俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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大変おまたせしました!
冬コミの同人原稿も終わって、ようやく更新です
次回からはそんな待たせないと思います



真機楼様よりリナ先輩のFAをいただきました!

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朽木様より素晴らしいドロシーやサレンちゃん
そして可愛いユウキちゃんのFAを頂きました!
旧Twitterでもたくさん書いていただいてとても嬉しいです!

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そして、素晴らしすぎる主人公フツオくんのFAをヨン様より頂きました!!
すっごい!!

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そして、バトルボードの考察デザインまで頂きました!
うおーすげー!! ふわっと考えてた仕組みが完全に絵に!?
ありがとうございます!

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五十四話 手札から場に出た時と、場に出た時は同じではない

 

 

 もくもくと立ち込めていた瘴気が消えていく。

 

「あ、終わった」

 

(ふん)ッ!」

 

 ピシピシと障壁にヒビが入った瞬間だった。

 師範が目にも止まらない速度で叩き割った、のかな? 多分きっと、見えなかったんだけど。

 

「死ね!!」

 

 ゴゲッ

 

「あ」

 

 地面に潰れて倒れてた闇ファイターさんが上へと飛んでいった。

 いや本当に直角に真上に。

 え、人間ってあんな飛び方するの?

 ていうか蹴られた? なんか見えない。

 

「あ、死ぬ。死んじゃう。まって、他所様の前じゃだめだよぉー」

 

「そうです、師範! 胴体だけは勘弁を! 頭は駄目です!」

 

「首も~!」

 

 これ見ていい奴?

 セト店長とサレンさんに振り返って、二人ともバツって手を組んでた。

 目を逸らしておくべきかな、かもね。

 

「チッ!! ……おっと悪いな、客人を放置しちまって」

 

「イエ、オカマイナク」

 

 なんか手足が曲がっちゃいけない方角に曲がってる人が運ばれていくのなんて見えていない。

 口から泡吹いてるけど、見てないってば、本当だよ。

 

「あの、大丈夫なんですか?」

 

「命と口だけは利けるようにしてるからな」

 

 いやそっちじゃない。

 いやそっちも大事だけど、そうじゃなくて。

 

「闇のファイターって警察に突き出さなくて」

 

「ああ。それなら、大丈夫だ。こうだからな」

 

 そういって老師が取り出したのは既に引きちぎった黒ずんだカード。

 それが風に吹かれてパラパラと砂になっていく。

 

「生み出した分身カードだな、こりゃあ」

 

「生み出した?」

 

「無理やり外から染め上げて、闇のカードにされた奴から生み出された分け身ってやつだ。んでなくなった場合、消えちまう。分身だからな」

 

「分身……じゃあ本体は別に?」

 

「十中八九、黒幕が持ってやがるな。シャカバジの連中が負けたことも伝わってるはずだ、分け身からの情報が本体に伝わるからよ」

 

 えっ。

 それって不味いんじゃあ。

 

「安心しろ。近くに気配はねえし、見れるとしても分け身を出してる間の攻防だけだ。気になるならそこらへんだけデッキを調整してやれば逆にカモだ」

 

「師範、普通の子はそんな簡単にデッキ弄れないんですよ?」

 

「だからおめえがいるんだろうがよ、ああ。セトよ」

 

 なんか大人の会話をしている。

 と、その時だった。

 

 さっきまで上を見上げてたマリカさんがテクテクと歩いてきたのはって。

 

「マリカさん、大丈夫?」

 

「うんー?」

 

 首を傾げてるけど、なんで気づかないのか。

 

「怪我! 怪我してる!! あと服が!」

 

 ちょこちょこと右手以外の場所から血が滲んでるし、それ以外の服もボロボロだった。

 あちこち服が破けてペロンってしてる、ペロンって!

 

「大丈夫だよ~」

 

「いやどうみても大丈夫じゃないんだけど!?」

 

「慣れっこだし、すぐに救急箱持ってきてもらうから~」

 

「ちょっと傷だけ診断する」

 

 そういってサレンさんが一言断ってから、マリカさんに手をのばして、あちこち触りだした。

 私もなんかしないと、あ、私椅子運びます!

