その場所は家や学校という場所だったのだと今更ながら思い知った。
現在は無理やり理由を作ってでも[FN:名前]に会ったり出掛けているけど、全く手応えがない。
というよりも俺がデートだ…とウキウキしていても、
[FN:名前]は「幼馴染と久々の外出だ。嬉しいな。ケンマは誘わないの?誘っていい?」くらいの純粋な気持ちで、その考え方の差に日々打ちのめされている。
俺と[FN:名前]が一緒にいる時間があって、拒否されないだけ全然!いいんだけど!!
こうやってデートしてれば周りの奴らを牽制できるし、今ではそれを続けることで[FN:名前]に近付く悪い虫を排除できるから、[FN:名前]の認識がどうであってもいいという結論に至った。
……自分の恋心を自覚してから[FN:名前]への気持ちを募らせて、煮詰めて、今ではどうして[FN:名前]に告白されたあの時に断れたのか意味がわからなかった。
その度に当時のことを思い出して、その時の俺の選択は受験や部活のこともあるので最良だったと思うが、
それでもきちんと[FN:名前]に話して、ちゃんとお互い納得していれば…と思わずにはいられなかった。
ケンマにそれを話せば、
「それもそうだけど、一番の理由はそうじゃないよ。そこをちゃんと理解しないと[FN:名前]を理解して一緒になる未来なんてありえないからね」と更に釘をさされた。
お前はどこまで何を知ってるんだ?
アイツが見てるラノベの登場人物みたいな意味深さだな…。
ヒントをくれてありがたいけど、わかってるなら全部教えて欲しい気持ちもある。
でも、そこは自分で[FN:名前]から聞き出さなければならないと思ったので[FN:名前]にアタックした。
「あの時待っててほしいって言われてお互いが納得したとしても、クロオは別の女の子と付き合っちゃうんでしょ?」
そうだよね?と言いたげな[FN:名前]の視線。
たしかに、待っててもらってるだけで付き合ってないのなら、人助けで同じことをするかもしれない…と考えたところでハタと気付いた。
もしかして、俺に彼女がいたことが原因か?
そう思って経緯などをすべて話したが、
「でも、交際はしてたんでしょ?
あんなにかわいい子なんだから、一瞬もグラつかないとかありえないでしょ。」
[FN:名前]にアッサリ言われて、俺はやるせない気持ちになった。
可愛いと思ったことはあるけれど、恋愛感情で見たことはない。
だからこそ恋人同士の接触もしてないし、したいとも思わなかった。
だけど、それらを[FN:名前]は知らない。
そんな俺達をずっと外から見ていたのだから、そりゃあそういう考えになってもおかしくないよな…。
それでも、やっぱり俺は諦められない。
[FN:名前]を縋るように見れば、嫉妬とか怒りとかの感情すらない、ただただまんまるで何の感情ものせていないガラス玉のような目と合った。
「というか私はそこに一緒にいたわけじゃないから、それが本当だろうが嘘だろうがどっちでも変わらないの。
私がもしクロオと交際して、ふとした瞬間に、"クロオはあの女の子とこんなことしたのかな、こうやって考えていたのかな、こうやって言ったのかな"って考えちゃうのが嫌なの。」
そんな、ことを。
そんなことを考えていたのか…、そう聞いて、俺は何だか力が抜けるような…気を抜けば項垂れてしまいそうだった。
そんな考えで今後相手を見つけるとしたら、中々限られてくるだろう。
つまり、[FN:名前]は俺以外の奴とくっつく可能性が低い・難しいってことか…?
糠喜びをしそうになって、それを察したのか[FN:名前]は困ったように笑いながら首を傾げた。
「そうだね、元カノがいない相手を探すのって難しいよね。
でも、元カノがいるからっていう理由は、私達の場合にしか当てはまらないと思うよ。」
他の男の子に元カノがいたとして、それを知ったら複雑な気持ちにはなるだろうけど…。
その男の子の元カノに会ったり嫌がらせを受けたりしなければ、何年も生きてる人間なんだから、そういう人だっているでしょ?
私は、クロオに告白して、ちゃんと振られたから諦めたよ。
クロオの彼女ができたときに素直に応援できる人間になりたいと思ってたし、そうやって二人をずっと眺めて、二人が相思相愛なんだなって思った。
それで色々考えて、自分の中で納得して、折り合いがついたからようやく諦められた。
時間はかかったけど、ちゃんとできたの。
「だから、クロオも時間がかるかもしれないけれど、ちゃんとできるよ。大丈夫。」
はっきり、きっぱり言い切った[FN:名前]。
_____気付いて、たのか。
『俺の…きもち…気付いてたのか…?』
「最近、ようやくだけどね!
でも高校生の時に言ったみたいに、私達が幼馴染のは変わらないからさ!
クロオ、今後とも宜しくね」
満面の笑みで残酷なことを言う。
その無邪気さに俺の喉はひりついた気がした。
「それじゃ、家まで送ってくれてありがとう!今日は楽しかったよ!今度はケンマも誘おっか!」
ルンルンとしながら家に入っていった[FN:名前]を見届けて、ようやく感情と思考が追いついてきた。
俺は今、[FN:名前]に振られたのか。
少しの間、そこから動けなかった。
◇