俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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遅くなりましたが、なんとか更新!
長々と続きましたがVS命知らずの決着です


そして、朽木様からたくさんのFAを頂きました!


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こちらはみんなの身長比率です!
みやすい~

48話のマリカのFAをいただきました! 本当にありがとうございます

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こちらは美少女なドロシーちゃんですね、でっかいですね

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これが絶望だ、少女よ
ターンエンド



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ヨン様より可愛らしいユウキちゃんとセト店長のFAもいただきました!
ありがとうございます!

これが主人公だ! 主人公か??
あと多分メインになりそうなヒロインの姿です



五十三話 功はあらゆるカードタイプではないものになる

 

 

 それは巨獣であった。

 青々とした草原を思わせる毛並み、蹄鉄類を思わせる蹄に、牛のような尻尾、熊のごとく分厚い四肢が肉食獣を思わせるしなやかな胴体を支えている、人を遥かに超える巨躯を讃えている。

 その両眼は琥珀色に澄んでいる。

 そして、なによりも特徴的だったのが()

 

 雄大(ディア)な鹿を思わせる剣角(ホーン)が生えている。

 

 それは言うなれば角の生えた巨虎だった。

 

「……青い虎」

 

「ディアって、鹿じゃなくて?」

 

「確かに鹿もディアっていうけど、正確にはディーア。偉大なる敬愛するもの(ディーア)で、角って意味だよ。ほらみて、あの眼と雰囲気」

 

「……本当だ」

 

 マリカさんに呼び出された巨大な虎。

 肉食獣のはずなのに、全然怖くない。

 大したことがないわけじゃない。ものすごい存在感、サイズもあって圧倒される。

 そのはずなのにとても自然だった。

 まるで景色、風景と一体化しているような、自然そのもののような雰囲気。

 

 ――ドロシーさんの、天戒龍(エンジェルハウンド)とは真逆だ。

 

 あちらは()()()()()()()()()()、こちらは()()()()()だ。

 何故かそんな風に並べて考えてしまった。

 

「来やがったなぁ、”秘虎(ひどら)”ぁ!!!」

 

 それを見て叫ぶ闇のファイターのケンドっていう人。

 その威勢はいいけれど、足が少しだけ下がっているのが見えた。

 

「ビビりやがって」

 

 ふんと呆れたように師範さんが声を漏らす。

 それでどんな風に動くのか。

 

 

「ディアホーンの効果発動。で、ターンエンドだよぉ」

 

 

 え?

 

「なに?」

 

「ターンエンド。そちらのターンだよ」

 

 呼び出すだけで何もしないで終わった?

 能力発動って、何も変わってなくない?

 

「いや、召喚酔い? だから能力を使えなくて」

 

「あいつは速攻、貫通持ちの5/5のクリーチャーだ。足止めの関門さえなければぶん殴ってたな」

 

 そんな。

 じゃあ、あの<静寂の関門>のせいで殴れなかった?

 

 ……ん?

 でも、マリカちゃんの土地。

 

 今土地セットすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「はーははは!! 俺のたぁあああん!!」

 

 闇のファイターケンドが馬鹿の笑い声を上げながらドローする。

 !

 今、あいつのデッキ黒く滲んで……

 

「もはや俺の勝利は決まった! 土地をセットしぃ、手札からクリーチャー<十絶陣>を召喚!!」

 

 引き抜かれ、叩きつけるようにボードに置かれたカード。

 

 それと同時に柔らかな風が舞っていた周囲が、より闇が滲み出てくる。

 思わず引き下がった目の前には、無数の光の火花が漂っていた。

 

 黒く塗り潰されたカンバスに散りばめられた冷たい星のような光景。

 

「! 十絶陣!」

 

「知ってるの、セト店長!?」

 

「う、うん……あれは! 星座のファイターにも使う人がいるレアカード! 防衛用のクリーチャーだ!」

 

「防衛用?」

 

「パワー1/タフネス10の、”防衛”クリーチャー。自分から攻撃は出来ないけど、ブロックしてダメージを与えた相手を破壊するスレイヤー能力を持っている。それも機先があって」

 

「必ず先に殺す必殺の壁……」

 

 機先は戦闘を行った時に先にダメージを与える能力。

 そして、スレイヤーはダメージを与えた相手を即座に破壊する能力だから、一方的に倒してしまえる壁ということになる。

 しかもタフネスが10……破壊不能じゃないから破壊除去で取り除けるけど、バーンやクリーチャーでの突破は難しい。

 

「でも、それだけ……じゃないんだよね?」

 

 けど、それだけだ。

 それだけならもう一体クリーチャーを出せば簡単に乗り越えてしまえる。

 

 脆弱な布陣、あのケンドが余裕があるわけがない。

 

「ええ、あれは――」「そして、関門に全コストを注ぎこんで徴税カウンターをセット!」

 

 そう告げる店長の言葉を押しつぶすように高笑い。

 

「ターンエンド!」

 

 

 ん?

