俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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朽木様よりユウキちゃん、先輩たちのFAを頂きました!
ありがとうございます!!


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そして、同じく朽木様よりサンタなドロシーを貰いました!
うおおおおお! かわいい!
本当にいつもありがとうございます!


五十七話 属性とは赤・青・黒・白の4つである

 

 環境(メタゲーム)

 TCGでの遊戯、競技のことをゲームと呼ぶのならば、その頭に高次・超越(メ タ)接頭辞(せっとうじ)がついた言葉の意味を何を示すか。

 テーブルの上の攻防戦(ゲーム)のことだけじゃない。

 それは、ゲームの外の環境。今使用出来るカードの種類、これから製造されるカードの種類、大会に持ち込まれるデッキの傾向、時代ごとの流行り廃り、プレイヤーたちの流行り、その対策と傾向、様々な要因を仮想し、想定し、包括した用語。

 

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 世間の流行り廃りよりも自分の適性に合うかどうか、共鳴出来るかどうかが重要視される世界。

 誰もが独自のマイデッキを使い、コピーデッキの出回らない世界。

 それはそれで個性に溢れて楽しいとは思う。

 思うが、少し退屈だ。

 なんせ使うデッキが固定されてしまえば、特定個人対策(顔メタ)が出来てしまう。

 新しいカードが出ても、多少数枚入れ替えたりして強化するぐらいで、新しいデッキは作られない。

 適性に合わなければ、どんなに強いデッキでも、使っていても楽しいコンボがあっても組まない、組まれない、使われない。知識が広がらない。

 

 ――駆け引きがない

 

 寝食を削れとは言わない。

 熱意で戦い続けろなんて強制は出来ない。

 

 けれども、日課のように公式サイトを見て、参考にしているプロの記事ノートやSNSを見て、カードショップでのフリプをして、大会に足を運んで、そこで入賞した誰かたちのレシピを見て、大きな大会で勝ち上がったプレイヤーたちの激闘に胸を躍らせて、ちょっとこのカードとコンボ再現率高すぎるんじゃね? みんな使ってる? カスが! 強さに溺れた外道共め! 俺以外使うな、収監されてくれ! 俺が使い終わった後でいいから! なんて叫ぶような日常がない。

 強いデッキはある。

 誰かが考え抜いたデッキがある。

 それを同じ通りにカードを揃えて、同じように戦えるか? 使えるか?

 上手くいかない。

 そのコンセプトを理解するために一人で廻す、フリプで殺し合う、お前も同じデッキかよ。使われて、使って、初めて見える使い道、可能性がある。

 何度も何度も使って、俺の引き運だと使いこなせないから数枚入れ替える、調整する。弱くなる、元に戻す、そこでようやく意味がわかる。わからんかった、また調整する。自分のカード資産を漁る、使えるカードを探す、チューンをこなす。

 時間が奪われていく、どんどん吸われる、通勤時間の電車の中でスマホで検索し、メモアプリでそのカードの名前だけメモっておく、爆速で退勤する、うおおお! 平日大会! と向かう、そんな苦痛の中に喜べるのがハマっている時間だ。

 かつてあった青春。

 

 

 トップメタはその頂点に立つデッキだ

 

 

 プレイヤー人口数百万、複数の言語に翻訳されて、五十を超える国で販売されているLife。

 そんな人口数のプレイヤーたちのその時代での大会、数万人以上存在する競技者の中で結果を残しているもの。

 

 誰が使っても大体勝てる【勝率】

 使いこなせば引き出せる再現性の【品質】

 現環境の流行しているデッキの大半を打ち崩せる【安定性】

 存在しているだけで仮想敵として意識しなければいけない【影響力】

 

 この4つを兼ね備えたものがトップメタだ。

 トップメタとはその時代(シーズン)の象徴である。

 だから憶えていた。

 だから見たことがある。

 

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 かつての環境を染め上げた悪夢の象徴。

 

 銀河乙女(アウターアムニオン)

 

 その蹂躙が始まる。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

リーサルだ。夢を見る必要はもうない

 

 ……リーサル?