 

「あえ? お客さんにやらせられないよー、これぐらいならー」

 

「頭とか打ってたらまずいし、いいから座って」

 

「どうぞ!」

 

 受け取った椅子を慌ててマリカさんの後ろに置いて座ってもらう。

 

「背中とかは怪我してないみたい」

 

「あちこち擦過傷があるけど、骨とかは大丈夫そうだね。頭は丁寧に庇ってたみたいだし、吐き気とかは?」

 

「だいじょうぶだよー」

 

「そう……よかった」

 

 ニコニコと返事をするマリカさんに、呆れたような顔のサレンさんだった。

 さっきまで闇のファイトをさせられてたとは思えない顔だなぁ、ほんと。

 

「にしても闇ファイトで余裕で勝つなんて、噂に違わない腕だね」

 

「あえ?」

 

「貴女でしょ? ()()()()()()()()()()

 

「え? そうなの?」

 

 サレンさんの言葉に、驚いて振り向いてしまった。

 秘蔵っ子って来る前に言ってたあの?

 

「これほどの腕をもちながら人刹マリカなんて名前はまるで聞いたことがない」

 

 たしかに。

 どこにでもいそうなちょっとレガシー持ってるだけの中学生ファイターの私ならともかく、サレンさんが知らないなんて珍しいもん。

 

「さらにファイトでは相手の水滸伝デッキの動きはもちろん、レアカードである十絶陣も見事に躱して倒してみせた」

 

 確かに、全然知らなかったカードに対しても冷静に対処してたもんね。

 まああんな見え見えの(ブロッカー)なんて殴りかかる気になれないけど。あんなの除去するよ、除去。

 それで誘発する能力とかあったのかなぁ。

 

「そして、なにより能力を秘すべきレガシーカードの継承者。だから存在を秘されていた、秘蔵っ子。それが人刹マリカ、あなたなんでしょう?」

 

 ドヤッと音が聞こえそうなぐらいに腕組みをして、サレンさんはそう断言した。

 

「なるほど……!」

 

 確かにマリカさんは闇のファイトで共鳴率を奪われてるはずなのに全然怯まず、結局は捻り潰した。

 相手が弱かったのもあるけど、あの状態で怯みもせずに、デッキがきちんと廻ってるというだけでも凄いと思う。

 私の前の人工ダークファイトロボとの戦いと比べたら雲泥の差だ、気雲流だけに。

 

 ……ロボとのファイトってなんだろうね。

 

「? ぁー」

 

 なのに、何故かマリカさんはちょっと首を傾げて。

 

「そうかもぉ?」

 

 なんでちょっと変な返事をしたんだろう。

 

「ふむ。仲良くやれそうか」

 

「あ、ししょー」

 

 セトさんと一緒に師範さんが戻ってきた。

 ……なんか手ぬぐいで手を拭いてるけど、汚れたからとかそういうのだよね?

 なんか赤黒かったりするけど、あれ以上やってないよね? ね?

 

「おう。マリカ、よくやったな」

 

「へっちゃらだよ~?」

 

「まあちゃんと手当てと今日は訓練は休んどけ。それなりにオドは消費しただろうしな」

 

「……オド?」

 

 その言葉、どこかで聞いたような。

 

「ん? ああ、闇のファイトそれとイグニッションファイトで消費する生命力だ。体力、気力、存在力って言ってもいい。土地というカードを経由して、ファイターが提供してる文字通りの精命力(オド)を使う」

 

「オド……」

 

「あまり聞いたことがない単語なのはどういうこと?」

 

 サレンさんも知らない?

 いやたしかに、あの社長との戦いの時ぐらいしかオドって言われなかったもんね。

 

「えっと、それはね」

 

 セト店長が困ったように師範を見て、構わねえだろと首を振った。

 

 

()()されてるから

 

 

 

「「秘匿?」」

 

()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……実体化って。

 

「不思議に思わなかったか? 映像はちゃちいが、路上でもボードを使えば映像化したファイトが出来るってことによ」

 

「それって……充電したボードによる映像投影じゃあ?」

 

 エーアールとかなんとかって聞いてる。

 

「ボードの電力だの機械はあくまでも補助だ」

 

「補助?」

 

「カードの映像的な実体化及び効果を素人でも出せるように底上げするための【祭具】がバトルボードの実体だ」

 

 ……祭具?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言われて気付いた。

 確かに、ファイト……それで映像が出るならもっと色んなところで出てるべきだ。

 こんな小さなボード一つでカードが映像になるし、音だって出てる、それでやり取りが出来る。

 けど、うちにあるテレビとかたまに見に行く映画館とかはそんなのじゃない。

 道端にある大きなテレビから映像実体化もしないし、携帯もそんなのじゃない。

 

 Lifeのことだからそういうもんだと思ってたけど、違うの?