 え、あれだけ?

 

「え?」

 

「あん?」

 

「たーんえんど、でいいの?」

 

「そうだ! どうした、そのたった一枚の土地でなにかするつもりか?」

 

 あの余裕、代替コスト(ピッチスペル)あたり握ってる。

 全コストっていいながら土地1枚使わずに残してるし。

 打ち消しが出来なかったディアホーンは通したけど、それに対してはあの壁で対応。それ以外は小型とかなら殴られて土地を増やして、大型なら攻撃コスト分は払えないから動けない。

 あと1ターンは先延ばしが出来る。

 そういう考え、かな??

 

 

「そのエンドフェイズにぃ、魔石<気雲転命>で土地1枚を功に、これはレディ状態にセットされる」

 

 無傷の土地一枚を残したまま功が出来た。

 でも次のアップキープにはまた戻っちゃうけど、なにを。

 

「ディアホーンの能力起動。気1つと手札1枚捨てて、()()()()()()()()()

 

 

「なに?」

 

 どこか呆れたような、困ったような顔でマリカさんが言った。

 

「裏返して~パタン! 次のアップキープまで世界に融けちゃうよ~」

 

 裏返しになり、呼び出されたばかりのディアホーンの姿が空に融ける。

 それまでいたのが嘘のように姿を消してしまった。

 

 ? なんでそんなことを。

 

「はん、今更一枚ぐらいの気稼ぎか? 残り二枚でなにを」

 

「はい、おわりー」

 

「あん?」

 

「なにもしないなら、()()()()()()()()()

 

「なにもない! さっさと始めて終われ、お前の最後のターンをなぁ!」

 

 何故か笑う。

 笑いながら、待ち構えるケンドっていう闇ファイター。

 

 それだけあの十絶陣に自信があるの?

 どんな厄介な能力が。

 

 

「わぇのたぁーん!!」

 

 

「おいおい死んだわ」

 

「え、おじいちゃん?」

 

 

「レディ、アップキープフェイズ――ディアホーンが表返り、世界に帰還するよぉ」

 

 

 そう告げた時、空中からおぼろげに、絵に描かれるようにゆっくりとディアホーンが現れた。

 静かに、優雅に、足音も立てずに、地面へと佇む。

 

「それで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あん?」

 

「ドローフェイズ。メイン、ライフをドロー。魔石<気雲転命>を置いてー。土地を2枚起動ー、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 するほうを……選択?

 

「なるほど」

 

「あー、残り枚数的に勝負決まるね」

 

 サレンさんとセト店長はわかってる?

 土地になにか。

 

「2コストで通常魔法<還元>を発動、そちらの関門を破壊! 妨害しますかぁ?」

 

「は?」

 

「とぉーる?」

 

「ふざけんな! 通すわけねえだろうが! <軸星の砲手>を生贄に捧げて、瞬間魔法<献身の証明>で打ち消す!」

 

 あ、そっちか。

 モブさんも使ってた打ち消し魔法。

 攻防に使わせないで場持ちするクリーチャーを使うデッキでなら採用の余地があるんだ。

 

 でもそれ今使っていい奴?

 

「馬鹿め! 生意気にも秘宝破壊カードを仕込んでやがったみたいだな、俺にだって備えはあるんだぜ!」

 

「土地1枚残ってたから知ってたよぉ?」

 

「あ゛?」

 

「二つの魔石<気雲転命>を発動。今使った土地2枚を裏返して、レディでセット!」

 

 あ、あれそうやって使うんだ。

 実質土地の踏み倒し、魔石だからうっかりダメージで落とすこともあるけど使い終わった土地も”功”に再利用できる。

 

 ん? となると+2枚で……

 

「土地2枚起動で2コスト生成ー、功を2つ起動して気を2つ生成ー」

 

 2+気2つ。

 

「土地2枚残してー、土地3枚を起動して()()()()()()

 

 え?

 

「通常魔法<百歩芯拳>を発動、X分の代用コストに功2の土地の3で合計5のぉ2倍だからぁ」

 

 

「1+X10の――11点ダメージだよぉ

 

「あ゛?」

 

 

 そう告げるマリカさんの手からはとてつもなく渦巻く光が宿ってた。

 

「じゅ、じゅういち?」

 

「11だよ」

 

 ケンドのライフデッキを見る。

 始まった時は20あったデッキは半分ぐらいで、そう、それこそ半分もある。

 

 そんな半分(ライフ10)ぐらいなら即死する大火力(1 1 点)

 

「は? は?! はぁああああああ!? 馬鹿な! 馬鹿な!! なんで気を出せる!?」

 

 

 

秘虎の効果は、場に出たターンまでだろうが!