 確かに土地は10枚、膨大なコストの量だ。

 クリーチャーは銀河乙女の<アンブラ>と<ロゴス>の二体、前のターンから出ているから召喚酔いは解除されている。

 さらに魔石<黒き海の悪戯と気紛れ>の効果で、無属性のカードのコストが(1)少なくなっている。

 それを考えればコストの数値以上には連打も可能だろう。

 

 しかし、こちらのライフは無傷の15。

 さらに3人ユニットになった姉妹たちがいる。

 彼女たちの能力と生存性を考えれば斃し切ることなど難しいはずだが……

 

「<銀河乙女 詞知らぬロゴス>を起動。墓地から魔法カード<激動隆起(ガイア・インパクト)>を除外して、カラーアイコン(カラコン)を除いた数字コスト分のダメージを君に与える」

 

「いつの間に魔法を、いやさっきの手札交換でか!」

 

 手札で最初に引いたのか?

 

「墓地チェックを」「どうぞ」

 

 地柩セトの墓地を確認させてもらう。その数字は……!?

 

10点だよ」

 

「重すぎるコストだな、普通には使えないだろう」

 

 効果を確認する。

 

 <激動隆起(ガイア・インパクト)> (赤)(赤)(10)コストの通常魔法。

 ファイターもしくはクリーチャーを2体指定、5点ずつのダメージを与える。

 銀河乙女のデッキにはそぐわない色付きのカード。

 

 プレイコストはコントロールするクリーチャー分のパワー分減るとはいえ、魔石の効果もあって色は出せない。

 ロゴスで投げる(バーン)ためのピン差しか?

 

「よく引けたものだな」

 

「テーブルだと共鳴がのりにくいからね。呪言(カース)はあるかい?」

 

「確認処理を行う」

 

 ライフデッキを上から一枚ずつめくっていく。

 この一撃だけでほぼ半死だが……

 

「6枚目で呪言<間一髪>だ、ダメージは軽減させてもらう」

 

 1キル対策のためにいれてある呪言が出た。

 これで完全に凌げるとはいえないが、即死はしない。

 

「残り4枚に呪言は?」

 

「ない」

 

「その<間一髪>に、瞬間魔法<色褪せる夢>で打ち消しするよ

 

「っ。10点通る」

 

 まずい。

 残りライフは……5だ。

 しかし、土地は稼げた。焼畑は使えるが、そんな甘い火力ではないだろう。

 

「2コス扱いで通常魔法<照応置換>。コストとして銀河乙女のアンブラを墓地に送り、墓地からカード1枚を回収する」

 

「対象は?」

 

「<彷徨う羊水>だ」

 

「それに合わせて対応する! ライフ3点支払い、手札から<Si☆STAR 魔芸のエリ>を墓地に届ける!」

 

「手札から捨てて使える効果もちか、それで?」

 

「そうしたならばサブ墓地からカードを1枚、ライフデッキの一番上(トップ)にセットする! セットするのは」

 

「<間一髪>の再装填(セット)だね」

 

「以上、処理は終了だ」

 

 ライフデッキを上から3枚墓地に送って、内容を確認する。

 ……<焼畑>がここで混じっていたか。

 発動が僅かに早かったか?

 いや、5点を一撃で吹き飛ばされれば終わりだった。

 一時しのぎにしかならんが、重いバーンの一撃で焼き飛ばされるのは防げる。

 

 アンブラが消えた以上、まだ次のターンで捲り返せる。

 

「1コストで羊水を使用。ロゴスを除外して、デッキから<銀河乙女 地を這えぬプシュケー>を召喚」

 

 地柩セトがデッキから淀みなく取り出したのは、コスト4の新しいクリーチャー。

 そのデザインには足がなく、漆黒の宇宙を揺蕩う。

 

「プシュケーは足がなく、地を這うクリーチャーをブロック出来ない」

 

 その能力は――

 

「ただし、飛行・速攻を持ち」

 

 飛行に速攻!

 まずい、姉妹たちでは受け止められない。

 

4/4だ

 

「ッ」

 

 ……切りどころを早まったか。

 残りライフ5に4ならば、1点残って焼畑が間に合った。

 そこからエリの力を借りていれば。

 

 

「3コスト分支払い、手札から<銀河乙女 地を這えぬプシュケー>を召喚」 

 

 

 2体目!? もう手札に握っていたのか。

 

 残りの地柩セトの土地枚数は……2枚。

 防ぎきれん。

 <防災>をデッキにいれていても、打ち消されたか。

 

「バトルフェイズ。プシュケーで攻撃する。対応は?」

 

「1体目で間一髪でライフ1残る、が」

 

「2体目で攻撃」

 

 これは。

 

「防げない」

 

 無理だ。

 

「これでライフは0、ボクの勝ちだね」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 2人の決着はついた。

 けれども、場には奇妙な沈黙があった。

 