 

「そもそもある程度だけど衝撃が発生してる時点でおかしいし」

 

「一般的な映像は衝撃出ないって聞いてびっくりしたよ~」

 

「そうか……立体映像だもんね、うん」

 

 そういえばそうだよ!

 そこからおかしいと思ったよ!

 

「まあだからこそそういう制御と補助のためにも安全にファイトが出来るようにバトルフィールドが開発されたわけだが」

 

「ですね。人によって発生衝撃に大小ありますから、その事故防止のためとスピリットの回収も兼ねて作られたらしいですし」

 

「教会の連中の祭祀場(さいしじょう)をパクリやがったもんだがな」

 

「師範……」

 

 なんかすごいことを聞いちゃってる気がする。

 が、大事なのはそのことじゃない。

 

「秘匿ってなんで? いや、大変なことだとは思うんだけど隠すほどのことなの?」

 

 そこらへんでファイトなんてみんなしてるし、今更じゃと思う。

 

「ん? 秘匿っていっても大事なのは一つだけだ」

 

「一つだけ?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()、それだけだ。言葉には力が宿るからな

 

 

「普通のファイトでね。オドをコストっていうのは、生命力(オド)をカードに注ぎすぎないようにするための縛りなんだよ」

 

 注ぎ過ぎないように?

 

()()()()()()()()()()()()()。それこそ命を削るようにな」

 

「……イグニッションファイト」

 

「そうだ。イグニッションファイトでのみ、オドの使用が解禁される。それ以外では決して使うな、宣言するな。ただのゲーム、競技としてのやり取りってんなら表面上のなぞり、コストの宣言だけで事足りる」

 

 師範とセト店長の説明を、私はなんとなく理解が出来るような気がした。

 メガバベルの社長との戦い。

 イグニッションファイトは文字通りお互いの命を燃やし尽くすようなファイトだった。

 ライフカードを一枚引き抜いて、叩きつける度に果てしない高揚感に、同時に自分が削れるような消失感があった。

 あんなのを日常茶飯事でやるなんて出来るわけがない。

 

「……つまり、”宣言”が正しくなければ正しくイグニッションは出来ないと」

 

 サレンさん?

 

「そうだ。宣言と手順、それがなければファイトは成り立たねえ。オドをコストと言い換えるのもギリギリ嘘じゃない、言い換えによる置換だ」

 

「ふむ」

 

「あ、あとイグニッションファイトを経験したことがあるんならわかると思うけど。オドでもコストでもカード効果は変化しないよ? 共鳴力の強化、より意思を乗せることは出来るけどね」

 

「……つまり無駄打ち?」

 

「言い方が下品だぞ」

 

「「??」」

 

「マジか、お前ら。特にセト、お前20超えてるだろうが」

 

「え、なんで??」

 

 なんで無駄打ちが下品なんだろう?

 師範さんが呆れてる。

 

「まあそういうこった。あとこれは基本、一般人には黙秘事項だから迂闊に喋るんじゃねーぞ」

 

「師範がべらべら喋ったんじゃないですか!」

 

「そーだそーだ」

 

「レガシー持ちを一般人扱いするほうが失礼だろうが、馬鹿」

 

 そういってからパンパンと手を叩いた。

 

「で、とんだ飛び込み案件があったが闇ファイター対策入門編はここまで。参考になったか?」

 

「うん、ありがとうございます」

 

「そんじゃ、マリカのことをよろしくな」

 

 

「「「え?」」」

 

 

「十分な実力は身につけたし、そろそろ同年代の友人もいたほうがいいだろう」

 

(わぇ)、ちゃんと学校に友達いるよ~?」

 

「ファイトでの悩みとかは上手く出来ないっていったじゃねーか。わしはちゃんと憶えてるんだぞー」

 

「あれ~?」

 

「いやいやいや、ちょっとまってください! 確かに知り合いになれたし、友達になれたら嬉しいですけど!」

 

 押し付けっていいの?

 え、大丈夫なの?

 

「セトの奴もそこそこ立ち直ってるみてえだし、店に顔出させるだけだ」

 

「そ、それぐらいなら?」

 

「強いファイター大歓迎。腕の見せ甲斐がある」

 

 あわわわ、ファイト馬鹿なサレンさんがノリノリだよぉ!