 

「うん。ディアホーンの能力、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 土地を擬似的な功にする能力!?

 

「なにそれ、それってすごく強くない?!」

 

 気導使いならとんでもない強さだ。

 これがレガシーカード。

 

 あのエンジェルハウンドの時にも思ったとんでもないパワー。

 

 

 

「だから、功から()()()()()()()()()()()()()()。場に出たからね」

 

 

 

なに言ってんの?

 

 え?

 カードからひっくり返って、またひっくり返ったら誘発?

 なにそれ。

 

「そ、そんなの許されるの!?」

 

「さすがレガシーカード」

 

「ふふふ、もっとひどいよ、あれ」

 

 サレンさんが諦めたような顔をしてる。

 で、セト店長は遠くを見てる。

 

「あれは、倒し方を知らないと無敵のカードだから」

 

 その言葉に、私はまだまだLifeの恐ろしさをわかっていなかったことを感じ取った。

 

 

 

 

 ◆

 

 

「ふぅ」

 

 流れる気の息吹を感じる、闇に染まって、それでも我がここにいるという自負。

 重心を下に、心臓の唸りに、心が自分だという認識さえあれば闇すらも怖くない。

 姿勢正せば、肉体は整い、精神もまた筋が通る。

 

 詰め切る寸前にこそ、頭を冷静にする。

 

「ばかな! そんなアホな話があるか?!?」

 

 んー。

 通るのかな?

 通ったら勝っちゃうけど。

 使いやすい<焼畑>はない。

 あれは発動する前にライフが0になったら発動する間もなく敗北するから、小刻みなダメージを受けた時にしか役に立たない。

 リーサル……倒すまでの時間計算をズラすのに使いやすいけど、意図的なデッキじゃないと土地を戻したりして自分を追い詰めることになる。

 なら呪言(カース)<間一髪>でも仕込んでるかな。

 あえて狼狽えているように見せて誘って、こっちのバーンを使い切らせようとしてるとか。

 まあこれ防がれても、他のルートで仕留められるように土地残してるけど。

 

 あのあからさまにブロックを誘ってる十絶陣は放置。

 というかあれ確か戦闘で破壊したクリーチャーのコピートークンを生み出す効果があったはず。

 でもそれでディアホーンコピーしても、気を使えないとあまり強くない。

 

 となるとやはり見せ札かな?

 

 次のターンにはオブジェクト指定の通常魔法<灯籠流し>で功にして無力化するとして、こっちがもう一枚<還元>持ってるように見せてるけど、気にしてないのかな。

 相手の土地はゼロだけど、師匠も持ってる<防災>とかなら防ぐ事はできる。

 我のライフデッキに入っている<間一髪>は1枚。

 だから対象変更で撃ち返してくる即死は最低限防げる。

 

 それ以外にも知らないカードの可能性もあるから、決着がつくまでは油断は出来ない。

 

 少なくとも――フツ兄ならそれぐらい凌いで、詰め返す。

 

「発動するよー」

 

 手を掲げる。

 天は上に。

 

「ばかな! こんな」

 

 足を地面に。

 地は下に。

 

発氣(ハッキ)よぉい」

 

 天と地の間にて人は在る。

 

 効果を生み出すのはカードだけど、それに込められた力は、熱は人の命。

 使うのもまた人間。

 だからこそ、通す。

 相手を屠る覚悟で意思を打ち抜け。

 

()ぉーん!」

 

 

 指導ではない組手における心構え通りに拳を斜め下に振り抜いた。

 

 凌がれても、次の手を放つ。

 されども、この一手で殺す!

 

 そして。

 

 

「ばぎゃ」

 

 

 変な音と会心の手応えと共に、ケンドが潰れた。

 

「あれ?」

 

 ライフデッキといっしょに。

 盛大に変な声を上げて、地面にめり込んで。

 動かなくなった。

 

 数秒、残心を解かずに構えながら警戒する。

 けど動かない。

 

「……終わり?」

 

 おかしいな。

 

 

 

これぐらいじゃ普通倒れないのに

 

 

 道場のみんなや師匠たちは強いから例外っていうけど。

 

 外弟子のフツ兄ならこれぐらい耐えるよ?

 

 






 我が十絶陣を乗り越えられるものなど、天地中において存在せぬ。

                         ――大墜仙テンソン
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