「……うわっ」

 

 その沈黙を破ったのはユウキちゃんだった。

 

「うわってなに?!」

 

「いや、その、うん」

 

 店長の言葉に、思わずといった感じで目を背けるユウキちゃん。

 まあ気持ちはわかる。

 

 

「強すぎて、ちょっと、引きました」

 

 

「えぇ」

 

「なに、あのデッキ……強すぎじゃない?」

 

「そうだそうだ。卑劣だぞー」

 

「淡々と急所目掛けて踏みつけてるよねぇ」

 

「三人とも言いすぎだよ?!」

 

 いや、言い過ぎじゃない。そんだけおかしいのだ。

 あの銀河乙女は。

 

 ――銀河乙女(アウターアムニオン)は独自性の強いテーマである。

 

 まず共通効果。

 一つ、場に出ている限り【銀河乙女】以外のクリーチャーを召喚(プレイ)出来なくなる……まあこれは墓地から効果を使ったり、名前をコピーしてくるやつとか出せばすり抜けられるが。

 二つ、場に2体までしか銀河乙女が出せず、それ以上を出した場合選んで生贄に捧げる必要がある。

 

 ……あーいや、確か昔の裁定だと古いほうが残って、新しい方は出せないみたいな逆ユニーク処理になってたか?

 後で店長に確認するか。

 

 そして、最後の三つ目。

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 前者二つの縛りが強すぎるせいで、なんとか工夫してもらおうと付け加えたんだろう特徴。

 これのせいで、最悪の……悪名高い【ギンガチ】コンボが成立してしまったんだよな。

 だが、それはそれとしてこの二つの縛りのためか、デザインされたクリーチャーパワーがまずイカれている。

 

 1コストで出せる0/1ステータス、ただし【除外されている数だけ手札から出るとバンプ(+Xパワー)アップしてる】<エロス>

 2コストで出せる2/2ステータス、ただし【出ると相手の色ありクリーチャーのコストが(1)多くなる】<アンブラ>

 3コストで出せる2/3ステータス、ただし【起動するだけで墓地魔法の点数バーンを投げつける】<ロゴス>

 4コストで出せる4/4ステータス。そんでぇ? 【飛行・速攻で、飛行なしクリーチャーをブロック出来ないだけ】の<プシュケー>

 

 さらに専用サポート魔法の羊水のせいで、ロゴスでバーンしてプシュケーで顔面殴りの6~8ぐらいぽんぽん削れるコンボが普通に出るのだ。

 おかしいと思わなかったのか、デザイナーは!

 せめてロゴスはタフネス2にしろよ! ケツ(タフネス)が無駄に3もあるせいで、バーンで多い2ダメで焼けないんだけど! 貴重な1コス3点バーン使うか、2枚費やして焼く必要がある。

 丸いケツがエッチだからタフネスのほうを高めにしたとかいう都市伝説があるが、やめなされやめなされ。

 ターン1という人類の理性が設定されてない時代のカードだよな、これ。

 プシュケーはなんだろうね。

 そのブロック出来ないデメリットとかってデメリットなってます? こいつをブロックに使うシーンなんてねえんだわ。

 

 銀河乙女は色のあるカード使いづらい?

 2体しか場に出せなくて厳しい?

 その上、他のカードと共存しにくい?

 だからちょっとカードパワー高めにしておきますね?

 

 気持ちはわかる、理解は出来るけど、単独で馬鹿みてーに強えんだよ!

 シンプルイズベストで完成されてんだよ!

 2体までしか出せない?

 2体で足りてんだよ殺意(パワー)がよぉ!

 1体ずつだったら確かに戦いきれねえけど、2体だと相手を楽々ぶち殺せるオーバー暴力なんだよ!

 なんでこんな噛み合うデザインになってしまったのか、めちゃくちゃコンセプトがわかりやすくて使いやすいんだよ!

 

 更に今回は出してなかったけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 こいつが出てきた時の環境はまさに荒れた。

 本当に荒れた。

 出てきたのは確か俺がそこまでLifeを熱心にやってなかった学生の頃だったが、名前だけは聞こえてきたぐらい本当に悪名高いデッキなのだ。

 当時のリストは<銀河乙女>を握るか、クリレスバーンアグロか、それを殺すためのバーン妨害コンボデッキの地獄絵図になったという話だ。

 

 故にトップメタ。

 並み居るデッキの大半を圧殺し、その殆どに高い勝率を保つデッキ。

 そんな血も涙もない性能を誇るのが銀河乙女だ。

 

 

「店長の鬼! 悪魔! 乙女!」

 

「そうだそうだ、彼氏なしー」

 

「なしぃ」

 

「なにをぉ!?」

 

 

 わいわいと騒ぐ店長含む四娘たちをみながら、まあ言われてもしょうがないだろう。

 

「……なるほどな」

 

 お?