 

「ん~ししょーがいうことなら」

 

 あれ?

 マリカさんが椅子から立ち上がって、こっちに。

 

「それじゃあよろしくねー。我は人刹マリカだよー」

 

「あ、うん。私は祇浄ユウキです、よろしくおねがいします」

 

 伸ばされた右手を、握手で返す。

 わ、思ったより硬い手だ。

 鍛えてるんだなぁ、そんな事を考えて。

 

 

「この中で最強ってあなただよねー?」

 

「へ?」

 

 

 そんな考えてもなかった言葉でびっくりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「師範。ボクのことそんなに頼りなく思ってますか? 心配してくれてるのはありがたいですけど」

 

「アホたれ」

 

「アホ!?」

 

「なんでわしが、序列も上だったテメエの心配なんざしなきゃならねえ。もうしょぼくれてねえだろ」

 

「いやいや、いや、あの十二聖座(ラスール)は色々と下駄を履かせて貰ってたから」

 

「偶然や下駄でハンドレッド・スターズ(百命)の12位まで昇れるもんかよ」

 

「……」

 

「あの一位や二位の理不尽共と比べればまあみんなおまけみてえなもんだが」

 

「それは言っちゃいけないことだと思います」

 

「お前、あいつらに勝てんのか?」

 

「……――……」

 

「目をそらすな。まああいつらには、()()()でもぶつけてやりてえところだが」

 

「? マリカちゃんでも流石に無理だと思うけど」

 

「……こっちの話だ。それよりもだ、今回の動きだ」

 

「動き?」

 

「明らかに多すぎる闇のカード、どいつも粗製だったが明らかに狙われてた動きだ。黒幕がいやがる、マリカとレガシーカードを奪われるわけにはいかねえ」

 

「だから集めると」

 

「あいつは出来うる限り強く育てたつもりだが、そろそろ外のレベルと使い手たちも知るべきだ――本当の戦いはまだこれからだからな」

 

「十二聖座の義務……そして、百命のうち――百人の英雄たちの再現」

 

「そうだ」

 

 

 

 

浮かび上がる災厄(バブル)との対峙(マッチ)が来る頃だ

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

≪ふむ。気雲流か、カビ臭い戦士の流法と思っていたが中々どうして手強いな≫

 

「はっ、はっ」

 

≪そろそろ息を整えよ、ディール。今のお前ならばこの程度のオドの消費、膝は折るまい≫

 

「チッ……役立たず共め、二十枚も生んでやったっていうのに使えねえ。レガシーの一枚でも確保どころか返り討ちなんてどいつもこいつも役立たずが」

 

≪にわかじこみではものの役に立たんか。まあ情報は集めた、頃合いだ≫

 

「……情報っていってもレガシー使い共が集まってやがるぞ。しかもあの精霊狩り、くそ、涼しい顔しやがって」

 

≪抑えよ。お前の怒りに満ちた顔は可愛らしいが、まだ身体は整っていないのだ≫

 

「……いつになったら終わるんだ。精霊狩り、それにあの木偶め。ぶっ殺してやる」

 

≪奴らを呼ぶ≫

 

「奴ら……? 【顔差し(ネームド)】共かよ、あいつらは嫌いなんだが」

 

≪怖いのか? 安心せよ、あれらも我の可愛い子だが、お前ほどじゃない。ククク、嫉妬するな≫

 

「腹を撫でるな。オレは怖くなんかない、ただキメえだけだ、あいつらは」

 

 

 

「あの化け物どもは――教授(プロフェッサー)なんぞとはわけが違う」

 

 

 

 

この町なんざすぐに地獄になるぞ

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……なーんか忘れてる気がするな」

 

「師範?」

 

「いやいいや。それよりマリカの手当て、終わったらちょっと一杯付き合えや。本命っていってたな? 良い奴出来たのか、んー?」

 

「え、あの、それはあわわ」

 

「いいからいいから、年だけは無駄に重ねてるからどーんって相談してみろ。飲みやすいが、強い酒とかいるか?」

 

「相手まだ未成年ですよ!? 駄目だってば」

 

「――犯罪はいかんぞ、犯罪は」

 

「違いますよぉ!?」

 

 






 誰もが言葉にせずとも気づき、騒ぎ始める
 まるで喇叭だ。


                    ――前兆
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