 

「これは勝てなかったな」

 

 ここまで沈黙していたスカーが口を開いた。

 銀河乙女に圧殺されたショックで呆然としてたと思ったが、どうやら手札とか墓地を見ながら動きを見直してたらしい。

 本当に見た目によらず、丁寧なファイターだ。

 

「負けました」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 ファイトが終わった途端に私語をしてたのはちょっとマナーが悪かったと思ったのか、店長が頭を下げる。

 それに手を上げて。

 

「いや、勝負はついていたから問題はない」

 

 本当に丁寧な男だ。

 本当にファイターか? 見た目以外紳士なんだが。

 

 

「この強さ、教授が負けたのも納得する」

 

 

「……ぁー。ありがとうございま、す?」

 

 店長がバツ悪そうに目線を逸らす。

 すみません、倒したの俺なんだけど身代わりになってください。

 ていうか、教授よく店長倒せたな?

 ハンデスデッキは相性いいけど、銀河乙女だぞ。気合でマスカン叩き落として、出された銀河乙女を除去していかないと殴り殺されるか、願い殺しされただろうに。

 

「さすがは元12位」

 

「昔の話だよ」

 

 ん?

 

「店長確か元プロっていってましたけど、なんか偉かったりしたんですか?」

 

「君は知らなかったのか? そちらの地柩セトは、十二星座(ラスール)の12位だった人ぞ」

 

 らすーる?

 …………らす、らす、ん?

 

「ラスールってたしか、なんかプロのトップの称号でしたっけ? 100人ぐらいいる」

 

「それは百命(ハンドレッド・スターズ)だね」

 

「そのうちの上位12名が十二星座。つまりラスールだ。彼女はその中でも12位まで上り詰めていた人だ」

 

 あーなんか星の名前みたいなのがついてたりするやつだったか。

 で、そのうちの12位?

 

「全世界で番付12!? 凄ぇ」

 

 世界選手権とかのベスト12に入ってたようなもんだろ、それ?!

 レジェンドプレイヤーじゃん!

 八千矛《ヤチホコ》の仲間じゃん!

 

「あの、さんづけしたほうがいいですかね」

 

 やべえよ、やべえよ。

 世界が違うとはいえ、レジェンドプレイヤーのところで働いてたのか俺。

 

「いやいやいや、昔の話だから、昔の! やめて! かーなーり運が良かっただけだから!」

 

「昔だからって偶然でランキングそこまで上いけるわけねーんだよなぁ」

 

「それはそうだ」

 

「ボクのデッキが強かっただけなのもあるからね!?」

 

「それはそうですね」

 

「君たち??」

 

 銀河乙女の暴力で殴られたスカーと目があって、頷き合う。

 トップメタは理不尽だろ。

 いや他の11人もどうせ同じようなデッキ握ってるに決まってんだが。

 

 あれ? もしかして俺が調べてないだけで、かなりクソ高いだけで揃えられるデッキだったりする?

 そしたら、下手したら100人中90人ぐらい銀河乙女で殺し合ってたりする可能性も高いな。

 

 確かあの頃の日本大会でトップ16人中9人が銀河乙女で占められてたぐらいだし。

 あのあと【ギンガメ】の”銀願”が制限受けて弱体化したけど、世界選手権終わりまで確か禁止されてなかったんだよなあ。

 

「まあファイターの強さはデッキも込みですし」

 

「だな」

 

「いやあー」

 

「ドンビキする強さだもんね」

 

「ユウキちゃん??」

 

 それはそれとして引く。しょうがないね。

 

 そんな風に和やかな雰囲気が流れて。

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

 スカーの言葉に、即座に向き直った。

 

「ふぁっ!?」

 

 俺は店長を座っていた椅子ごと後ろに引き抜いて、下がらせた。

 サレンがボードを構えている。

 マリカもボードを展開して。

 

「教授?? あのだれ?」

 

 ユウキちゃんだけがちょっと流れがわかってなかったが。

 

「……仇討ちってことかな」

 

 店長が椅子からよろよろと立ち上がりながら尋ねる。

 あ、前に出ないでください。危ないから。

 

「否、戦うつもりはない」

 

 スカーが制止するように両手を上げる。

 ボードも展開していない。

 戦うつもりはない、というのは本当のようだ。

 

 しかしあの鍛え上げた身体だ、いざとなれば暴力だけで脅威になるだろう。

 

「教授も闇ファイターだ。どのような死を迎えても当然の末路。尋常なファイトに敗れたならばなおさらだ、仇などと恨む筋合いは誰にもない」

 

「弟子なのに師匠の仇を取ろうとは思わないの?」

 

 サレンの質問に、スカーは首を横に振る。

 

「弟子だからこそだ。世話になっていたのも昔のことだが、あの人は疲れていた。教会に追われ、他の闇ファイター共とも争い、止まれなかった。それで敗れたのがどちらでもない、表のファイターだったというのは救いだろう」

 

 教会?

 そんな疑問を覚えたが、続くスカーの言葉に吹き飛んだ。

 

 

「おかげで、己が倒さずに済んだ」

 

 

 そう告げるスカーの声音は淡々としていて、だからこそ真実味に帯びていた。

 

「これ以上教授が醜態を晒さずに済んだことを感謝する」

 

「い、いえ……でも、それじゃあなんでここに?」

 

「私用と本題が一つずつある」

 

 私用と本題?

 

「一つは、教授を破ったファイターがどれほどの手合だったのか知りたかった。これが私用だ」

 

 すみません。

 俺、身代わり立てちゃいました。

 

 ああ、店長が凄くすまなそうな顔してる。すいません!

 

「……ボクの腕が知りたくて、テーブルファイトを持ち込んできたと? なんでボードで挑まなかったのかな」

 

「デッキの強さを知るだけならばテーブルファイトで十分だろう」

 

 それはそう。

 なんだろうかこいつ。

 闇のファイターっていうわりにはかなり言動がまともだぞ。

 

「……闇ファイターらしくないね」

 

「よく言われる」

 

「闇ファイターなのは否定しないんだ?」

 

「分類としては闇ファイターに所属している自覚はある。あのカス共と同じにされるのは心外だがな」

 

 つまり闇カードは持ってるわけだ。

 だが、どのカードだ?

 さっきのテーブルファイトだと店長が圧殺したせいで、Si☆STAR以外のカードが出る前に終わったぞ。

 

「もしかして、”闇狩り”?」

 

 なんだそれ?

 

「知ってるんですか、サレンさん?」

 

 サレンの呟きに、ユウキが尋ねる。

 

「闇ファイターでありながら他の闇ファイターをぶっ殺してる奴がいるって聞いたことがある。その通称が闇狩り、噂だけだからそんなのいるのかって思ってたけど」

 

「……そう言われることもある」

 

 あ、否定しなかった。

 ということはガチなのか?

 

「スカーってだけでもそれっぽいのに、別の二つ名なんだぁ」

 

「己が名乗っているわけではない……」

 

 あ、顔をそらした。

 いやたしかに、スカーってだけでもコテコテなのに、さらに闇狩りとか凄いよな。

 二つ名二つありとか、自分で言うのは恥ずかしいよな。

 なんかわかるわ。

 

「ごほん。本題だが」

 

 あ、話題戻した。

 

「己の追っている闇ファイターが、こちらに向かっているという情報を掴んだ。それを伝えに来た」

 

「追っている闇ファイター……?」

 

「また闇カード使いがでたの?」

 

 なんかうんざりって顔をしてるユウキちゃんたち。

 まあメガバベルのあれで大変だったからな。

 俺がかちあえばぶっ殺せるんだが。

 

「どうやら闇ファイターと戦ったことがあるようだが、甘く見るな。”奴”は【顔差し(ネームド)】だ」

 

 ネームド?

 

 

 

 

「――奴は”101人目”と呼ばれている」

 

 

 

 

「奴は最低最悪の外道(クズ)だ。己が殺すまで身辺に気をつけて、集団で動いて欲しい」

 

 ガタン。

 

「……店長?」

 

 店長の手がよろめいて椅子を倒した。

 その顔は……死人のように血の気が引いていた。

 

 

「……あの化け物が来てる、の?」

 

 そう呟いて、()()()()()()()()()

 

「血が!」

 

 髪に隠れていた右目から血が流れた。

 

 

 

 

 






 大地を揺るがし、震え立たせる激怒の一打なり

                     ――激動隆起
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